一章:序節 第十五話 私は受け入れられない!
「通れない...」
そう呟くトリステル。
グラディウスとミエラはその言葉の意が分からず、とりあえずトリステルの元へと向かうが...
ぼよよんっと不思議な感触にぶつかり、うっと情けない声で後ろに倒れ込むミエラ。
グラディウスは「大丈夫か?」とミエラに目線が行く。
ミエラ
「なにこれ.....」
そうとしか言えなかった。
グラディウスはトリステルの前に手を差し出すが、不思議な膜のような感触が手に伝わる。
だが押し込めず、前には進めなかった。
グラディウス
「ダメだ 前に進めらんねぇ」
ミエラ
「.................」
ミエラはグラディウスの
偶然かもしれない、そう考えたくなるほどの強烈な一言だった。
(これ3年生のイベントじゃ?.....)
そう彼女の脳裏に思い浮かべる光景に、
確かにそのイベントがあった。
それは突然の襲撃だった。
アルテメリア学園は様々な問題があり、その中の問題に殺傷沙汰になるイベントがある。
アルラン王子たちはそれに巻き込まれ、事件解決に向けて行動する。
だけど....だけどまだ3年生になってない!!
こんなの知らない。
ミエラ
「結界.....」
グラディウスとトリステルは何かを知っているようなミエラに反応する。
グラディウス
「何か知っているのか!?」
トリステル
「おねぇ...ミエラさん知ってるの?」
少し体が震えるのを抑えるように両手で体を包むミエラ.....
グラディウス
「お、おい」
トリステル
「ミエラ...さん?」
このイベントは下手したら、誰かが"死ぬ"イベントだ。
そう "死ぬ" ただでさえこのゲームは王子たちが死ぬ可能性があるイベントや依頼が多い。
その中でもトップクラスに生存率が低いイベントの一つがこれ。
ダンタリ騎士団によるアディス第一王女及びカストル国元第六王女の
被害者は"結界"という魔法により、逃亡不可能になり、追い詰められ略奪されるという顛末。
ましてやまだこの育ちきっていない体なんてとても.....
"推し"が死ぬ....そんな覚悟まだ....
「おい! おい!」
揺さぶれていることに気付く。
「ぐ、ぐ、グラディウス様....」
グラディウス
「なんだ?」
ミエラ
「お逃げください」
グラディウス
「は?」
ミエラ
「逃げてください! あなたはこのイベントでは生き残れない!!」
グラディウス
「いべ....何を言っているんだ 君は!!」
ミエラは懇願するように縋り付く。
「お願いします 生きてください!!」
(推しには死んでほしくない!!)
ミエラのその顔には涙が溢れ、困窮した顔をしていた。
その状況に見ていた2人は
グラディウスは落ち着いた声で言う。
「何をそんなに君を急がせる
昨日の君とは全然違うじゃないか 落ち着いてくれ」
そう
トリステル
「お姉ちゃん....」
―、
トリステル
「落ち着いた? お姉ちゃん」
以前として涙が溢れていたが溜め込んでいた感情が一気に出たのかゆっくり喋れるようになったミエラ。
グラディウス
「ミエラは何かを知っているんだな?」
ミエラ
「............」
トリステル
「お姉ちゃん 言ってくれないと分からないよ?」
ミエラは口を固めていた。
グラディウスは....ふん....と深呼吸するように鼻息を出し、立ち上がる。
グラディウス
「.....死んでほしくないってことは、つまり俺が戦わないといけない理由があるんだな」
そうトリステルとミエラに背を向けた。
ミエラ
(しまった!)
しまったしまったしまったしまった
ダメ、行ってはダメ!!
お願いします 神様 彼を死なせないで!!
お願いします!!
ダメなんです
彼は"あのとき" "あのとき"に、
私は唯一彼だけが想いを告げずに....
想いを告げなかった!
私は許せないんです!
私は許せなかった。
グラディウスは両思いだったのに、
勝手に自己満足に死んだヤロウを簡単に死なせたくないです!!!
