一章:序節 第二十二話 異常性


ダントルは自身の剣を構える。

クレスは向かい合うように、ダントルと対峙する。


ダントル

「なぁクレス どうして君はクレスなんだい?」


クレス

「どこかの書籍か? 俳句でも読むのが得意なデブなのか」


素の速さで一瞬でクレスの元におり、その半月状の剣を大きく振るう。


クレス

(......容赦なしか!!??)


振り向かせてくれる時間はなかった。

やれることは、ユビキタス発散の他なかった。

もう一度それを発動すると、ダントルは一瞬で後ろに飛び出す。

そのまま剣を振り下ろすが、すんでの所でクレスは避ける。


(どういうことだ? 誓約があるh...加虐趣味か?)

「容赦がないね さすがは傭兵ってところですか」


今回、魔法をあえて・・・発動しなかった。

それは彼が魔法を"見えているのか"どうかが今回の戦いの山場になる。


ダントルは半月状の剣を撫でるように持つ。

「口がよく回るね そのお口の悪さが原因で、"狙われたのかな"?」


クレス

「よく言う 容赦のなさはお前みたいなデブヤロウほどじゃないさ?」


ダントル

「はっはっは こりゃ言いくるめられたな

だけどいい加減そのお口切り落とすぞ ガキ」


そう言うと剣を下ろす。

走る構えをする。クレスはその動きに反応し、腕を出す。


ダントル

(魔法か.....だが!!)


突っ込み、クレスに向けて剣を斬り上げる。

ブンッという音がなると空気が圧縮し、吹き飛ぶ風圧が周囲を巻き込む。

一瞬にして、クレスは切られた。


あえなくも、無残にも

そして、剣の風圧が先ほどの切られたはずのクレスを霧のように消し去った。


ダントルは驚く。

気付くと遠い場所にクレスは立っていた。


ダントル

(やはり 予想通り依頼主の"追っている最中"に殺していいリストと"このクレスという少年の前でロンドールのガキを目の前で殺す"。

予想外イレギュラーはあるが、おおよそ依頼主通り

ならこのクレスは殺すのは難しい・・・


その口は嬉しそうに口角を上げる。


クレスは即席の魔法を出来上がったことに予想外な嬉しさがあった。

ユビキタス発散は魔素に自身のイメージ・・・・を乗せ、相手に"共有させる"ことが出来る。

なら! 相手にとって都合の良い幻覚を見せることが出来るのではないのか!?)


名付けて、【見える見えさせる】だ!。


.....ロマンはないが、このデブに対抗するために必要な"速さ"にはこの魔法がある。


そして 相手に魔素・・が見えていない!!


ダントル

(あいつ いつ魔法・・を使った?

いやいい? "殺せない"ってことは犯しがいがありそうだ)


ダントルは嬉しそうに剣を撫でる。

「なぁクレス この剣の正式名称はなんだと思う?」


そう言われたクレスはダントルが掲げる剣を見つめる。

重厚感のある大きく反った刃渡りの大きい剣。

「まずは剣の名前を名乗るより、自分の名前を名乗ってみたらどうだ?」


ダントルは笑う。

「確かに」と、礼儀をかける。

「お初にお目にかかります

わたくしダンタリ騎士団の副団長を務めていますダントルと申します。

今だけお見知り置きを」


クレスも礼儀をかける。

「クレス・カルエといいます。

そして今回でさようなら」


ダントルたちは互いにほくそ笑むと、

ダントルは話を続けた。

「ではお話を この剣にまだ名前がなくてですね 南洋 アディス周辺国で戦争が起きた際に拾ったものでしてね

彼らは、剣のことをシャムシエルと呼んでおるんです。

基本、剣はまっすぐ作り上げ、折れないように作るのが一般的。

ですがとある地方では、深く反った細い剣があり、これを月に見立て、三日月剣と呼ばれています。


そしてこれはとある名無しの部族が作り上げた刃渡りを広げた傑作。私は気に入り、鹵獲ろかくしたのです。

たしか....あいつらはふぁる...ふぁるしお....

