序章:第二話 賢者
「君っ!! 文字が読めるのだな!?」
驚いたクレスはその肩を掴んだ腕の方向を見ると、白と深いブロンドが混ざった髪と凛々しく整えられた筆のような髭をたずさえた初老の男性であった。
「はえ?」
クレスは面を食らう。
何も文字を読めることをなんら隠していたわけじゃなかった。
だがいきなり知らない人に肩を掴まれ 、大声に言われるとそりゃもう驚くそのために面を食らったのだ。
「あああ、すまない!! これは失敬した
年甲斐もなく興奮してしまった。
まさかこんな都より離れたり村で文字が読める子供が居るなんてな 露ほどにも思わなかった故にな!! ガハハ」
そう豪快そうに笑う老人。
その声は心底嬉しそうに見えた。
その状況を近くで見ていたエリザは問う。
「え、え....とおじいちゃん誰?」
「ん? 君は?」
「エリザ エリザだよ」
「そうかそうかエリザちゃんか おじいちゃんはな 旅する賢者様だよ」
「た...びする賢者様?」
「おや? 賢者を知らないかい? 色々なことを知ってる人のことなんだよ」
「ううん いろんなこと知ってるならパパママが言う魔法使いって人なの?」
そう言われた老人は少し眉をひそめ、声を低くし言う。
「そうかーじゃがおじいちゃんは魔法使いじゃないのだよ」
「そうなんだ」
「って違う違う!!! 君は文字が読める
そうだな!?」
話はまた振り返る。
その間のクレスは一連の幕間で思考を停止していたが、話しかけられたことで意識が戻る。
「あ、はい 文字は....少し読めます」
ほんの少し謙虚に言ってしまった。
「ほう 少しか....」
そう何かに訝しげな声を交え言った。
「なるほど
このたった2
これを少しとな」
その目は齢6の男の子を見つめるには些か物騒な威圧感があった。
(しまった)
そうこれは揚げ足取りだ。
この聖典に置かれているのはかの者の始まりの文であり、その文を
「わたしはあなたの祈りを聞いた。あなたの涙も見た。見よ。わたしはあなたを癒す。」
これは
恐らくというのは...ああ、すまない私自身はこういう揚げ足取りような考え方をしてしまう。
なので少々我慢してほしい。
そうこの恐らくというのは以前この世界は私の
だから ...
そして老人は言う。
「私が見るにこの本に書かれている2項文には先の言葉
【わたしはあなたの祈りを聞いた。あなたの涙も見た。見よ。わたしはあなたを癒す。】
との同じ文は見当たらないな」
「あ、あはは す すこしなので読み間違えたかもしれません」
私は狼狽える。
少しという謙遜がこの老人にとってはいい推理材料になる。
ただ日本人としての言葉が仇になった。
何を言っているんだ? 話が分からない?
こんな大声で文字が読めるのか?とかいう老人が怪しい他ないからだ。
こんな怪しい人は「私は結構です」そう断るこそが一般的だ。
しかもこんな
「そうなのクレス? 私てっきり」
同い年の娘は不思議そうな声で言う。
「ああ、いやそうじゃ」
誤魔化そうにも人が多かったのが災いしたと感じてしまったクレス。
がはは そうまた豪快に笑うおじいさん。
「そうかそうか文字が読めるものよな
そりゃ警戒せずには要られぬというもの」
私は首を傾げた。
その言葉の真意というのを読めずにいた。
「おや、ここで何をしているのですか?」
そう冷たげな声で言うのは、先ほどエデリ様との付き添いの際、ソープの説明をしていた白の首掛け布をかけたデリウス様。
デリウス
「......賢者様ですか
ん?そこに居るのはクレスとエリザか
賢者からの
老人
「ほう 羊飼いはいつから神から嫌味を教えてもらったのだ?」
そう返されたデリウスは鉄面皮のようだった顔を綻び崩す。
デリウス
「はは お忘れですか? 教えを請うたかの旅路を伝聞せし賢者様にてございますよ」
老人
「かかっこの
そう美しく整えた髭を擦り目を掠めるように言う老人。
クレス
(どうやらこの二人は仲が悪いように見えた)
当のエリザは会話の内容が少しも理解出来ずに展開が進んでいるため、頭に湯気を沸かしつつ彼らの会話についていこうと左右に目を泳がせていた。
クレスはそっとエリザの頭を撫で、彼らの会話が終わるのを待った。
デリウス
「これは失敬 かの国一番の賢者様でも御仁の放った
まぁしかしとして我々は神の御言葉だけでは生きていけません
人は皆協力しあい生きているのです
それは賢者様とて例外ではありません
わたくしも賢者様の言葉には耳を傾け、
賢者様の知識をお借りしております故のかの言葉かと存じます。」
そう懇切丁寧な一礼をしたデリウス。
老人
「はっなんとも口が回るようでよかった
こうでなくては張り合いがないというものでな」
デリウス
「かの賢者様にそう仰られるのはありがたいことかと
してこの長い茶番はさておき賢者様はいかようになされてクレスとエリザと会話を?」
クレス
(会話が戻った)
老人
「ああ、そうだったな」
そうデリウスへ向けていた足を少年少女へと向き直した。
そしてクレスに近づき、その小さな肩にしわがれた手をぽんっと置く。
そして
「こやつを私の弟子にする」
クレス
「え?」
エリザ
「ん?」(なにもわかんない)
デリウス
「はい?」
この荒唐無稽かつ、さして話の脈絡のなさは周囲に静寂を与えた。
クレス
(で、弟子?)
