一章:序節 第十四話 私はこんなの知らない‼


「はぁ...神秘学 面白くないなー」


そう小言で呟くミエラ。

神秘学では、聖典にある物語に新たな解釈を求めるという学問。

分かりやすく言うと、古文みたいなもの。

古文も見方によって解釈が全然違うのと一緒で、神秘学の教授ごとに解釈が違う。


「なーんでみんなそんなに小難しく考えたがるかな? だって考えたの"人"なんでしょ?

"言った人そこまで考えてないよ"?」


バコンッっと本で叩かれる。


「あ、いたっ!!」


「こらっ 仮にも羊飼いさまは神の子

人と同格と考えてはいけません」


そう注意をする男性。

彼はクラキスタ 彼も私と同じ助祭候補生で、年は20! なんとゲームではあんまり登場しなかった大学生レベルの学生です。


ここでは、神秘学の候補生は大学生の年齢が多く、女性の助祭というのは歴史上存在しない。

それは聖典の始まり

"始まりの女性は平等を求め、体位の際に下になることにダダをこね、悪魔に身を委ね男を裏切った"


"2人目の女性は蛇に唆され、男とともに果実を食べたとして男に非難される"


これの通り、女性は"誘惑"に弱いとされている。

神秘学教授の1人はこう言った。

『彼女は確かに人類の、生命の母だが、

果実を食してしまったために、その腹に善悪を貯めてしまわれた。

そのために女性は誘惑に囚われやすく、

     男性は原罪に囚われた』

と言われている。


そのため、女性は神の膝元神職に相応しくないとされている。


(知るかッ!! 推しのためなら、どんな罪だって背負ったるわい!)

↑※誘惑に囚われた人


あともう一人の教授は、

『彼女は生命の母であるために、その罪過は過ぎ去った。

なればこそ、隣人を愛すことが重要ではないか! その証左しょうさとしてミエラのような優秀な子たちも現れたではないか』


もうどっちが正しいんだよ!

てかあの私を矢面やおもてに出すのやめてくんない?。

注目されるの凄く嫌なんですけど。

てか聞いた噂では、この教授異教徒扱いされてるから余計に噂がヤバくなるんですよ。


クラキスタ

「はぁまったく君は神職に相応しくないよ」


そうくどくど言う彼だが、一応の心配も含めた物言いだった。


そういうと隣の椅子に座るクラキスタ。


「君は確かに天才なんだろうが、その考えはあまり神の膝元に相応しくないな

十戒を見習いなさい!」


ミエラ

「すみません 先輩」


クラキスタ

「はぁこれでも結構危ないような気がする。

そういえば、以前教授が言っていた『修行論』を読んだかい?」


ミエラ

「いえ、他の先輩たちは読むなと煩くて」


クラキスタ

「.......入れたのは大司教さま達なのにな」


少し腕を伸ばすミエラ。

「ま、私は推しのためにここに入ったし、別にいいんだけどね」


クラキスタ

「お、推し?」


ミエラ

「あ、いえ」


すかさずそらす。


クラキスタ

「まぁいい とりあえずこれ『修行論』ね

君も見習うべき 内容ばっかだよ」


ミエラ

「どんなのがあるのです?」


クラキスタ

「"八つの想念" と呼ばれる考えだ


貪食どんしょく

淫蕩いんとう

『金銭欲』

『悲嘆』

『怒り』

嫌気と霊的怠惰アケーディア

『虚栄心』

高慢こうまん


の八つを神の膝元に立つ我々には気をつけなければいけない訓戒くんかいとして呼ばれている。」


ミエラ

「なんか7つの大罪っぽいですね」


クラキスタ

「7つの...大罪? なんだそれは?」


ミエラはあれ?と思った。

時代的にそうじゃないの? ん?

あれ? ゲーム内の設定的に時代いつだっけ?


クラキスタ

「大罪とは聞かないが、一世紀前に古代エーゲ語で翻訳されたものの中には、『八つの主な悪徳』として扱われていたな

それのことか?」


ミエラは納得が行かない様子だった。


「はぁ...とりあえず君も羊飼いの自覚があるなら、これを訓戒として学びなさい!!」


ミエラ

「ええー」


クラキスタ

「全く 読まずに試験の成績が悪かったら、退学ものだよ しかも君は特待生の身分だ」


エミラ

「やります( ー`дー´)キリッ」

(退学はいや、推しに会えないのはいや!)


クラキスタ

「まったく」


とそう呆れながら笑っていた。


そのままクラキスタは離れていくと、神秘学の会堂に向かう槍を持った男の子が居た。


グラディウス

「ミエラ 居るか?」


ミエラは驚く。

「ぐ、グラディウス様?」


グラディウス

「こっちきてくれ」


そう首をくいっと誘うようにする。


ミエラはグラディウスについていくように向かう。

一体どこへと向かうのだろう、―


グラディウス

「君に神秘学は退屈かい?」


そう優しげな声で聞かれる。

前日とは大違いだった。


全く呼ばれる所以もなく、なんなら喧嘩を売っているような行動をしたため、ミエラの行動はギクシャクとしていた。


「あ、あははーそ、そんなことナイデスー」


グラディウスは返答はせず、鼻で笑う。

会話が続かないこの歩いてる状況に、慣れないミエラはグラディウスを疑問をなげる。


「ど、どうして 私をお呼びに?

