一章:序節 第二十話 私は知ってしまった。

はぁはぁ....ミエラ一行が走り抜ける。

会堂の一室に隠れ、一旦疲れた体を休ませるため座り込む。


ミエラ

「どうしてあれで....」


グラディウス

「わからない だが、よろいを着込んでいると考えて間違いないだろう。

2回も当てたんだ それだけは分かる。」


その感触にはどこか鎧に当てたというものではなかった。


グラディウス

「とりあえず作戦会議だ」


ミエラ

「ちょ...ちょっと待って」


グラディウス

「」なんだ?


ミエラ心配そうにグラディウスの状態を見る。


ミエラ

「そんな体でまだ戦うんですか?」


グラディウスはなんだそんなことか...という顔で作戦会議を始めてみようとしていた。


「戦場なら些事さじだよ」


ミエラはその言葉が心配になった。

彼の過去・・は知っている。

知っているからこその心配の目をしてしまう。


グラディウスはそれに気付く。

「.......はぁ まず状況的に戦わないといけない」


ミエラ

「..........」


「だから今体の心配よりも、あいつをどうやって倒すかを考えなければいけない

その子のためにも」


そう気絶している子に目を配る。


ミエラ

(まだ覚悟・・が足りないのかな)


パンパンと頬を叩く。


「わかった 続けよう!」


グラディウスは頷く。


「まず 間違いなくあいつは追いかけてくる」


そう言うと、腰にあったインク壺を出す。

それを指につけ、先ほど通っただろう道の地図を描く。


「まず俺たちを見失わせた場所は十字路に近い形になっている。

そのため、入った方角を除き、必然的に三方向に相手は探さないといけない。


よほどの運がなければ、すぐには見つからんだろう」


ミエラ

「うん そうだね」


元々のゲームは、

シュミレーションRPGというゲームシステムを

扱った恋愛乙女ゲームである。


ステータスの他にスキル、魔法というのみシンプルな形になっていて、

スキルというのは、

馬術や剣技などの使い続けることによる熟練度じゅくれんどLvレベルによって、威力や新技がわかったりする。


そのため、

Lvがないため、戦闘を終えると使ったスキルの回数で、習熟しゅうじゅく経験値けいけんちが貰え、

スキルによってステータス上昇がするというシステムになっている。


例えるなら、

1回の戦闘で、剣技 横薙よこなぎ 10回を使用したとすると、


横薙ぎ習熟度+10もらえた。

横薙ぎLv1 0/10 → 10/10

横薙ぎLv1 → Lv2

ステータス 筋力、体力、技術 +10


※もしこれが縦斬りだったら 

筋力+10、俊敏しゅんびん+10だけ上昇になったりする。


みたいな感じだね。

中々珍しいゲームシステムだと思う。


そして育てた主人公や王子様たちのユニットを戦場に配置し、◯マス以内が攻撃範囲、移動範囲になる。


FEフ◯イヤーエムブレムっぽい感じね。


主人公は指揮者コマンダーユニットとして、王子たちを指示し勝利へ導くというゲームになる。


そしてこの中でも、

最弱と言われるのが"魔法"。


使える魔法は、

暗視、火の玉、水の玉、重力、毒霧 というなんかほぼ意味がないスキルである。

優位なのは重力なんだけど、移動範囲を半減という中々強いけど、使える距離が短いためほぼ空気。

しかも作中魔法を使えるの主人公とこの結界を扱ったクラカルだけ。

※ただしラストは除く。


そして作中最強なのがこの結界である。

逃げれない、強制戦闘、死亡率高めのため、ここは相当に嫌われている。


私はすごくイヤな顔をしながらゲームを進めてた記憶すらある。

ある意味、敵が楽しそうなゲームでもある。


―、


グラディウス

「よし これで行こう」


ミエラ

「うんわかった」


グラディウス

「ミエラ 本当に戦えるのか?」


ミエラ

「うん 推しのためなら頑張る」


グラディウスは疑問を浮かべるが、そのままちゃんと訂正する言い方をする。

(お、推し?)

「そうじゃない

こっから先は人を殺すかもしれない

それで本当の戦えるのか? という話だ」


ミエラはその言葉に釈然としなかった。

「..............できます」


グラディウス

「いいのか?」


ミエラ

「グラディウスさまが死ぬ...よりはまだ....」


そう苦悶くもんした顔をする。


グラディウス

「わかった 無理はするな」


ミエラ

「はい....」


――――――――


ハミルトン

「おや ピピンの子 逃げなかったのかい?(真顔)」


グラディウスは自身に持っている槍を携えている。

「ああ、 逃げなかった」


ハミルトンは「そうかい」と言い、剣を構える。

回廊での戦闘が始まる。

ハミルトンの剣撃を避けると会堂へと入っていった。


ハミルトン

(おびき出し 女の子は入り口左右どちらかに居るのかな?)