デリウス
「ご、ご冗談をよしてください」
その静寂に破ったデリウスに帰って来る言葉がこれだった。
老人
「いやなに彼 ふむ名前的にクレスかの
クレスを私の弟子にしたくてな
賢者が弟子を取るのは当たり前のことであろう?
かの哲学者 アリウス・・・」
その一声を止めるように手をかざすデリウス。
その状況にあまり飲み込めないクレス。
デリウス
「ちょ、ちょっとまってください
賢者様が弟子を取る それ自体は大いにあります それ自体が問題ではないのです」
老人
「では何が問題だ?」
デリウス
「問題は貴方様ですよ
かの帝都に最も
この40年 一度も弟子を取らなかったとお聞きしました。
しかも弟子入りを懇願した者の中には、
王侯貴族含め高名な魔法使い、ましてや賢者すら居たと聞きます。」
老人
「そうじゃな メルトナーが弟子入りさせろと怒鳴り込んできた時は何の冗談かと大笑いしたがな」
うむ そう頷き、腕を組む老人。
エリザはハッと今理解したと顔をした。
クレスはようやくかと少し微笑んだ。
デリウス
「ではなぜです!??
なぜ齢6の少年を弟子にしようと気が狂いましたか?」
そうクレスへと指をさすデリウス。
あまりの状況に声を荒げてしまったことで、ハッと我に帰ったデリウスはクレスにすまないと一言かけた。
大丈夫ですよとそう伝えるように手を上げ頭を左右にふったクレス。
ロートリウス
「気が狂うか...では我々は狂っているか
それとも正常なのか 何が正しく
何が正しくないのか 人び....」
デリウス
「ああいいです 賢者が
我々が信ずるべきは神の御言葉
それが正しき理ですので
それはそれとしてお弟子にする理由をお聞きしたい!」
クレス
「それは僕も聞きたい」
そうまじまじと見つめるクレス。
ロートリウス
「はぁ全く
まぁそれはそれとして
そろそろ私も年ゆえな孫欲しさ故じゃよ」
一同
(((はい!?)))
クレスは
ロートリウス
「変か?」
その言葉に急な心拍数を上げた勢いで返した。
デリウス
「いやいやいや かの
これが帝都に広まれば国中が大騒ぎになりますよ!!」
クレス
(そうなの!? こんな偉い人なの!!)
ぼっーと上の空をしていた赤い髪の少女はようやくこの場の語りの内容を理解する。
そうしてクレスに近づき嬉しそうに喋る。
エリザ
「すごいわクレス! けんじゃ? ううん魔法使いさんに弟子入りするなんてとってもすごいのだわ」
クレス
(ダメだ この子会話内容が難しすぎて自己流で会話内容を整理しやがった。)
「ちょっとエリザ 魔法使いって言っても魔法使えないんだよ このおじいちゃん
ただの賢い人だよ?」
ロートリウス
「ただの は余計だ」
エリザ
「うん 分かってる! おじいちゃんは村の人達よりもいっ〜ちばん賢いだよね?!」
そう
クレス
(はい? 賢者と魔法使いのくだりで頭がショートしたからそこからの記憶がないからこその....
いやそれは逆に頭がいいのか?)