まぁなんだっていいです。」


そしてその剣をクレスに向ける。


「この剣の特性は、その破壊力にあるのです。

ああ、思い出しました。

古エーゲ語でファルクスのような威力を持つことシャムシエルということから、

名はフォールチュン、ファルシオンとその地方で呼ばれておりました。


その威力は重さとこの頑丈さで鎧を頭上からかち割れる威力を誇る。」


クレスはそれを聞き、手を叩く。


「ご高説どうも 確か剣というのは切れ味が大事だとお聞きしましたが、そのファルシオンに切れ味はあるのですか?」


「切れ味? ああ、いくら切れ味がよくてもすぐダメになる。

鍛冶師に嫌われる手法だ。

大事なのは "叩く" こと。

剣は脆い、頑丈に、頑丈に頑丈に!作り、相手を"叩き斬る"モノに、価値があるのですよ?

ちなみにこの剣、肉切るときにとっても扱いやすいのですよ」


そう嬉しそうに剣を見つめる。


肉ね....とな想像をするクレス。


ダントルはクレスを持つ剣を見つめる。

「その剣はあまり見たことがないですね

抜かないのですか?」


「ええ、必要な時に抜きますのでご安心を」


「か細い剣ですね」

ダントルは嬉しそうに連想する。

「まるで女子おなごの腕のようですね

すぐに折れてしまいそう」


「女性は優しく扱うのが定説ですよ?」


「失敬 女性と子供を見るとつい興奮してしましてね 手荒く扱ってしまうのです。」


「そうか」


クレスはダントルの元へと走り出す。

ダントルとは大違いの遅さ、だがその瞬間、クレスは剣を抜く。


ダントルは一瞬、思考をする。

が抜く瞬間か!?)


だがクレスの動きはブラフである。

硬直したダントルに向けて、放つ。


ユビキタス発散


一瞬の激痛と咽びにダントルはひざまずく。

その隙を狙って、首元に剣を抜き、差し向ける。


ダントルは叫ぶ。

アドウェルサス逆転


クレスは剣を振り抜くが、そこには誰も居らず。

後ろに跪いていたダントルが居た。

それに気付くのが遅く、首を捕まれ振りほどけないクレス。


クレスは魔法の発言発現をしたはずなのに、なぜ今効かずに自身を掴めているのか想像できなかった。

苦しむ間際に、見える目に宿すを見ると、ダントルの周囲に発散によって集束されているはずの魔素がなく。

それ・・は自身の位置にあった。


位置の逆転。 これがダントルの魔法か....


だが、ダントルはユビキタス発散のダメージは効いているのかよろめていた。


「ぐ...へへ やっと捕まえた」


一瞬、ゾッとする。ダントルの笑顔は歪さがあったからだ。

本能からか、自身の右手にある剣をダントルに突き刺そうとしていた。


だが、


ぐいっと首に圧力がかかる。

「おっとこれ以上抵抗すると、死ぬぞ ガキ 抵抗するな 優しくするからさ」


そんな風に優しく諭す。


クレスは考える。

(........いや、俺を殺さないはずだ)


一瞬の判断。クレスは剣を振り上げる。

狙う場所はダントルの手のけん

撫でるようにった。


ダントルは「このガキッ」と言いつつ、クレスから手を離し、自身の手を見つめる。

血は出ていたが、開いたり閉めたりと確認し、無事に手は動いていた。


クレス

(浅かったか)


ダントル

(このガキの目つきが変わるたびに、判断力がバケモノになっている。

齢13のガキに出来る行動力じゃないぞ

だが、いいゾこれ)


ダントルの口元によだれがたれる。

目つきが真剣になったダントルはただ黙って、自身の血のついた手で涎を拭き伸ばす。


クレス

(初見で失敗した。 策は.....)


だが考える時間なんて与えるわけがない。

気付くとダントルの剣は自身を大幅に超えるように横に並んでいた。

クレスは本能で剣がある方向に剣を立てて、攻撃を防ぐ。

が、その威力は凄まじく、クレスの体は"叩き"飛ばされる。


壁にぶつかる衝撃に、肺がやられむせてしまうクレス。


ダントル

「いいねぇ いいね!! その抵抗力 いい味出してるよ とっても壊したい!!


