一章:破節【クレス編】 第三十五話 慚愧
『そうだ お前が悪い クレス』
そう言われ、誰かに殴られる。
なんども何度も、
ぽたりポタリっと溢れていた。
冷たく、温かく、赤く、透いて、所々入り混じっていた。
『ごめんなさい ごめんなさい』
目の前から衝撃を
........―、
『お前が本来歩むべき道だった』
なんとなく声が聞こえる。
どこか知っているような声だ。
『お前のせいで俺は死んだ。』
目の前にダントルが現れる。
さきほど私を殴っていたのは彼なのだろうか?
『.............』
『お前が悪いのだ クレス お前が』
「どこが?」
無意識に返してしまった。
「俺のどこが悪いんだ? 言ってみろ?」
勇ましくも聞こえるその声にダントルは黙ったままだった。
『それは....』
「どうした? 何をそんなに
急かすように迫る倉石。
『............』
「やっぱりな お前はダントルじゃない
もしダントルだったら、今頃俺を殴るんじゃなくて感謝してるだろうしな」
『図々しいな』
そう吐き捨てるようにダントルに似た姿。
「図々しくて結構
だけどここは夢だと言うなら残念だが、俺は
もしダントルの罪悪感で押し潰される夢であるなら、ダントルを殺した姿で現れる。
それに"俺がいつも見ている夢"はこれだ。」
そういうと周囲にあった光景は真っ黒に染まった。
地もなく天もないその黒さが"彼の夢"であるらしい。
『.........』
「そうかお前はちゃんと夢を見れる人間か...
まぁいい改めて聞く お前は誰だ?」
そういうとダントルは消えていた。
倉石は頭を搔き、「逃げたか...」そう言った。
―ふっと瞼を開ける。
クレスははぁとため息をし、部屋から出て、井戸で顔を洗いにいく。
パシャリパシャリと顔を洗う。
「風呂に入りたい」とそうボヤいてしまう。
異世界といえど、時代は古いのか風呂に入るという習慣はない。
しいて言うなら、水浴び程度だけ。
しかし、水は貴重な上、火元も貴重。
風呂なんて貴族すら常軌を逸する代物だろうなと推測する。
(いや待てよ?
発想は悪くないと感じ、さっそく部屋に戻る。
―、
コンコンと叩き、ドアを開ける。
「坊ちゃま 朝です。」
そう言い入ってくる執事。
イリアスはもう起きており、服も着替えていた。
執事
「........」
イリアス
「どうした? 何をそんなに驚いている」
執事
「いえ、...不躾かと思いますが発言してもうおろしいですか?」
イリアスは首を傾げながらも「許可する」と伝えた。
「お父君が亡くなられたあとだと言うのに、坊ちゃまが立派に見えられまして」
イリアス
「馬鹿にしているのか?」
執事
「いえ....そうではなく 坊ちゃまは屋敷に居た時、いつも暗くしていたご様子でしたので....今は...」
「とてもまっすぐ見られている様子に些か驚いてしまいました。 申し訳ございません。」
そう頭を下げた。
イリアスはそう言われ、ただ少し目を下げた。
「いや 大丈夫だ 父が亡くなったというあと、その責を継がねばならぬ今だ。
前を見なければ、生きてはいけない
それだけだよ ミクレ」
執事はただ頷き、今日の予定を伝えた。
「今日は朝から商会との面談の予定を取り付けました。」
イリアスは「分かった」と言うと、すぐさまにクレスが居る部屋へと向かおうとした。
バンっと無遠慮にドアを開けると、目の前で鉄の板が燃え盛る様を見ていたクレスが居た。
クレス
「え? イリアス?」
イリアス
「何を....しているんだ?」
クレス
「いや風呂に入りたくてな?」
目をぱちくりをする。
「風呂というと、エーゲ帝国で長く習慣がある温泉というものか? だが....なぜ鉄を燃やしてる?」
クレス
「
そう目を向けた先にある鉄は溶けて原型がなくしていた。
イリアス
(いや 言いたいことは分かるが、
「........まぁいい クレス 昨日言ってたな "明日"も予定があるっぽい 付いてきてくれないか?」
クレス
「どこかへ行くのか?」
イリアス
「ああ、ロンドール伯に懇意していた商会の人に会う。その顔合わせだ。」
クレス
「それはわかったが、顔合わせならハクもフレデリカ様も連れて行かないのか?