人というのは記憶がない所に自分にとって都合のいい記憶を当て嵌める。
これは│
今回の例であるならば、
エリザの先の言葉を借りて
「ううん
これでおじいさんは
魔法使いではないと否定した。
だけどエリザにとって耳に聞き慣れない賢者ではなく、彼女の辞書にある
だから彼女は賢者を魔法使いと変換し、会話の内容を理解したのだ。
ロートリウスはこの赤髪の少女の言葉に、
ほうとニヤりと微笑んだ。
デリウス
「はぁ全くエリザもエリザですが、あまりにも
あまりにも荒唐無稽です」
そう二回も同じ言葉がどれほどの意味を込めた言葉なのかを伝えた。
ロートリウス
「いいではないか
酔狂というものはいつにでも起こるものだ
君たちの聖典には人の
それにこんな
そう意にも介さないように賢者は返した。
デリウス
「そ、それは.....」
聖典の
ロートリウス
「だがこのままでは進む話も進まぬというものもう一度この三人で会話をさせて貰えぬか?」
デリウス
「しかし」
クレス
「デリウス様 ごめんなさい
おじいちゃんの話を聞いてみたいのです。」
デリウス
「クレス..... わかりました
ではくれぐれも
その目に向ける先にあるのは賢者であった。
賢者はかすかに目を細めた。
ロートリウス
「あい分かった」
では...そうその場を離れるように教会の扉を開
くデリウス。
開く先は青空と村人達の喧騒が聞こえたがすぐにパタリと静寂が訪れた。
では....
この
ようやく本題へと走ることとなったのはクレスであった。
クレス
「ロートリウスさん あなたはどうして弟子をしたいのですか?」
その言葉には子供とは似つかわしくない大人びた
エリザ
「え?どうしたのクレス?おじいちゃんはよぼよぼになったから弟子にしようとしたんじゃ?」
クレス
「よぼよぼって...それは違う
そう確信出来る言葉があります」
ロートリウス
「ほう...」
そう年寄りが孫を欲しくなったからと簡単に考えればそう受け取ることが出来る。
だがあのときの言葉は.....
「先ほどロートリウス様は"文字が読めるものは警戒せずに要られない"とそう仰っていました
弟子にするというのはこれが本当の理由なんじゃないですか?」
ほう...と髭をさするロートリウス。
「
クレス
「え?」
ロートリウス
「いやなに 世界で広まる戒めでな
元々文字が読めるというのはな国を治めることが出来るそんな
クレス
「言いたいことが分かりません
まさかとは思いますが、ただ文字が読めるだけで殺されるってことですか?」
エリザ
「え? ころされる?....」
ロートリウス
「そうだ と言ったら?」
........言いたいことは分かる。
この話だけで言えば、私は殺される。
そんな簡単な話だ。だが
クレス
「そんな簡単な話ではないはず」
ロートリウス
「何故だ?」
クレス
「文字があるというのは、この世界での対話や文明が発達していなければ出来ていない
それは文字が発達したからこそ
ロートリウス
「して....何が言いたい?」
クレス
「その叙事詩はそれを
文字が読めるというのは国と国を繋がる国益そのものになります
それをみすみす見殺しにするほど簡単なものではないはずです」
付け焼き刃の言葉。クレスが"警戒"という文字に憶測と憶測を呼んだ考えであった。
ロートリウス
「憶測だな」
早速に読まれていた。
ロートリウス
「だが、幼い子供にしてはよく練られた考えだ」
そう少年の目の奥を見据え、そして言う。
ロートリウス
「だが残念なことに人は殺すぞ
教会では文字が読めるということは聖典を読めるということだ」
クレス
「そうですね」
今だにその真意を掴めなかった。
ロートリウス
「だが読めるということは真実を知っているということだ
それは聖典の語りをする羊飼いどもには都合が悪いのだ
戦争、国政、商業に必ず彼らは聖典の言葉で
それは聖典に書かれた真意とは別の意味で捉え、それを広めたがるものだ
それに一矢を入れてみよ
神の言葉を
クレス
「けどそれこそ憶測なのでは?」
ロートリウス
「私が眼の前で見た事実だが何か?」
くっそう唇を噛む。
ロートリウス
「しかもこれが国一つ、貴族様一人ではない様々な
クレスは考える。
言いたいことは分かるが自身に降り掛かったことがない火の粉を想像したことがないため、わからない この一言に尽きる。
だが言いたいことは分かった。
クレス
「言いたいことは分かりました。
つまりは私自身が"文字が読める"ことを
そう考えているのですね」
ロートリウス
「そうと考えている」
ようやく分かった。
元々の会話に
私の会話の始まりが、【先ほどロートリウス様は"文字が読めるものは警戒せずに要られない"とそう仰っていました
弟子にするというのはこれが本当の理由なんじゃないですか?】
私の言葉には含みがあった。
私が言いたいことはこうだった。
要約"文字が読めるってことに警戒してる
ってことは文字が読める!! これが弟子入りに関係があるんですよね?
