一章:序節 第十三話 結界
―――
回廊を走り抜ける一行。
カンカンカンと足早に聞こえる音が回廊に響く。
イリアス
「おい クレス なんでさっきのエデリってやつに相談しなかった?」
クレス
「..........」
眉をひそめるが依然として答えがついていない。
イリアス
「てかハク お前の名前そうなんだな」
ハク
「私は適当に作った名前です」
困惑が来たイリアス。
「え? クレスの知り合いならお前の知り合いじゃ?」
ハク
「さっきの会話で分からなかったんですか?」
イリアス
「?」
ハク
「"知っていたら"私に
ハッと気付くイリアス。
「んじゃなんで.....」
ハク
「ただイヤな予感がしただけです。
ほら十字教ってドラゴンを悪魔扱いしてるじゃないですか?」
イリアス
「まぁどこの国もドラゴンは討伐対象だしな 騎士の
うぬぬ....と微妙そうな顔でイリアスを見つめる。
イリアス
「てかさっき言い方が....」
ハク
「ハッしまった!? 罰ゲーム続行中でした」
終始無言のクレス。
イリアス
「一体どこへ向かってるんだろうな....」
ハク
「わかりません....」
―、
一歩
ゆらりと揺れる髪を後ろにたなびかせ、回廊を歩いていく。
ぎ、ぎいと扉を一生懸命開けると、そこには誰も居なかった。
サリィ
「あれ?昨日の皆様は?....」
「サリィ!」
サリィが後ろへと振り向くと、腰を両手に手をつけ、威圧するような姿勢で話しかける。
顔をローブで隠した小さな女の子が居た。
サリィ
「エスメ! どうしたの?」
エスメ
「どうしたもこうも 昨日も勝手に居なくなって! 次も同じようなことはいたしませんから」
そう言う彼女は、
カストル・エスメ・クリケッタ
元カストル王国の第6王女。
彼女は暴君で有名だった父カストルのもとへ生まれ、私と一緒に育ってきた。
だけど、彼女の父カストルがダダン2世に宣戦布告。
無事勝利したあとに、民を圧政を敷いていたカストルとその子供たちは公開処刑。
だけど私のわがままで
だけど父はエスメの将来を安否し、建前上エスメの所有物は父であり、お手つきであるという話を
これは王族、王族の所有物にみだりに触れてはならぬという考えがあるためです。
もちろん念の為、彼女の額にキスをしました。
貞操観念が浅いのか彼女すぐに気絶いたしましたが、それでも私のとってもかわいい親友なのです。
エスメ
「なに? サリィ」
サリィ
「エスメはとってもかわいいなって」
エスメ
「////////バカじゃないの!」
わぁ...と微笑ましい顔をするサリィ。
「ハッそうだった」と周囲に
エスメは首を傾げる。
「いかがなさいましたの?」
居るはずもないベンチの下などを見つめながら、
「私お友達ができたのです」
エスメ
「え」
サリィ
「その友達と再会のお約束いたしましたので、ちょうどここへと向かったのですが」
んしょと立ち上がり、キョロキョロと周りを見渡しがはぁとため息を出した。
「見当たりません」
エスメ
「サリィに友達? なんの冗談?」
ぴくっとゆっくりエスメのほうへと振り返る。
「だってサリィ 人と話すの苦手だったじゃん! どこの切り株倒せば、そんなお宝見つけたような顔をするの?」
むぅううと頬を膨らませるサリィ。
「エスメ 私にだってお友達はできるんです!」
エスメ
「そう? それならよかったわ もしものことあれば言ってね」
サリィ
「ないよ!! エスメ」
エスメ
「はいはい それじゃ行くよ サリィ!」
そう回廊の奥へと向かおうとするとぶにょんと何かにぶつかる。
サリィ
「どうしたの? エスメ」
バンバンと何もないところを押し通そうとしても押し出されるように反撥する。
エスメ
「あれ? 通れない なんで?」
――
クレスは立ち止まる。
違和感を感じる。
空気という空気が黒が混ざる。
そんな雰囲気を感じる。
すると見えた景色は魔素で包まれた景色。
それが空へと向かって、動き出す。
周囲一帯を包み込む
その天蓋は一瞬にして見えなくなったが、依然として周囲の魔素は天蓋へ向け、歩みだしていた。
クレス
「ハク あれはなんだ?」
ハク
「」え?
クレス
「そっかまだ見えてないのか
ハク
「空? 膜?」
ハクは
ハクは口を覆い、「なんですかあれ?」とそう困惑を隠さなかった。
クレスは「そうか...」とただ答えた。
不思議と口元は好奇心で笑っていた。
(
そしてイリアスは空気を読めた。
「敵襲だな...」
その目には、冷たい眼差しをしていた。
クレスは聞く。
「イリアス もし空に膜が覆われたと考えたら、どう感じる?」
イリアス
「質問の意図は分からないが、"もし"じゃなくて実際に起こっているんだろ?」
顎をさする。
「膜と言えば、テントを
クレス
「テント?」
イリアス
「ただの思い付きかな? テントは布で周りを覆われているだろ? 肉の膜と同じだと思ってな」
クレスはなんとなく目に動揺を隠せなかった。
(ヤバいな)
「ヤバいな そんな発想するとはさすが貴族」
イリアス
「本心が出てるぞ あとさすが貴族とはなんだ?」
「とりあえず 膜は肉を、臓器を守るために膜がある。 内と外を隔てるように
それはテントも同じだ 内と外も隔てられている」
クレス
「てことは」
イリアス
「そう
臓器や肉は膜から打ち破れないように、外からは膜は破りにくい 閉じ込められたと考えたほうがいい」
ハク
「けど、暗殺なら 閉じ込めるようなことは」
イリアス
「相手は傭兵 暗殺者の流儀もこだわりもないよ だから無法者と呼ばれているんだ」
クレス
「お構いなくか」
そう空を見る。
依然として、その見えない膜は周囲にある魔素を吸い込んでいた。
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