しかもこんな朝っぱらだし」
イリアスは立ち止まる。
「ただの顔合わせに突然皇女さまを会わせるとかどんな拷問だ? 商会に失礼だろ」
クレスは確かにという顔になる。
「ともかく商会にハクやフレデリカ様を紹介する理由はない クレスは世話になるかもと思ってな それに大事な用もある。」
クレスはそうかと頷き、イリアスについていく。
―、
イリアス
「すまないな この早朝からしての予定を作ってもらって」
そう彼に近づくイリアス。
「いえいえ お父君は亡くなったすぐ、立派に務めようとお聞きしています。坊っちゃん」
そう言う彼の見た目はふくよかな体に出っ歯すきっ歯が目立つ少し薄汚くも見える男。
イリアスは少し落ち着くように笑う。
「相変わらずですね。」
「あっしは商人です。 噂も叙事詩も売れると分かれば、買って売るというのが生業ですので」
そう笑う。
その男はクレスを見ると「彼は?」と聞いた。
イリアス
「彼は私の友人のクレス 何かと世話になるかもしれないから紹介したくてな」
クレス
「はじめまして クレス・カルエ・デ・サルゴです」
イリアス
「クレス 彼はテトラ商会のティリシー・テトラだ」
ティリシー
「テトラ商会で
そう互いに紹介が終わる。
イリアス
「では本題なんだが、ティリシーさん父君の葬式の取り計らいをしてもらいたい」
ティリシー
「.......それは分かりましたが、あっしが受けるほどというと、"葬儀は
クレスは少し疑問に持つ。
「喧伝?」
イリアス
「ああ、ロンドールという名は大きくてな
領民も含め、学園側にも次代のロンドール伯がしっかりと葬儀をしたと伝えないといけないんだ。」
ロンドール地方を統べるロンドール辺境伯は軍事、行政、司法の権力と学園に影響を持つ独自の裁権がある。
いわば一つの国と見て、間違いはない。
各国間の王侯貴族からはエルテ帝国所管のただのロンドール辺境伯とは思われていないんだ。
クレス
(だから喧伝なのか....)
「いいのか? イリアス」
イリアス
「ああ、大々的な葬儀にしなければ各国から金銭を持たぬ辺境伯だと思われるからな」
ティリシーはいつのまにかテーブルにチェック柄の布を敷き、マーカーを動かし計算していたようだった。
ティリシー
「そうですと、これぐらいの金額になりますがこれでよろしいですか?」
イリアスは差し出された金額の紙を見る。
「高すぎないか? 安くしてくれ」
ティリシーは困ったような顔をする。
「そうは言われましても、あっしたちも大々的な葬儀を執り行うとなると、他方の商会からツテも使わないといけない。
大赤字になります」
イリアス
「こっちはこのあと継承式に軍事の再編に予算を使う。
父君の葬儀だけに予算を集中できないんだ」
ティリシーは考えるようにこめかみ指で叩く。
「でしたら うちの商会で困り事があります それを解決してくれたら、なんとか考えます。」
イリアス
「内容は?」
ティリシー
「ロンドール地方を中心に盗賊団が現れたようでしてね あっしも他商会にも迷惑もらっていやす
しかも聞けば腕が立つと聞きます。恐らく」
イリアス
「兵士流れの盗賊団か.....」
兵士流れというのは、戦時中に国を亡くしたり、故郷に帰れなくなったりする兵士たちのことを言う。
ティリシー
「本来先代に相談しようとお考えしていた所で.....」
クレス
「亡くなってしまったと」
ティリシー
「ええ、 そのご相談をお受けしていただけたらご再考さしていただきます。」
イリアス
「なら 6割減らせ」
その声に威勢があった。
クレスもティリシーも驚く。
ティリシー
「え、えっと....ご冗談ですか?」
イリアス
「はぁだから金額の6割減らせと言っている。」
ティリシー
「ふ、ふざけてるのか?」
イリアス
「ふざけてるも何もだ 兵士流れであるなら、うちもそれなりの兵士の討伐隊を編成しないといけない。
葬儀、継承式、軍事の再編成からさらに討伐隊編成 かなりの出費だ
それで? 返ってくる答えは再考?
