第34話 冒険者編 鍛冶屋

 冒険者ギルドの方面に向かって歩く。 すると、私の顔を知っている者は何故か道を譲ってくれた。 どうしたんだろう? 急に親切心にでも目覚めたのかな?


 まぁ、良いや。 歩きやすいのなら文句はないし、ご厚意に甘えるとしよう。 しかし見つからないなぁ。


 良し、武器の事は冒険者さんに聞くとしよう。


「あっ、そこの冒険者さん。 ちょっと武器を…」

「嫌だぁぁぁ~っ! 死にたくないっ!」


 そう言って逃げてしまった。 うん、セバスに無関係な冒険者を皆殺しにしろって命令しちゃったもんな。 どうやら危険人物判定でも受けてしまっているらしい。


「と言うワケで、受付嬢さんに聞いてみる事にしました」

「ちょっ、今度は何をやらかしたんですか!?」

「いやぁ、別に。 そりゃぁ強盗っぽいのとかマフィアっぽい人とか殺したけど。 見る?」

「見ません! って言うか、街を歩いただけで、どうして殺傷沙汰さっしょうざたになるんですかっ!」

「えーと、襲われやすいから?」

「ワザとやってるんじゃないですか?」


 ひどい言われ様である。 それにしても、随分と嫌われたモノだなぁ。


「それより、鍛冶屋を紹介して欲しい」

「ウチは斡旋所あっせんじょではないので、普通は紹介なんてしていないんですけど?」

「良い鍛冶屋を紹介してくれるなら、イケメンを進呈するよ?」

「イケメンですか? どこでさらって来たんですか?」

「おやっ? 興味あるの? それじゃぁ、はい」


 そう言って、イケメン騎士の生首を進呈した。


「ぎゃぁぁぁ~っ! 生首じゃないですかぁぁぁ~っ!」

「喜んで貰えて、何よりだよ」

「喜んでいません! てか、生首なんていらないですぅ」

「そっか、下が無いのが問題なのか。 まぁいちゃったんで全裸だけど、体の方も進呈しよう。 このムッツリ娘さんめ」

「死んでいるのが問題なんです! それにそんなモノに趣味はありません!」

「またまたぁ。 じゃぁ、どんなモノなら納得するの? もしかして、賄賂わいろを要求されているのかな?」

「賄賂なんて要求してません! それよりも帰って下さい!」

「鍛冶屋の場所を教えてもらえたら、大人しく帰るよ」

「職人さん達には迷惑を掛けないで下さいね!」

「そりゃぁ腕の良い職人さんたちとは仲良くなりたいもん。 暴れるワケ無いじゃん」

「じゃぁギルドでも暴れるのは止めて下さい」

からまれているだけの被害者に、酷くない?」

「酷くないです!」


 そうしてギルドで腕の良い鍛冶職人の店の場所を教えて貰った。 よっぽど早く帰って貰いたかったらしい。 半分涙目だったし。


 暫く歩くと、目的の鍛冶屋はすぐに見つかった。 意外と小じんまりとした、小さな鍛治屋だ。


「ちょっと良いかな?」

「ん? 見ない顔だな。 新入りか?」

「まっ、そんなとこ。 武器のメンテナンスを頼みたいんだけど、大丈夫かな?」

「おぉ、良いぜ。 出してみな」


 ストレージから死の大鎌デス・サイズを出してから手渡した。


「こりゃすげぇ! 作った鍛冶師に合いたくなるような大鎌だな!」

「でしょ? 自慢の一品なんだ」

「それにしても、血脂ちあぶらでベトベトじゃねーか。 一体何を斬ったんだ?」

「騎士や兵士、それに冒険者と犯罪者かな」

「待て待て待て待て! どうして騎士や兵士なんかを斬ったんだ?」

「えっとぉ、襲われたから?」

「どうして疑問形なんだよっ!」

「よく理由も分からずに拉致されたからかな。 それに最初に斬り掛かって来たのは相手が最初だったし」

「お前さん、賞金首か何かなのか?」

「おっ、分かる? ショボい賞金を掛けられて、少し怒っているんだ」

「マジかよ…」

「で、メンテはやってくれるんだよね?」

「おっ、おぅ。 金さえ払って貰えるならな」

「いくら?」

「銀貨2枚でどうだ? ついでになおしておくぜ」

「それじゃぁ、はい。 銀貨2枚」

「まいど。 3時間後にまた来てくれ」

「それじゃぁ、宜しくねぇ~っ!」


 店を出ると、何故だか数人の冒険者が待ち構えていた。


「ひゃっはぁ! 武器が無ければコッチのものだぜ!」

「ダーク・ブリット・ガトリング!」

「うぎゃぁぁぁ~っ!」


 すると、それを見た冒険者が叫ぶ。


「魔術を使用するなんて、卑怯ひきょうだぞっ!」

「バカなの? 死ぬの? ダーク・ブリット・ガトリング!」

「うぎゃぁぁぁ~っ!」


「まっ、待て。 俺たちは通り掛かっただけで、決してメイン・ウエポンが無い状態を狙ったわけじゃないんだ!」

「ダーク・ブリット・ガトリング!」

「うぎゃぁぁぁ~っ!」


 そうこうしていると、残りの冒険者は逃げてしまった。 しかし、射線は通っている。


「ダーク・ブリット! ダーク・ブリット! ダーク・ブリット!」

「ぎゃばっ!」「うぎゃっ!」「げぺっ!」


 ふぅ、鎮圧完了。 死の大鎌が無いと、勝てるとでも思ったのかね? どうやら冒険者の知能は高く無いらしい。


 面倒だが、散らばった冒険者の死体をストレージに収納していく。 私と目があった一般市民は、そそくさとその場から逃げていく。


 いや、流石に一般市民を殺す予定は無いよ。 そして待つこと暫し。 一般市民は衛兵を連れて戻って来ていた。


「そこのお前、拘束するから覚悟しろ」

「ダーク・ブリット! ダーク・ブリット! ダーク・ブリット!」

「ぎょへっ!」「ぐはっ!」「んぐっ!」


 キジも鳴かずば撃たれまいに。 なんてそんな事を漠然と考えてながら、衛兵の死体をストレージに仕舞い込んだ。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る