一章:序節 第十二話 依頼

風になびかれる紋章が描かれた旗。

そのなびく旗の元にテントがあり、その中に5人の男どもが居た。


がちゃりがちゃりと身にまとう金属音を鳴らしながら、男どもの真ん中に立つ。


荒れ痛んだ金髪、けだるげな目をした男がパンパンと手を叩く。


「はいちゅうもくー」


その男がテント中に響くと男どもはその男に目線を向ける。


「今回の戦が終われば、次はなんとかの有名なアルテメリア学園にいきまーす」


「」。おおー


感嘆かんたんたる声が聞こえる。


「しっかしなんで学園ですかい リミカルド団長」


そうローブを大きく被る髑髏どくろだとおもわせるような細ばった顔、長い髭の男。


リミカルド

「クラカル 簡単です こども殺せて、莫大な金が貰えるから」


パチパチと分厚い手で叩いている笑みを浮かべたような目、たらこ唇の巨漢。


「さっすが団長 こども大っきらいですもんね ぶっ殺せるなら依頼料一銭いっせんなくてもいきますもんね」


すうっと髪をかきあげて、ドヤりとした顔で言う。

「行く! ヤる! 殺す!」


クラカル

「そういうダントルは子供大好きだっけか?」


ダントル

「うん だいすき だって子鹿のソテーも美味いからでしょ?」


クラカル

「それは性的な意味で? 肉食的な意味で?」


ダントル

「」どっちも!! 子供は細くてもヤれる、裕福なら食える!


そう食い気味で喋るダントル。


クラカルは顔を抑え、笑う。

「あはは こりゃヤベェ ぶっ殺さないといけんくらいのクズだこりゃ」


そうダントルを睨むよう、挑発するように笑う。


ダントル

「ヤるか? 俺は男でもれるぞ?」


「で、でも.....逆襲ぎゃくしゅうされませんか?」


そうおどおどとした口調で喋る特徴的な部分がなく、一切真顔の男。


リミカルド

「心配しすぎだって ハミルトン」


ハミルトン

「ど、どうして」


リミカルド

「今回は依頼主から特別待遇貰えてるんだ」


「兄貴 特別待遇っていうのは....」


そうブロース角刈りに頬にしわの如く跡が残ったような顔をした男。


リミカルド

「そうだ マルド 特別待遇だ

その特別待遇ってのは.........」


沈黙がとおる。


「...........」


「.........,...,..」


「...,...................,..」


クラカル

「はよ言え」


リミカルド

「なんか喋るの 疲れた」


ダントル

「早すぎるだろ団長!」


ハミルトン

「あはは 団長めんどくさがり屋ですものね(真顔)」


マルド

「そ、それで?」


と全員が固唾を飲む。


リミカルド

「魔法が使えるらしい」


一同

「「ま、魔法!!??」」


クラカル

「たしかあれって十字教が秘匿してる秘術ひじゅつじゃ」


リミカルド

「正確には十字教・・・だけが知っている魔法はな」


「十字教以外にもエーゲ建国神話にも魔法は実在する」


ダントル

「そ....ん....なことより! かわいい子供犯せる魔法あるんですか!」


キラキラと輝かせた笑みを浮かべた顔でリミカルドを見つめる。

リミカルドはそれを聞き、耳をほじくる。


「しらねぇ 来てからのお楽しみだっつう話だ」


マルド

「でへ...えへへへへへ」


笑い声が聞こえ、その声を発したマルドに目線が集まる。


クラカル

「おいおい キッもいくらいの笑顔じゃねぇか」


ダントル

「どんな妄想してるかな! どんな妄想してるかな?」


ハミルトン

「マルド 笑顔になりすぎて、顔にしわのあとが残るようなお人ですしね(真顔)」


「はいはい」と再び注目させるように手をたたくリミカルド。


「今回 ガキを殺すって依頼だが、

"追っている最中に"殺してもいいリストも送られている。」


一同、首を傾げる。


マルド

「兄貴 なんですかその含み・・


クラカル

「おいおい "追っている最中に"殺してもいいってことだよ」


マルド

「わかっているって」


少し首をかき、困惑を隠さない物言いで言う。


「そうは言っても、"追っている最中"ってことしか言えん 今回のガキはカリスマ性あるガキなんだろ 護衛者ごえいしゃが居るってことかもな」


ダントル

「護衛者ねぇ 相当ボンボンってことかな?