ふざけてるのはティリシー 君だよ」
齢13であろう少年は、30以上もある男を脅していた。
先日の殴り合いからか、イリアスの目はどこか座っているように見えた。
クレス
「言い過ぎでは....」
ヤジを飛ばそうとするクレスの肩を叩くイリアス。
イリアス
「ティリシー そう安く済ませられるほど辺境伯に依頼出来ると思っているのか?」
ティリシーはくっと口を歪ませる。
「6割はやめてください 2割で」
イリアス
「ダメだ 6割だ 変えられない」
ティリシー
「では4割で これ以上はうちは撤退します。」
イリアス
「わかった 4割で行こう。」
そう握手する2人。
クレス
「イリアス.....」
ティリシー
「いやーさすが坊っちゃん 商売上手ですね」
そう笑顔で言う男。
それを聞いたクレスはえっ?と驚く。
イリアス
「値踏みはやめてください まだ辺境伯になったばかりなんですよ?」
とさきほどの緊張をほぐしたような顔のイリアス。
クレス
「えぇ〜と〜どういうこと?」
イリアス
「元々ティリシーさんは先代から続く古い仲なんだ さっき先代に相談しようとしてたと言ってたけど、ティリシーさんは赤字覚悟で交渉しようとしていたんだよ」
ティリシーは頭に手をあてる。
「盗賊団の襲撃はあっしら商人にとって致命傷そのもの 今後の取引を4割減らすつもりで居たんですよ」
クレス
「商品がなければ売れないからか....」
「だけど....そうだとティリシーさんは4割減だと商会としても大変なんじゃないですか?」
イリアスは嬉しそうに言う。
「ふっふー だからさきほどの会話なんだよ」
クレスは疑問符を浮かべた。
ティリシー
「さきほど声を荒げた会話をしていましたが、それは周囲の人たちにも喧伝させるために"あえて"そうしたのです。」
イリアス
「まぁわかりやすく言うとね
次代の辺境伯は齢13にして商人を脅し、交渉出来る
すると生半可な商人はうちに売り込まなくなるんだ」
クレス
「それは...そうかも知れんが 下手にそれをしたら」
イリアス
「うちは各国からモノ、技術、人が集まる学園都市を
下手な商人呼び込むと治安悪化を呼びかけないんだ」
ティリシー
「商人は人それぞれだからですね
他国から失礼のないようにしないといけないんです。
あっしの商会にも間者が居るので、念の為ですね」
クレスははえ〜と間抜けな声が出る他なかった。
ティリシー
「それに辺境伯に討伐隊の依頼が出来るというのは商会としては中々悪くないんです。
バックはロンドール辺境伯だぞと言えることこそ、後々元締めとして他商会も締められるんですよ」
クレス
「そうか 辺境伯にお目通りするにはティリシー商会からの推薦がないと行けないのか
それにロンドール辺境伯との取引で4割が減るけど、それ以上の利益が得られる可能性があるのか...」
イリアス
「そういうこと だから"喧伝"しないといけなかった ハクやフレデリカ様の前では見せられないからね」
クレス
「.......イリアス 辺境伯の地位は重く...ないのか?」
そう言われたイリアスは微笑む。
「重い!! だけど、クレスもハクも居る
つらくないさ」
ティリシーはそれを聞き、目を見開き少し口角を上げた。
「坊っちゃん あとはこちらでお話進ませてもらいますので、討伐隊の編成お願いします」
イリアス
「ああ、わかった そういえばその盗賊団に何か特徴は?」
ティリシー
「確か 商人たちに死傷者は居ないとお聞きしやす。」
イリアスは頷くとそのまま部屋に出た。
クレスも付いていこうとすると、ティリシーに呼び止められる。
クレスはティリシーへ顔を向ける。
「どうしました?」
ティリシーはさきほどの顔とは違い、どこか影を落とした顔で聞く。
「お父君が亡くなった際、坊っちゃんはどんな顔をしていました?」