『私はあんな
気がつくとグラディウスのズボンの裾を掴んでいた。
グラディウスはミエラのほうへと顔を向ける。
ミエラ
「あ.....」
グラディウス
「どうした?」
ミエラ
「言います....何が、起こっているか言いますから勝手にいかないでください」
グラディウス
「......わかった」
グラディウスは膝を地にあて、ミエラにしっかりと顔を合わせる。
ミエラ
「.........これは....結界という魔法です。
一定時間経つと自然と消えるものです。」
グラディウス
「その時間は?」
ミエラ
「1じか....おそらく一つ時半です」
グラディウス
「一つ時半か 長いな」
グラディウスはミエラに本題を投げる。
「結界ということは出られないということだ これを作った本人が居るということだな?」
ミエラ
「はい....」
グラディウス
「そいつは俺と戦うのか?」
ミエラ
「わかりません」
グラディウスは疑問を浮かぶ。
グラディウス
「? おれは死ぬんじゃないのか?」
ミエラ
「わかりません ただ死んでほしくないんです」
グラディウスは考えるように目をそらす。
「はっきりしないな....」
「ごめんなさい」
トリステル
「お姉ちゃん....きっとグラディウスが戦う相手の危険性を知っているから死んでほしくないんだよね?」
グラディウス
「........相手は誰だ? 俺は誰と戦うんだ?」
ミエラ
「だ...ダンタリ騎士団」
トリステルとグラディウスはぞっと鳥肌が立つ。
グラディウス
「ダンタリ騎士団か..... おい、トリステル」
トリステルはそれを理解したのかコクリと頷く。
「わかった アルラン兄様たちを呼んできます。」
ミエラはその状況に理解できずに居た。
グラディウス
「ダンタリ騎士団は帝国ではその悪名の高さで注目を浴びていた。
だがあれの
「いや、まぁいい あいつらの目標はなんだ? どうして
ミエラ
「おそらくは....アディス第一王女とカストル国元第六王女の暗殺」
グラディウス
「
その
グラディウスは「わかった...」とそう結界の奥へと向かおうとしていた。
ミエラは裾を引っ張り、足を止める。
「なんで行こうとするんですか!?」
「死にたいんですか!!」
グラディウス
「行かないといけない」
ミエラ
「なんで!?」
グラディウス
「国のため、人のためと言うが....
そうだな 君のためだ」
ミエラは意味がわからないとしか感じるほかなかった。
グラディウス
「君は先日 俺を品位がないと罵った。」
ミエラ
「それなら 私のためになんてならない!!」
そう間に、挟むように喋る。
グラディウスは落ち着いた口調でミエラの肩を掴む。
グラディウス
「聞け 実はなあれは痛快だったんだ
俺を罵るやつは大人連中ですら居なかった。
だが君は"俺のため"に罵ったんだろ?
そんなやつは一生お目にかかれない」
そう笑顔になった。
「偶然...だろうがなんだろうが、
君は俺を"助けた" そう"助けたんだ"
親しき仲にも礼儀ありと言うんだろ?
なら俺が為すべきことは、
アディス第一王女とカストル国元第六王女の安全と礼儀を重んじてくれた君の安全を守るため、"騎士"として戦いに行かなければいけない」
ミエラ
「それであなたが死んでしまうかもしれません!」
グラディウス
「死なない」
ミエラ
「え.....」
グラディウス
「君の心配して泣いてる姿を見たら、余計死にたくなくなった だから安心しろ」
そう
ミエラ
「グラディウスさま....」
(ああ、....けどそれは"彼女"に言うべきセリフだった)
"彼が亡くなったシーン"を思い出す。
"彼女が馬車で想いを告げてしまったシーン"を思い出す。
私はただ モニター越しにしか見えなかった。
ただの
けど、何度妄想してきたことか!!
何度考えてきたことか!!
なんのためにあの"みんなメリバエンド"を回避出来ないかを考えてきたか!!??
今でしょ!?私
動け、動きなさい!!
死なせない
死なせたくない
死なせてなるもんか!!
絶対に彼女に告白させてやるんだ!!
ぐすりと目の前が見えなくなるほどの涙を服の袖で拭いとる。
覚悟は決まった、―
ミエラはすっと立ち上がる。
「グラディウスさま 私も戦います! 戦わせてください!!」
グラディウスはその覚悟を決めたミエラに驚きを隠せなかった。
グラディウス
「」だけど、君は....
ミエラ
「人が死ぬとわかっている戦地でそう
その声量はハッキリとした声だった。
その耳に、その心にミエラの覚悟はしっかりと伝わった。
グラディウスは目を閉じる。
そして、―
「分かった ミエラ ふたたび俺を助けてくれ!」
ミエラは自身のスカートの裾を破る。
「わかりました」
そう答えた。
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