ウマそう」


ハミルトン

「"追っていない最中"は殺してはいけないってことですか(真顔)」


リミカルド

「依頼状を見る限りはそうっぽいな」


マルド

「わっけわかんないっすねそれ」


リミカルド

「とりあえずだ 今回の本命はイリアス・ロンドールだ そいつが殺害対象だ

ただしクレスという子供の前で殺せというお達しだ」


リミカルドは依頼状を三度見した。


ハミルトン

「ロンドールと言えば、エルテ帝国の南方の辺境伯でしたね」


クラカル

「ああ、アルテメリア学園もその領地としている特権・・持ち辺境伯だ。」


ダントル

「.......」


マルド

「と、とりあえずそいつを殺せばいいんか?」


リミカルド

「あ、ああ....そうだ クレスという子供の前でな」


クラカル

「クレスってガキは誰なんです?」


リミカルド

「さぁな」


マルド

「なんだか脅しっぽく見えますね」


ハミルトン

「よっぽどそのガキか、親が依頼主にやらかしたのでしょうね(真顔)」


リミカルド

「んでこいつを"追っている最中"に殺していいリストを発表する。」


殺していいリスト


ラナ・ミリエスタ

クラリエル・トトリス

カストル・エスメ・クリケッタ

アディス・ダダン2世・サリィ・エンドロメダ

サナトリウス・シビュレ

キラル・コントラリウス

グラディウス・ピピン


の7名。


マルド

「アディス・ダダン2世・サリィ・エンドロメダ? だっせぇ名前だな」


クラカル

「バッカおめぇそいつの本名はサリィだけだよ」


マルド

「」。え? んじゃこの名前は?


リミカルド

「アディスでは、父と母の名の間に自分の名前を挟む名乗り方してるんだ


例えば アディス・ダダン2世父親・サリィ・エンドロメダ母親になる。


お、こいつも恐らくはカストル・エスメ・クリケッタも本名はエスメになるな」


マルド

「へぇ んじゃこのアディスってのは?」


クラカル

「役職名だよ アディス大王国は細かく言うなら 大王がアディスになる。」


マルド

「んじゃ? 大王アディス大王国ってこと? だっせぇ」


と腹を抱えて大笑いをするマルド。

リミカルド

「"こっち"の都合でそう呼んでるだけだ。」


ハミルトン

「そうと考えれば、アディスの姫君とピピン公国のご子息を殺してしまうことになりますね(真顔)」


クラカル

「だから"殺してもいい"リストなんだろ」


ハミルトン

「ああ、なるほど 避けてもいいし、邪魔だったら殺してもいいってことか(真顔)」


クラカルは嬉しそうな顔で興奮していた。

「もし殺したら一生追いかけられるんだろうな」


マルド

「クラカルさん そう言って彼女をダントルに寝取られ殺されまくってますもんね」


クラカル

「いいんだよ 犯されたやつが悪いんだから 放置癖って言うんか? いつの間にかやられていたことに興奮するんだよ」


ダントル

「こいつっきっしょいけど、彼女選びのセンスはいいからつい犯したくなるんだよね」


マルドは眉をひそめる。

「最悪のマッチポンプっすね」


ハミルトン

「マルド君も言えないけど(真顔)」


そしてはっきりと耳が聞こえるように言う。

「いいかお前ら

現場でも口うるさく言うつもりだが、殺してもいいリストには王女や公爵令息が居る 下手に手を出したら 考えなしに殺してみろ

俺がお前らを殺す」


クラカル

「あれ? さっきのクレスは"殺してもいい"リストに載ってなかったんですけど」


リミカルド

「見せしめだろ そいつは殺すな」


クラカルはひゅーと口笛を鳴らす。


ダントル

「んじゃあくまでも"追っている最中"ってだけですね?」


リミカルド

「そうだ あくまでも"追っている最中"にそいつが居たら殺してもいい・・・・・・ってことだ

だが」


ハミルトン

「だが?(真顔)」


リミカルド

「今回ここまで書かれているってことは、

リストに書かれていない奴を巻き込む"可能性"があるってことだ」


クラカル

「なるほど」


リミカルド

「そうだ リストに載っていないやつも手を出したら殺す それだけは覚えておけ」


少し不安そうな口調でハミルトンが言う。

「そ、それは言っても顔が分からなければ殺していいかどうかわからない(真顔)」


マルド

「そっすよ兄貴 何かわかるような....なんすかそれ?」


リミカルドの手に顔のような絵が書かれた紙があった。


リミカルド

「気色悪いほど 用意周到さだ

似顔絵リストがある。 だから再三何度も言うリストにないやつは"殺すな"

わかったか?」


「「おう」」


と全員が頷く。

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