一章:序説 第二十六話 この人生に名前がある


「.......まんまと乗せられたな」


リミカルド

「訂正しろ 一切合切だ」


クレス

「何を? イリアスを"愛していた"ことか?」


リミカルド

「そうだ あんなクソガキ どこの誰が愛するというんだ」


クレス

「..........」


この記憶はダントル・・・・からのものだ。

こいつの苦労も、辛酸も、喜びも"知っている"。

だからこそ "気持ち悪い"


どうしてか こいつリミカルドが最優先にしたことは、

イリアスを守ることでも、擁護することでもない


"嫉妬"を優先したことだ。


彼の中で、愛情も欲も等しくどうでもいい


嫉妬だけが彼を生きさせたのだ。


だからイリアスを殺す。

幸せそうに暮らすイリアスを殺せる大義名分くそったれの理由で、


クレスの瞳に光が入る。


「お前....ほんとうに何もないんだな」


「あ゛!?」(人生経験すくねぇガキがほざくなよ)


「てめぇ 何見え透いたようにしてんだよ

てめぇの何がわかるんだよ」


「分からない だけど てめぇがしょうもない嫉妬心からイリアスを殺そうとしているのは確かだからだ」


「!?」


「許せないんだろ?」


「ああ、そうさ 許せない 

なんでこいつがのうのうと生きていけて、どうして俺たちはに生きていけれなかった。


なんでだ!!! なんで こいつらだけがゆるされて」


「それが後悔っていうんだ

後悔は未来の子供たちに最善の道筋を示すための言伝だ。

俺らの苦労を、俺らの世代で終わらせるためだ」


「ふざけるな 何がわかったような口でいいやがる 学園!? ハッ知ったような口で言うな」


ここ・・を作り上げるのに一体どれだけの犠牲があった

一体どれだけの地獄から作り上げたと...」


「30の国家と45万人の死者で積み上げた地獄だ」


リミカルドは驚愕する。

リミカルドすらその正確な数字を知らないからだ。


「かの賢者はうたうだろう

『善意で舗装された道は地獄となり、

地獄から汲み上げた悪意が作り上げた道筋は平和となろう』と


師匠は自分を大罪人となっても生涯を賭して、100年後先にある平和を作ろうとしている」


「は? 100年後なんてありゃしねぇよ

神が許すわけねぇ」


「そう神に縋っているから何もせず、ただ善意・・だけが出来上がったんじゃないか」


「口が回るようだがな」


「黙れよ

お前の人生 嫉妬にまみれ、情もないその姿は空っぽのようだな 名前もない」


「!!?? ふざけるなよクソガキ

俺の人生にケチをつけるだと!?

俺にケチをつけるだと!?


舐めるな ふざけるな バカにするな


愚かなのはお前だ


人生を一歩も歩んだこともねぇガキが

知ったような口を吐くな

イリアスもそうだ 舐めた口聞きやがって

ぶっ殺してやる

俺は意味があるんだ

生きた意味があるんだ!!」


リミカルドの肺から全身まで空気が抜け出す。

息が冷たくなり、クレスを睨み殺すように


「ハァ.....テレスアギト▣□◎ 殺せ 俺の人生になm※%‰%°⁉ⅠⅠ-


イリアスはリミカルドの頭蓋を刺し貫く。


「................」


クレス

「イリアス.....」


イリアス

「クレス 言い過ぎだ」


ほんの少し動揺するクレス。


クレス

「ごめん」


ハク

「マスター治します」


ああ、と自身の腕を差し出すと、みるみると腕が回復していった。


イリアス

「.......クレス 俺の気持ち代弁してくれてありがとう」


クレス

「いや....俺はただ」


イリアス

「ふっ....笑っちまうよな 俺は家族に構ってほしかったんだ ただ構って....」


クレス

「.............」


ハク

「お二人は強いのですね 私は....何も」


イリアス

「いやお前は俺助けてくれた それだけで十分だ クレス お前の判断は間違ってなかった」


クレスはほんのすこし目を落とす。


「お前はよかったのか その...リミカルドを殺して」


イリアスは少し呆れる。

「あんなに煽っていてそれを言うのか?」


クレスは黙る。


「はぁ いいんだよ 結局話込んでもどのみち殺されていた。

多分 お互いに理解はしあえた。

だけど、それは理解だけで、共感も同情でも賛同でもなかった。」


リミカルドを見る。


「生きる世界ばしょが違ったんだ

それに貴族だ 闇の一つ2つないとね...」


クレス

「ふっそうか....」


クレスは疲れながらも、サリィたちのところを向かう。


怯える彼女たちと目線を合わせるようにしゃがむ。

少しはにかみ、目をうるわすように言った。

「怪我とかない? もう大丈夫だよ?」


そう言われた2人は安心し、涙が、あふれクレスに抱きつき、泣き叫んでいた。


イリアスは小さく呟く。

「......僕のことを愛してくれてありがとう」


とそう自身で持っていたものをすべて落とす。


ハク

「イリアス....」


がちゃりがちゃりと誰かが走ってくる音が聞こえる。


気付くと周囲の人たちは意識が戻っており、ガヤガヤと驚きを持っていた。


憲兵や警備兵が公堂の中に走り込む。

そしてその憲兵たちはクレスの元へと走る。


周囲に囲まれた憲兵からサリィを守ろうとするクレス。


憲兵は叫ぶ。

「お前が此度こたびの事件を起こした張本人だな!!

クレス・カルエ・デ・サルゴ!」


一同に混乱が生じる。

イリアス

「ちょ..ちょっ」


クレスは大人しく立ち上がる。

「わかりました。」


そう手を出すと、ぐっと地面に押し倒されるクレス。


そのまま手縄で縛られ連行されていく姿の状況に追いつけなかった。


クレス

「大丈夫だ 安心してくれ」


そう言われたことで"もう何も言えなかった"。


この事件は後に、負傷者6名、死者4名の"学園襲撃事件"として記録される。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る