第3話 異世界転移編 異世界

「ライト!」


 プカプカと浮かんだ明かりが、周囲を照らす。 うん、これで良く見えるようになったぞ。


 周囲を確認してみると、そこは円形のホールになっていたらしく、地面や壁にディメンジョン・スラッシュで傷付いた跡がある。


「ん? 壁や地面が非破壊オブジェクトじゃない?」


 試しに死の大鎌デス・サイズを地面に叩き付けてめると、随分深く突き刺さる。 引き抜くと、地面には切り込みが残っていた。


「どう言う事なんだ? コレ」


 しゃがみ込んで傷跡を指でなぞると、ザラザラとした食感が伝わってくる。


「そんなまさか、現実だとでも言うのか? ログアウト! サインアウト! シャットダウン! えっ、終了出来ない?」


 試しにVMヘッドセットを外そうとして、手が髪の毛や耳に当たり、いつの間にかアバターその物が自分となっている事を知る。


「何じゃコリャぁぁぁぁぁぁぁ~っ!」


 まさか異世界にでも召喚された? でもステータス画面は確認できたぞ。 小説にある様なゲームの世界なのか?


「いや、ゲームの世界で知らない異世界言語なんてのは変だ」


 だが、現実となると事情は変わってくる。 恐らくはココにいた連中達は英雄とか勇者とかの異世界召喚を行っていたのではなかろうか?


 そして召喚されたのが自分であり、あの転移トラップらしきモノが召喚陣だったとすれば説明は付く。


 となると、この世界では自分は大量殺人を行った吸血鬼と言う事になるのでななかろうか? 指名手配とかされるのだろうか?


 いや、それ以前に食料や飲み水、それにお金なんかはどうすれば良いのだろうか?


「いかんぞ、そんな事を考えていたら喉が乾いてきた」


 ストレージの中はどうなっているのだろうか? 確かに今殺しまくった人間達の死体がわんさか入っているのだろうが、元々ストレージに仕舞っていたアイテムや食料、所持金が気になった。


「ストレージ・リスト!」


 すると、元々ストレージ内に仕舞ってアイテムった物資などが無事である事を見て安心する。 良かった、金貨なんかも無事みたいだし、最悪の場合は換金して貰えば何とかなりそうだ。


 ん? 見た事が無い金貨があるぞ


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 リュミテール国兵士の死体 × 32

 リュミテール国騎士の死体 × 12

 リュミテール国召喚師の死体 × 6

 リュミテール金貨 × 14

 リュミテール大銀貨 × 38

 リュミテール銀貨 × 18

 リュミテール大銅貨 × 21

 リュミテール銅貨 × 126

   ・

   ・

   ・

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「まさか、この国の名前がリュミテールだとでも言うのか?」


 取り敢えず、金貨を出してみると…


「うわぁ、知らないオッサンだ」


 そこには王冠を被った知らないオッサンの横顔が描かれている。 引っ繰り返すと数字とおぼしき文字が書かれていた。


 うーむ。 貨幣価値が分からない。 いや、それ以前にこの異世界の常識とか知らんしどうしろと?


 仕方がない、取り敢えずここから出るか。 えーと、出口は…あそこか? 上に上がる階段がある。


 そちらに向かって歩み出すと、血塗れになっている地面が滑りやすくて歩きにくい。 面倒だな、乾かすか。


「ファイヤ! ってうわっ! ビックリしたぁ」


 部屋中を火で満たすと、地面はすぐに乾燥した。 うん、室内でやる事じゃないよね。 学習したぞ。


 オリジン・ヴァンパイアは魔術耐性が高いのか熱さは感じなかったが、人間だったらとゾッとした。


 階段を上がると、そこは通路だった。 遠くから何かが駆け寄って来ると共に、何だか言葉が聞こえる。


「eqwiuon敵daskhcui! 敵daskhcui!」


 どうやら敵認定されている様子だ。 死の大釜デス・サイズを構えて、駆け寄ってきた連中を両断する。


「ディメンジョン・スラシュ!」


 倒した敵は、ストレージへ産地直送状態だ。 その時、『所持金が増えたら嬉しいなぁ』なんてバカな考えが頭を過った。


 そんな罰当たりな事を考えていたセイか、次々と敵が現れる。 その押し寄せてくる軍勢を相手にしながら、人を殺している事に対する忌避感の様なモノを微塵みじんも感じない自分に正直に驚く。


 何だろう、リアルなんだけど現実感が乏しい。 まぁ魔法を使ったりとか、自分が背丈以上もある死の大鎌デス・サイズを振り回している事が自然過ぎて、どこか人間的な感情を失ってしまったのかも知れないが。


「この状況を何とかする為には、殺し尽くすしかないってか」


 また一人、死の大鎌デス・サイズで両断した。 手応えも無く、熱したナイフでバターでも切っている気分だ。 いいぜ、やってやろうじゃねぇーか!


 フルメイルの騎士だろうが、魔術師だろが兵士だろうが関係ない。 お前たちはタダ切られる為の藁人形わらにんぎょうと同じだ。


 何の目的があって私を召喚したのかは知らないが、アテが外れて悪かったな。 間違っても今の私は誰の下に付くつもりもない『ルビー・サファイア』だ。


 この名前は誰ともパーティーすら組まずに、最強にまで至った存在なのだから。


 さぁ、殺してやるから掛かってこいよ、クズ共。


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2024年10月28日 21:45
2024年10月29日 21:45
2024年10月30日 21:45

VRMMOゲームをしていたハズが、気が付いたら異世界にいたんだが… ~人を見たら経験値と思え~ かんら・から @kanra-kara

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