クレス
「深く....嘆いていておりました」
ティリシー
「そうですか....」
クレスは気になった。
「何か気になることでも?」
ティリシーはただ答えた。
「いえ、クレス君は知らないだろうがイリアス坊っちゃんに友人は居なかったのです。」
クレスは首を傾げる。
「黒髪だからですか?」
ティリシー
「ええ、ですが正直に言いますと南のアディスでは"黒髪は当たり前"です。
あっしにとっては気にもしなかった。
ですが、坊っちゃんはいつも顔を暗くしていた。
お父君の顔とは違い」
何が言いたいのかが分からなかった。
ティリシーは目を閉じ、深呼吸をする。
そしてクレスに頭を下げる。
「これからも坊っちゃんと仲良くしていってください!」
そう言われたクレスは狼狽える。
ティリシーは続ける。
「私は"あの時"、"あの時"お救いすることはできませんでした。
ですからただ今日を照らされたように顔の明るいイリアス様を見た瞬間、クレス 君に感謝したいと思いました。」
クレスはその真意は分からなかったからこそ、何があったのかを聞いてみた。
「あっしは人のあれこれに文句は言いません。 あるとしたら嫁と娘に言い訳述べるが家庭だとしています。
ですが...ただイリアスさまには思う所はありました。」
ティリシーは思い出すかのように話す。
ほんの昔の話です。
ほんの昔、先代ロンドール辺境伯テオドア様の時代。
テオドア
「いやーうちの息子が才能があって凄くてさ」
そんな謳い文句が酒の
テオドア様の自慢話はロンドール中に広まっていた。
だけど息子であったイリアス様はいつもそのことで顔を暗くしていた。
あっしは"その顔の
イリアス
「......僕はいつもお父さまに殴られてて」
簡単に言った。つらそうな顔をしていたが、
"そんなことは当たり前だった"
ティリシー
「なんと テオドア様からですか、それはあなた様を思ってということですよ」
イリアスは黙っていた。
「昔、あっしも商人になるとよく親父に殴られたものですよ 農民が商人になれるわけがねぇってさ 身分を考えろってさ
けどそれはあっしを思ってやったことだと思うす だからあっしは親父を恨んじゃいない
坊っちゃんもいつか分かる時が来ますよ」
イリアスは「そうじゃ....」とそう口を噤んだ。
ただ「そうですね...僕もわかっています」とただ冷たく言った。
あっしはその反応が気がかりだったが、気にもしなかった。
ですがある日の夜、ロンドール辺境伯に用向きがあり、屋敷へと赴いたことがあった。
執事に執務室に案内され、待っていたが待てど暮らせどいっこうに来なかった。
ただなトイレへと向かおうと部屋から出た。
用を足し、執務室への戻り道。
ふと声が聞こえたのです。
それはテオドア様の声です。
かすれてるようだったので、声の元へと歩いていくと、そこはイリアス様の自室でした。
ふとドアの隙間を好奇心で覗きました。
テオドア
「なんでお前はなんもできないんだよ!!」
そう言い、イリアス様を殴っていました。
机の前で突っ伏し、自分の身を守っていた様子。
バンバンバンっと殴っていた様子で、
「才能がない」
「お前には自信が必要だ」
「早くやれ」
「泣くな 男だろ」
「人のせいにするな お前が悪い」
イリアス様からただの嗚咽すらなかった。
私はただそれを眺めた様子で見ていた。
どこか呆れたような声でテオドア様は言った。
「そういえばお前 ティリシーに相談したらしいな」
ハッと初めてイリアス様から声が出た。
「なんで相談した なんでお前が相談する必要がある 次期当主だ お前に悩みなんてない お前はいいよな 自由に生きていけて
俺のおかげなんだぞ? お前は次期当主として苦労がないようにしてあげてるんだ
感謝しろ 感謝しろ
なのになのになんでお前はなんもできないんだよ!!
