第33話 冒険者編 買い物

 一人で街中を彷徨うろつくのだが、当然にして商店街など見つからなかった。 折角、野営で色々と不足したモノが見つかったのだからと思っていたのだが、仕方がない。


 だから道行く女性に声を掛けた。


「あのぉ、スミマセン。 商店街って何処にありますか?」

「あぁ、それなら、ソコの道を直進して3つ目の角を、左に曲がれば見つかりますよ」

「有難う、行ってみるよ」


 完全んなお上りさんに思われたんだろうな。 何だか目が笑ってたし。 そして、教えられた通りに角を曲がると、色々な露天や店が密集している地域に出た。


 不足していたモノって何だっけ? 木製で良いので、皿とかフォーク、スプーンなんかも欲しい。 そうして探しながら色々と物色していると、木工細工を扱っている店を見つけた。


 何だか不思議な気分だ。 食器類ってスーパーなどの専門エリアで買っていたし、木製の椅子やらテーブルがある店で、食器があるかどうか不安になる。


 だから店内にいる店員っぽい人に聞いてみる。


「あのぉ、食器とかフォークとかありますかぁ?」

「ん? オーダーメイドなら作らない事はないけど、普通は雑貨屋だな」

「失礼しましたぁ」


 根本的に入る店を間違えた様だ。 今度は田舎者か不審者でも見るかの様な視線だった。 まぁそうだろう。


 私の衣装は黒ゴスロリだし、庶民には見えないだろうし、かと言って貴族にしては妙なのだろう。 お付きの者すらいないのだから。


 そんなこんなで商店街を彷徨いていると、追跡してくる気配が3つ。 まぁカモか何かにでも見えたのだろう。 だから人気のない路地を探して、ワザとそこに入ってみた。


「よぉねぇチャン、良い服着てるじゃねーか。 全て脱いで、有り金も出しな」


 そう言って、これ見よがしなナイフをチラつかせて脅してくる。


「そんなぁ、私困りますぅ」

「手前に選択肢なんて無ぇんだよ。 叫んでも無駄だぜぇ」

「そうなんですかぁ? てい♪」

「うぎゃぁぁぁ~っ! おっ、俺の腕がぁぁぁ~っ!」


 少々叫んでも問題ない場所らしいので、爪でナイフを持つ腕を切り落として叫んでもらった。 うん、確かに誰も来ない良い場所だ。


 さらにヤバいと感じて逃げようとした2人は、背中から切り裂いてみた。


「うぎゃぁぁぁ~っ!」

「ひぃぃぃあぎゃぁぁぁ~っ!」


「確かに叫んでも誰も来なさそうですね。 それじゃぁ死んで貰いまぁす♡」


「嫌だぁぁぁ~っ! 死にたくない「死ね!」あぎゃっ!」

「まっ、待て! 俺たちは「死ね!」ぐはっ!」

「たっ、助けてくれ「死ね!」うぐっ!」


 はい、お掃除完了! てな事で、3名様、ストレージへご案内。


 そして何気ない顔をして、お買い物再開。 カワイイ物とかあると嬉しいなぁ。


 色々探すと、遂に雑貨屋発見。 いざ突入!


「すみません、食器とかフォークとかは何処にありますかぁ?」

「それならそっちの棚だよ」


 流石にプラスチック製品は無かったが、様々な大きさの木製の皿や椀、コップなどがあったので、予備も含めて数人分手に取る。 おっ、お鍋やフライパンなども発見!


 ナイフやフォーク、スプーンに料理ヘラ、その他、料理に使えそうな物はまとめて購入! うん、これで少しは文化的な食生活が送れそうだ。


 店を出て、次は調味料や何だかよく分からない野菜や肉なども購入。 おっと、柔らかパンも忘れちゃいけないな。 あとは食事用のワインも。


 でも買っていながら、料理する機会ってそんなにあるのかな? とも思ってしまう。 なので、次は屋台を中心に見て回る。


 おおぅ、ファンタジーの定番の肉串があるぞ。 おっ、フランクフルトもあるのか。 早速、気に入った物から大量購入。 勿論、行き先はストレージだ。


 収納系スキルは珍しがられたけど、大量購入しているので別に大した問題になる事も無い。 第一、貴族街と庶民街は別なので、変な貴族に絡まれる事も無いしね。


 だが、何故かまた付きまとって来る気配が複数。 ホントに治安が悪い街だな。


 仕方がないので、今度も迷ったフリをして、裏路地へ進入。 すると案の定、声を掛けてきたバカがいやがった。


「おぃ、便利そうなスキルを持っているじゃねぇか。 ウチのウラノスファミリーで「死ね!」うぎゃっ!」

「お前、ウラノスファミリーに喧嘩を「死ね!」ぎゃばっ!」

「まっ、待て! 俺たちはウラノスファミリーの傘下の「死ね!」ぐはっ!」


 ストレージへ収納。


 そうこうしていると、残りの人間はジリジリと距離を取って、遂には逃げ出した。


「あっ、待てっ!」


 余りの逃げ足の早さに驚いてしまう。 思わず全力で追いついて、首根っこを握り締めると、力加減を失敗してヘシ折ってしまった。 ストレージへ収納。


 しまったな。 何だかマフィアだかギャングだかを敵に回してしまったみたいなんだけど、元締めを吐かせる前に殺してしてしまった。


 まぁ良いや。 絡まれたら今度こそ皆殺しにしようと心に誓って、商店街へと逆戻りした。


 そう言えば、鍛冶屋とか武器屋とかも探していたんだよな。 それを思い出して、コロッケみたいな謎の揚げ物を売っている屋台で注文しながら聞く事にした。


「おっちゃん、1ついくら?」

「大銅貨1枚だよ」

「それじゃぁそれを1つ。 それと武器屋とか鍛冶屋とかの場所を知らないかな? はい、大銅貨1枚」

「まいど! それなら冒険者ギルドの近くに何件かあったハズだよ」

「そっかぁ、有難う」


 どうやら、武器屋や鍛冶屋はこの商店街には無いらしい。 でも、冒険者ギルドって街の反対側じゃん。 遠い。


 そして私は、武器の手入れが出来そうな鍛冶屋を探して、冒険者ギルドの方に向かって行った。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る