な、何かやってしまいました?

昨日のことが!?」


グラディウス

「いや今回はそれは関係ない」


ミエラ

「ではどうして?」


グラディウス

「君に会いたかっただけだ」


ミエラ

「..........」

(なに言ってるのか分からない

なんで私なんかに会う必要あるの?)


グラディウス

「まぁいい ミエラ」

そう振り向く。


「君 戦えるんじゃないのか?」


ミエラ

「...........へ?」


「いやいやいやいやいやいや」


そう否定するように手をふる。


「いやいやいやいやいやいやいやいやいや」


「いやいやいやいやいや」


グラディウス

「長いな....」


ミエラ

「グラディウス様 私こうは見えても、神職です 血で汚れてはいけないのです」


グラディウス

「何言っている? 十字教は異端審問いたんしんもんとして、血なまぐさい行いをしているじゃないか? 現にうちの臣民を....」


そんな純粋な顔をしている。


ミエラ

「私 あんな物騒沙汰ぶっそうざた嫌いですし、しかもあれ成れるのは特別な神職だけです!」


グラディウスは少し考え込む。

そしてミエラに指をさす。


「それが君では?」


ミエラ

「失礼!! 女の子に失礼です!!」


グラディウス

「いや冗談だ」


ミエラ

「はぁ...全くグラディウス様は何がしたいんだか」


グラディウス

「だが君は戦えるはずだ」


ミエラはグラディウスの目を見る。

その眼差しはハッキリと見透かされたように感じた。

不思議と背筋が凍る。


ミエラ

「戦え...ませんよ」


先ほどの反応とは大違いだった。


トリステル

「あ、お姉ちゃー ぶべらっ!!」


何かにぶつかったように見えるトリステル。

トリステルは何にぶつかったか分からない様子だった。


トリステルは「?.....?」と頬をさする。


それに今頃気付いたミエラとグラディウス。


「「ど、どうしたの?どうした?」」


トリステルは見えないカベを触るように言った。


「通れない......」


――――――――――――――

クラカル

「ここですかね...」


そう手をかざし、集中する。


ユベオー命令する、―

マグナ偉大なるカエレスエィス天のノドゥス結び目よ、―

ノヴァヌービル新しい雲を、―

オムニビス全ての人にアンテプルマその羽根で、―

アドアーク我々をアキッピオアゴー包みたまえ、―


そしてリミカルドはクラカルの隣に立ち、その隣で唱える。


アウァールス貪欲なアウクシリア支援者よ、―

エゴ自我ドュムエーブリエタース酩酊の間にフルクトゥアトたゆたいザインオクリス存在する目よ、―

アウディオあえて行う、―

オクリス目よシレントコンキオリ沈黙を結べ、―

アウクシリア支援者よオブリーウィオー忘却をコンキオリ与える、―

スビトーただちにレスティンギルアゴ消したまえ、―


そう唱えるとクラカルを内側に膜が出来上がっていく。

徐々に彼から円は大きくなり、周囲1kmを包み込んだ。


そして、―


リミカルド

「おい 作戦開始だ。」


ダントル

「団長 時間は?」


クラカル

「魔法の結界は1つ時半だ バカ 聞くのは俺の方だよ 俺が魔法使ってんだから」


クラカルは見えない膜に触れているようだった。


ダントル

「そうだった」


マルド

「んじゃ兄貴あっしは行きますぜ」

と片手ハンマーを持ちながら、奥へと向かっていく。


ハミルトン

「私 追いかけられるの心配なんで手当たり次第殺してはダメですか?(真顔)」


リミカルド

「ダメだ 殺す 一応クラカルの魔法に俺の魔法も重ねている 殺人沙汰さつじんさたは認知されまい」


ハミルトン

「了解しました 団長 あくまでも...」


リミカルド

「"追っている最中"に殺していいリストのやつだけだ」


ハミルトンは頷くと、腰に携えたショートソードを抜き、前へと歩いていく。


ダントル

「クラカルは離れられる?」


クラカル

「いや 魔法ってすっげぇ疲れる ここで休憩しときます」


そうドサリと座るクラカス。


リミカルド

「わかった ダントル 一緒に来い

話では、教授区に居るらしい」


自身に装備した鉄製の手斧を確認し、そのまま回廊の奥へと歩いていく。


ダントル

「了解です」


大きな半月にも見える剣を前に持ち、団長リミカルドについていく。


そう一行はそれぞれの対象を探すため、動き始めた。―

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