ハミルトンは警戒し、会堂に入ろうとした瞬間、狭いドア口にグラディウスの槍の突貫とっかん突きが来た。


ハミルトンは避けれず、そのまま下から上へと弾き飛ばす。


その瞬間、ミエラから後ろから挟撃きょうげき、逃げ道を作らせないために足への斬りつけをしようとする。


ハミルトン

(なぁ!?)

「丨ポエンティア《力ある体の》カリブルヌス鋼鉄!!」


またかぁあんっとなる。


ミエラはその剣にある衝撃は弾かれ、態勢を戻すために一旦離れる。


ミエラ

(ぽえ....え、なに? ぽえむ? こんな戦闘中に?)


なんか聞いたことがない言葉が聞こえた。

だけどそう発言をしたあとに、剣を弾かれた。

弾かれたせいで手首を痛めたのが最悪な状態だけど、もし何かを詠唱しているとなると、魔法ということになる。


魔法っていえば、詠唱文だからね!


けど....ゲームでは、魔法なんて

暗視! とか 火の玉! とか詠唱文全然なかったんだけど、なにそれ初耳。


っわわっ!!!


ブンっとハミルトンの剣がこちらへやってくるのが見えた。


(やっばい 集中しすぎた!!)


ハミルトン

「危ないですね!! ダメですよ人を傷つけては(真顔)」


ミエラ

(危ない?........)


もし危ないというのであれば、それは防げなかったということ。

だから私は考える。

ありとあらゆるゲーム知識を集約しゅうやくさせる。


多分F◯teみたいな透明の防具を着込んでいるんだ!! それがあのかぁあんっって鳴るんだ!


なんかすっごい計算式(見た・・だけの画像)を貼り付けまくる脳裏。


目をかっぴらく(ハッ!!??)キュピィイン


分かった!!(ペ◯ソナ風)


ゲームとかだと付与エンチャント系だと、時間制限がある。

だから基本的に時間が越えたら、おそらく再詠唱するはず。


その時間を計算するんだ!


さっきは10秒経過してたから、そこから13、14、15、16.......


待って、こいつゲーム内で妙に硬かった理由って"この魔法"のせいなん?


グラディウス

(ミエラ?)


じっとハミルトンを見ている姿に何か案があるのかと感じ、そのままハミルトンの意識をこちらへ集中させる。


剣戟けんげきが続く。

ハミルトン

(くっ このガキ 槍が得意なのか

剣と違って、上手いこと近づけさせないように間合いを取っているな。)


ハミルトンはその奥に居るミエラの行動を見つめた。

(何を考えている。.....臆病になったか?

いやあんな大胆に俺の足を狙ったんだ

狙いがあって止まっている。

まずはあの子からっ)


だがグラディウスの突きが上手いこと、ミエラへの意識をぐ。


(まずはこいつをどうにかしないといけない....だが)


ハミルトンは小さく呟く。

「丨ポエンティア《力ある体の》カリブルヌス鋼鉄


ミエラはそれを見逃さなかった。


(1分30秒!!)


「グラディウスさま!! こちらへ!」


グラディウスはそれに気づき、すぐさまに会堂へと入る。

ハミルトンはそれについていこうとするが、玄関口の挟撃を恐れ、一旦足を止める。


(ああ、死にたくない)


そのままミエラはグラディウスの耳にだけ聞こえるように言う。


「グラディウスさま 1分30秒 いえ1分20秒を数えてください!」


グラディウス

「いっぷん....?」


ミエラ

(あ、そっか)

「今から75数えてください 魔法が消えます」


グラディウス

「わかった!! 72からだな」


ミエラ

「わたしが牽制けんせいします!」


ハミルトンはミエラたちが集まっていることが外側から見え、そのまま会堂へと入り、走り込む。

剣でグラディウスを襲おうとするとミエラがそれを受け止める。


ハミルトン

スイッチ入れ替わった?した?)


だが、という風に戦闘経験の少ないミエラでは手がいっぱいいっぱいだった。


ミエラ

(こ、これが戦い...)


相手が熟練じゅくれん傭兵ようへいとあってか、その剣は早く重く、そして軌道を見せないような動きをしていた。


(剣の動きが視覚外から来る!!)


くっと剣撃を受け止めるが、防ぐのに精一杯であり、そろそろ限度が来ていた。

ミエラは避ける、防ぐがそれでも勢いで吹き飛ばされるも上手いこと受け身をし、態勢を持ち直す。


ハミルトン

(意外にもしつこい だがっ!!)