つまりは文字が読めるから弟子にしたいの?"
と言いたかった。
だけど、このおじいちゃんは
恐らく要約"さっき言ってた言葉をもう少し分かりやすく要約してほしいってことかな?
よかろうちゃんと説明してあげよう
そしてこの経緯からわしは文字が読めるお主を弟子にしたいのじゃ〜♪"
と説明したいのだ。
ああもう日本語は難しい!!
いや日本とは違う世界だから言葉は難しいか
......もう少し分かりやすく会話したいな
クレス
「もう少し会話を分かりやすくしませんか?
少し話の食い違いが起こっています」
ロートリウス
「何?そうなのか?」
少し息を整える。
クレス
「私が言いたいことは
先ほど言葉から、私が文字が読める
これが私を弟子にしたいということに関係しているんですよね?とお聞きしたかったのです。」
ロートリウス
「う...うん? あ、ああそうなのか
私はてっきり」
クレスの言いたいことを少し噛み間違えたとも感じ取れたロートリウス。
クレス
「
ロートリウス
「へ....変な..... そうか...私はただ私自身の考えを語っただけなのか....」
なるほどと理解出来た顔をするロートリウス。
ロートリウス
「いやまて それなら結局話す結果は同じではないか? 結局は弟子入りするという形になるだろ?」
結果は結果だ だからこそ過程はどうであれ結果良ければ全て良しなのでは?と考えたロートリウス。
クレス
「まだ弟子入りするとは言ってません
話の齟齬がある それだけで語る言葉が一緒でも意味が違えば至る結果が今は一緒でも将来は瓦解するんじゃないんですか?
ましてや弟子入りするとなれば」
ロートリウス
「......そうじゃな」
ロートリウスは考えた。
お互いの考えていることが一緒ではなきゃ、
弟子入りとは何か、智慧を授けるとは結局は師匠の考えが弟子が理解出来なければ弟子入りとは呼べない。
それはロートリウスが
先ほどは恐らくお互いの考えが交差しすぎた上でのすれ違いだった。
ロートリウス
「では何から話そうか」
仕切り直しをすると考えた頭を整えた。
エリザ
「ちょ、ちょっと待って」
クレス
「ん?ど、どうしたの?」
エリザ
「さっきの話が全く分からなかったわ!!」
目をぱちくりとするロートリウスとクレス。
話の内容によってはまたぶり返すことになりそうだが...
クレス
「さっきの話とは?」
エリザ
「警戒とかなんよかあんちょかとか!!」
そう手のひらを握り、力強く喋った。
クレス
(ほーらぶり返しだ)
エリザ
「わかんないわかんない!!」
だだをこねる子供になった。
仕方ないな....そう考えるクレス。
クレスは諭すように話す。
クレス
「エリザは僕が文字が読めるってのは理解出来る?」
エリザ
「うん それはとってもすごいことだと思う」
クレス
「そうか んじゃ少し例え話をしようか」
うん?と首を傾げるエリザ。
クレスはエリザに分かる言葉で例えようとした。
クレス
「例えばの話だけど、僕が文字が読めるってことを魔法が出来るって置き換えることが出来る?」
置き換える?....と頭を抱え、考える
エリザ
「うーん ......あ、うん出来る!」
ロートリウスは....ほうと呟いた。
クレス
「よし んじゃ僕は魔法が出来る
エリザはどう思う?」
エリザ
「それはとってもすごいことだと思う?」
まだ例え話を整理出来てなかったエリザ。
クレス
「そうだね
けどエリザは魔法が使えなかったらどう思う?」
エリザ
「うーん悔しいかな?」
クレス
「僕に嫉妬する? 僕を敵だと思う?」
エリザ
「ううん 思わない」
クレス
「エリザはいい子だね」
そう頭を撫でる。
エリザ
「な、なによ////」
クレス
「けどね周りの人はエリザのような考えを持ってないんだよ」
エリザ
「そうなの?」
怒り狂った演技をするように
クレス
「周りはあいつを殺したるーとか許せねーって邪魔したりするんだ」
エリザ
「何よそれ! ゆるせない! 出来ないことは仕方ないじゃないの」
クレス
「まぁ許せないからね....けどさっき話てたことはそんな話だよ
警戒ってのはこういう人が周りに居るかもだから気を付けてるってこと 分かった?」
エリザ
「うん 分かった それで今から話すのが
おじいちゃんが弟子にしたいと思った"理由"なんだね!」
クレス
「そういうこと」
ロートリウス
(なるほど
このエリザって子は要領と理解力が凄い
そしてクレス ただ文字が読めるだけではない人の
いやよく見すぎている)
目を薄めた。
ロートリウス
「あーコホン では理由は....