そんなことしていたら学園でも苦労するぞイリアス!!」
そう何度も何度も殴っていた。
あっしは何も言えなくなった。
ただなんとなくイリアス様がお困りのようですと伝えたのはあっしでしたから。
目の前の地獄を呼んだのはあっしでした。
誰かが近づいてくる様子が聞こえたあっしはすぐさまに近くの部屋に隠れました。
執事
「テオドア様 ティリシー様がご用があるとかで執務室でお待ちしております。」
テオドア
「わかった イリアスそこで頑張って勉強しとけ 全くなんでうちの子は努力しないんだか」
そう言うと部屋から出ていった。
時間が経つと隣の部屋から誰かが走る音が聞こえた。
イリアス様の自室が空いており、そこに誰も居なかったのです。
あっしはその部屋に入り、イリアス様が勉強していたモノを見ると驚いてしまいました。
あっしたち商人ですら計算するのも大変な式に、歴史書など多種多様に開かれておったのです。
テオドア様の言う通り、イリアス様には確かに才はあるのです。
ですが何も"あそこまでやる必要"はないのでは?とも思ってしまった。
後日、テオドア様に聞こうと思いましたが、息子の自慢話が多く、あっしには何も言えなくなりました。
そして、―
イリアス様を連れた際のテオドア様はイリアス様を一切褒めもしなかったご様子でした。
それでもイリアス様は諦めず、何かしようとすると頭を撫でて、「お前は何も出来ないんだから大人に任せろ」と言うばかりでした。
イリアス様は日に日に顔を暗くしていったご様子でした。
ただあっしに出来たことは娘を"ああ"にはしないとするばかりでした。
―、
ティリシー
「ですが、イリアス様のお顔はご立派になれれました クレス君には感謝してもしきれない」
クレス
「.........ティリシーさんはどうしてロンドール辺境伯にそこまで肩入れするのですか?
くさっても他人の家庭です」
そう言われたティリシーは思い悩むように顔をしかめる。
「先代テオドア様には命を助けられた。ただその恩返しをしていただけです。
それはイリアス様にも同様だと思っています。
ですが.....」
その恩返しはイリアスには出来なかったとそう言いたかったのだろうか。
クレスは考える。そして言う。
「なら今からでも恩返しでもしてくれないか?」
ティリシーはその言葉に顔を上げる。
「イリアスは今モテたいらしいが、学園でも鳥一匹も寄らずじまいなんだ。
だから適当な女を
ティリシーはその言葉に驚愕する。
「ほらもし見繕えたら、今後もテトラ商会をもっと贔屓にしてくれるしね」
ティリシー
「.....なんだか坊っちゃんのご友人にしていいのか分からない言葉ですね....」
クレス
「未来で後悔するより、今後悔したほうが後腐れがないって分かりましてね」
その言葉の真意は分からなかったが、それは恐らくティリシー自身にも言える
ティリシーは少しため息をつく。
「でしたらうちの娘は如何ですか?」
クレスはえっと答える。
あまり人の見た目に文句はもたないが、ティリシーの娘には些か疑問を持ってしまった。
その目に気付いたティリシー。
「何か問題でも?」
クレス
「い、いえ ただ自分の娘をイリアスに見繕うのは予想外だったので」
ティリシー
「エルシーはいい子です。文字も読め、計算もできましょう。 きっとイリアス様も気に入ります」
そう笑顔に「自慢の子です」と言った。
クレス
「うん? けどその言い方だと元々娘さんも紹介するつもりだったように聞こえますけど」
ティリシー
「さぁ....ただ今のイリアス様に必要なのは、対等に話し合える仲間かと思いましてね」
互いに沈黙が通る。
クレス
「.....ふっ分かりました まぁ見初めるかどうかはあいつ自身です。 私からは何も言いません ですがご安心ください
イリアスは今楽しそうにしています。
そしてこれからもです」
そう手を出すクレスにティリシーは握る。
ティリシー
「ええ、うちの娘ともどもお願いします
クレス君も何か相談があればいつでも言ってくれ」
クレス
「ええ、遠慮なくそうさせていただきます。」
コンコンとドアから音が鳴る。
「おーいクレス いつまで居るんだ
まだ予定はあるんだ 早くこーい」
そう伸びたような声で言うイリアス。
クレスは「すまん」とそうドアまで向かっていった。
ティリシーはただその先を見つめた。
「彼らに祝福があらんことを」
そう小さく呟いた。
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