このファルシオンは有名ではなくて、どうしてこの傑作を世に広まっていないのか不思議なんです。

子供・・を切るのに使え、

子供・・を脅すのに使え、

子供・・を犯すのに使えるんです。


だからさ、だからさぁ クレスてめぇが壊れないのが最高なんです」


クレス

「何を言っているんだ?」


ダントル

「称賛です 称賛ですよ クレス

あなたはこの一瞬で、俺を本気にさせた。」


その瞬間、圧という圧を感じた。

鳥肌が立つ。

それもそうだ。まだ魔法見えるが残っているその瞳には異常が映り込んでいた。


ダントルから大量の魔素が噴き出し、集束し、噴き出し、集束をなんども何度も繰り返していた。


ダントルは笑う。

「さぁ、奇跡まほうの時間だ。」


ミレス奴隷はアドウェルサスあなたをミニステルアリス兵士だと言った


気がつくと、クレスの視線は一変する。

目の前に一切合切の変化はなかった。

あるのは"思考の変化"だ。


全身に震えがある。

立ち上がる力に一切の恐怖もなく、あるのは...


"抗えない"という一心のみである。


『なんで!?』『いや』『ああ』『そんな』『いやだ』『戦わないと』『けどどうして?』『俺は負け犬なんだ』『戦いたくない』『死にたくない』『剣なんてもってなんの意味がある』『俺は奴隷なんだ』『逃げられない』

『いつだって逃げられなかった』『あいつらは俺を助けなかった』『』『』『』『』『』『』『』『』


思考が巡る。ただ巡る。


目の前のダントルは恍惚こうこつとしていた。

彼は嬉しそうに天井を見る。

「」ああ、これが"君"の覚悟か!!??