ハミルトンは下からの攻撃を防ごうとするミエラに全身に力を入れた斬り上げをする。


するとミエラの剣は持ち手から離れ、飛んでいく。

その勢いでミエラは尻餅しりもちをしてしまう。

ミエラはひぃっと本能で防御する。


ハミルトン

(勝った!!)


そう振り上げた剣を両手に持ち、振り下ろそうとする。


「1」


ずぱぁんとハミルトンの胸に何かが貫かれる感触が伝わる。

べチャリとミエラの顔に血が飛ぶ。


ハミルトンは自身の胸を見ると槍が胸貫き通していた。

そして後ろにいるであろうピピンの子を見つめる。


グラディウス

「..........そのまま死んでおけ 裏切りもの」


すっと槍を抜かれる。

ハミルトンの力は抜け、そのまま倒れ込む。


ハミルトン

「ああ、.....死にたくない(えがお)」


そうつぶやき、その目には瞳孔どうこうが開いていた。


ミエラはその目を"見つめてしまった"。


べっとりと顔についた血を自身の手で触れ、確認する。


グラディウス

「ミエラ 大丈夫か!? すまな.....ミエラ?」


血の生暖かさが自身の心臓の鼓動こどうを早めた。

目の前の男の冷たく瞳孔が開いた目に冷や汗がほとばしる。


全身の鳥肌がむしょうに逆立つ。


ああ、これが死なんだと。


一瞬で理解した。


一瞬で、"覚悟"とは何かを理解した。


一瞬で、人生の選択肢に"殺す"という項目が増えたことを理解してしまった。


ああ、― "罪深い"ってこういうことを言うんだ


ミエラは恐慌きょうこうした。


全身を抑えそうになったしゅんかん、


グラディウスはミエラに抱きつく。

優しい声で耳元に囁く。

「おちつけ おちつけ」


そうなんどもなんども、恐怖で何も・・聞こえない私に囁く。


「大丈夫だ 俺の目を見ろ」


こちらをじっと見ていたが、それが怖かった。

はっきりと見れず、震える私を揺さぶる。


「大丈夫だ 俺の目を見ろ!!」


そう顔を抑えると目の前にはグラディウスの顔があった。


「ミエラ 聞こえるか? 聞こえるなら頷いてくれ」


私は恐怖で震えながら、グラディウスに頷く。


「もし俺の声で聞こえるなら、俺の目は何色だ?」


言っている意味が分からなかった。

分からなかったが、グラディウスの瞳は黒くとても美しかった。


「俺の瞳は赤く見えていないか?」


私はその瞳に赤い何か・・は見えなかった。

私は否定するように頭を横に振る。


「本当に?」


こくりと頷く。


「そうか....安心しろ おまえは"殺していない"

おまえの目の前の光景は"おまえに焼き付いていない"

だから安心して俺の瞳を見ておけ、」


なんとなく言いたいことがわかったような気がしたが、私はグラディウスの瞳をただ静かに、ただ静かに見つめていた。


すると体が落ち着き始めていった。

恐怖も鼓動も汗も、グラディウスの瞳を見つめていたら自然と収まっていた。


「........あ、ありがとう......」


グラディウス

「いいよ 戦場でよく使う手法・・

ミエラに効いてよかったよ」


「効いてよかった?」


少し悲しそうな顔をするグラディウス。

「人によっては、目が赤く見える現象があるんだ。それが見えたら一生その赤さ・・に取り込まれる」


「赤く....」


おそらくは人の死赤い光景のことを意味してるんだと思う。

そしてそれが目に焼き付いてしまうんだろう。

私はあやうくそれ・・に"取り込まれそう"になった。


グラディウス

「ミエラ 俺は結界をかけた者を追いかける

だからここで休憩しておけ」


ミエラは全身に力が入らず、グラディウスを引き留めようにも引き留められなかった。


「どうして!!」


グラディウスは少し眉をひそめ、言う。

「君は"戦える人"だが、"殺せる人"ではなかった。」


「ミエラにはこの先・・・はキツイ

おそらくは耐えられない可能性がある」


ミエラ

「私は戦えます 戦わせてください!!

グラディウスさまにはしんで....」


グラディウスは微笑む。

「死なないさ ....だけど君に死んで欲しくない 君の元気さは"今がある"からできることだ」


ミエラ

「それじゃ グラディウスさまが」


グラディウス

「もう行く」


ミエラ

「あ、待って....」


足に力が入らなかった。

恐怖なのか、脱力なのか、わからない何か・・が全身に巡る。


「動け 動け なんのために なんのために!!」


そう足を叩くが、一切の兆候ちょうこうはなかった。


「なんのために....なんの....」


ミエラの瞳に涙が流れる。


恐怖人の死恐怖推しの死恐怖自身の死が織り混ざる。

ただただ 彼女は泣くことしかできなかった。

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