さっきまでは文字が読めるだけで話が済んだ
済んだが...はは がはははは」
そう豪快に笑う老人。
ロートリウス
「元々こんな辺境の地で弟子探しをしていたわけではない
帝都での生活に疲れ、ただ旅へと赴いただけだった
その旅路の中でここでコミュニオンが始まると聞いたのでそれに立ち寄った次第だった。」
クレス
「ではなぜ?」
ロートリウス
「ただの気まぐれだった
ほんの気まぐれでお主らの逢引をつい見たくなってな」
エリザ
「あ...いびき..////」
クレス
「逢引ではありません」キッパリ
ロートリウス
「ふっ...だがその中で聖典の語句を語り、文字が読めると聞いた瞬間身を捩ったのだ
我が国に子供が文字が読めるというのは聞いたことがない
ましてや齢6の子供がだ」
クレス
「ん? 文字が読めるって言っても商人の子供とかも文字とか読めるんじゃ?」
ロートリウス
「....居なくはない 12歳からの報告が多い
私ら大人は子供に対して知能がないと考えておる」
クレス
「ちょちょっと待ってください
ではなんですか? 子供は理解力のないただの動物だと言いたいんですか?」
ロートリウス
「
.....私はそうは思ってはいないが
王侯貴族は子育てはメイドに任せ、意思疎通しやすい12歳の子供に教育を始めることが多いのだ」
クレス
「信じられない」
(子育てというのは
ロートリウス
「子供にしては分かるのだな
そう信じられないのだ
残念だがな これが我が国の教育だ」
クレス
「だけど12歳まで子供はどう思って」
ロートリウス
「君は会話が通じにくい動物を見たらどう思う?」
その言葉の意図を思わず分かってしまい、
閉口してしまった。
エリザ
「....気持ち悪い」
理解してしまったそう口に手を抑えた。
クレス
「だけど」
ロートリウス
「もちろん皆がみなそう思ってはいない
私は
だがそう考える者も多いのだ」
クレス
「どうしてそんなことが」
ロートリウス
「簡単なことだ 我々は優秀だ 例え我が子でもまともな教育を受けていないからこそ出る考えるなんだろうな
そう文字が読めないって意味でもだ」
反吐が出る。いつかの
さして子供好きとは言えないが私の荒んだ目に潤いを与えてくれたのはその平穏と言える日常があってこそだった。
だけどこの
ああけど向こうでも同じことなのか....
クレス
「.....それが弟子を取りたい理由なんですか?」
ロートリウス
「平たく言うとそうだな
齢6の子供がまともな教育を受けずに文字読めるだけで私は
なぜなら私も
クレス
「え?っとまさか.....」
ロートリウス
「私が弟子を取らなかった理由はそこにあるんだ 先あるものの夢を汚したくなかった
だから私はお前を弟子入りさせたいのだ
そしてエリザ 君もだ」
エリザ
「え? 私も?」
ロートリウス
「そう 最初はさしたる程興味はなかったが」
エリザ
「ひぐぅ」(興味ないって....)
なんとも言えない何かがエリザの心に突き刺さった。
ロートリウス
「だが君達は夢ある子供達だと私はそう捉えたのだ だからこそ」
そう手を胸に添え、膝をかしづく。
「君たちを ぜひ弟子に したい
ぜひ私の手を取ってくれ」
彼らに手を差し出した。
クレスは思った。
この賢者は私達に夢を見たのだ。
先を託すという言葉をその身で指し示した。
クレス
「エリザ」
エリザ
「クレス」
お互いに見つめ、そして―
かの賢者に渡す言葉とその行いを示す。―
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