思考は異様だが、意識はあった。

自身の思考を異常だと認識出来る時点で、認識と思考と体は別モノであるということ。


つまり"ダントル"の思考と"俺"の思考を入れ替えた・・・・・


こいつは超ネガティブ思考である。


だけど、だけど ここまで体が動けないほどなのか?。。。。


自身の思考に塗れる中、震える体を見つめる。


ダントルは嬉しそうに見つめる。

「どう? すっごくよくない? 俺の考え」


どこがだ!! 考えることはもうできないが無意識や意識する時間を減らせば、どうにか体に命令が出来る。

直感で動け


そう言うとクレスは体を震わせるながら、剣を支えとして立ち上がる。


ダントルは驚く。

「俺でも苦労するのに、よく立ち上がれるね」


嫌味か....よく"あれ"で動けたな


クレス

いやだめんどくさい 戦いたくないやろうだな


ダントルはこちらに走る。

その速さとキレは異様に早く感じた。

思考が邪魔する中、慣れない直感で動くほかなく。

避けることはできず、剣で受ける他しかなかった。

だがダントルは嬉しそうに剣戟けんげきを続ける。


戦いたくない ああ、ダメだ 直感すら飲まれ

ど、

 う、

  し、

   た、

    ら


『先輩 一度でも反抗期してみたらどうです?』


「はんこうき?」


『はい 反抗期 うちの娘は早々に来たんです 先輩まだ反抗期来たことないでしょ?』


「だが....」


『ぶつける相手居ないからです

反抗期って呼ばれるのは他人に反抗したから反抗期って呼ばれるんです

俺は多分....先輩を助けれません

だけど先輩の鬱憤うっぷんだけはなんとか晴らせると思うんです。


だから殴ってください!』


「はぁ!!?? ドMかぁ!!」


『あははw 違いますってそんな性的関係 妻だけで十分ですよ 違います

うちらに愚痴でもなんでもいいから吐いてくださいって意味ですよ!!』


「はしょりすぎだ」


『1回でもいいんですから 俺たちにぶつけてください 先輩の鬱憤を』


結局それを俺は断った。


『ならいつでも言ってくださいね 俺たちはそれぐらいでは離れたりしませんから

あ、けど言い過ぎたら俺たちも怒りますからね?』


「ふっw そうだな 1回怒ってみるか」


親指を立てる後輩。

『いいんじゃない?1回カチキレてください!!』


「ああ」


「あああ?」


「あ゛あ゛あ゛!?」


「うっぜぇなー何楽しそうにしてやがんだ

このネチネチクソ豚ヤロウが!!」


かぁんと大人の力がこもった一撃を吹き飛ばされる。

!?っと驚くダントル。

クレスの顔に凄まじい怒気を込めていた。


一瞬、鼓動を速めるダントル。

「何が言いたいんだ!!」

再び剣を振り下ろす。

だが剣を受けきるクレス。


「てめぇがネガティブ思考なのすっげぇどうでもいいんだよ 他人の思考取れて何を嬉しそうにしてんだよ そういう考えは自分で作り上げてからやるもんだよ!」


「ハァ!? 俺が どれだけその考えに苦しまんできたか!!??」


「てめぇの家族とてめぇの穴ほじ殺された程度で何をナヨナヨしてんだよ」


「!? どうしてそれを」


("思考の入れ替え"であるなら、経験値はその思考の中に紛れているはずだ!

それを"利用"しろ!!

思考は人生の積み上げで出来上がるからだ

ジャネーの法則にのっとるなら、

0〜20歳x3で約60年分の子供時代の経験が思考人生を作り上げる要因になる。


なら思考回路ダントルの人生に出てくる単語と経験と直感が俺の"武器"になる!)


「それでえ? 復讐したんかそいつに!?」


「ぐぅそれは!!」


「してねぇよなぁ?? ええ? お前なんもせずに親が妹が弟犯され殺される瞬間、ションベン蒔き散らかしてただけじゃねぇかよ!!」


ぐっ心臓が痛い、自分も...抗えなかったからこそ分かる....だけど今こいつに勝たないと友達が死ぬ!!。


「うるさい!! うるさい! うるさい」


剣戟が強くなっていく。


「何年探した?」


「......」


「一日たりとも探していないよな?」


剣撃がどんどん強くなっていく。


「...........」

(どうしてだ!? どうして俺の考えが効かないんだ!!)


「当たり前だよ "おまえの家族"陵辱されて、ブチギレないほうが難しいだろ」


(こいつ もう"俺"の思考に飲まれている!?)


クレスの目に怒りが宿る。

「血まみれの家族の部屋の隅でガタガタ震えるクソガキがやったことはなんだ!!??」


ダントルは奥歯を噛み砕きそうになる。

(クレスの剣の扱いが自分と重なっているように見える。

まるで自分自身と戦っているようだった。

怖い、こわい、恐い

なのに"こいつクレス"の思考は何も感じない 感情・・がないのか?!)


クレスは叫ぶ。

「てめぇと同じようなクソガキに自分の受けた身を与えてるだけじゃねぇか 1個も成長すらしてねぇ 抵抗もできねぇガキ相手に八つ当たりしてるだけの怠惰な豚ヤロウだよ!!」


ズカズカと言ってくるダントルはブチギレて、剣を放り投げて、クレスを犯した。


――


床に寝込むダントルを見つめるクレス。

「...........」


以前として思考に飲まれているが、殺せばこの魔法は元に戻るのだろうか。


俺が扱ったのは、見せる見えさせる

ダントルの思考を利用し、あいつ自身の都合がいい幻覚を見させた。


.......意識は冷静になってしまった。

ダントルがぶつけたかった想いを俺が勝手に果たしてしまったからなのだろうか....


クレスは剣を鎖骨の間に心臓めがけて突き刺そうとする。


子供の手ではこの男を筋肉の多い胸に突き立てるのはむずかしい。

だから.....お願いだから 死んで楽になってくれ ダントル。


突き刺そうとするが、ダントルの脂肪と筋肉により、セミスパタの細い剣が折れた。

パキンッという音と痛みでダントルの正気が戻る。

だが現実のクレスを目の前にまたも狂気に戻る。クレスは冷静なまま折れた剣で喉に突き立てる。


.............................


ぐっと剣を抜こうとするが、筋肉収縮により抜けなかった。


そのまま倒さると重さによって折れた剣は首を貫いた。


クレスの思考はもう元に戻っていた。

「.......お前の復讐相手をいつか見つけてやる

だからもう自分を追い詰めなくていい

逃げたかったんだろダントル

だからあの...魔法なんだ......」


そう言い、その場をあとにする。

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