第15話 異世界転移編 冒険者登録

「はっはっはっ、どうした冒険者ども。 この程度なのか?」

「うっせぇっ! うぎゃぁぁぁ~っ!」


 冒険者ギルドの中で戦闘になったのだが、襲って来たのは一部だけで、その他の冒険者たちは距離を取って見物している。


 どうやら冒険者全てがバトルジャンキーと言うワケでは無かった様だ。 多くの者たちは壁際かべぎわに寄って、戦闘に巻き込まれるのを回避している様子であった。


 そんな事もあるので、私は死の大鎌デス・サイズとプレイヤースキルだけを使って冒険者を狩っており、周囲の人間を巻き込まない様に注意しながら戦っている。


 そしてセバスも戦闘に巻き込まれた様子で、そちらは堅実な戦って戦い方で、相手を殺さない様に無力化している様子であった。


 人間の時と比べれば、ステータスは倍近くに上がっているハズなのだが、単純に人間の時のクセが抜けていないのかそれとも性分なのかは知らないが、戦っている相手を殺すつもりは無いらしい。


 甘いね。 ヴァンパイアとなった以上、人間との共存は簡単ではないと思うのだが、そこら辺はどう考えているのだろうか?


 足場が邪魔なってきたので、周囲の死体をストレージに仕舞い込む。 そして周囲を見回すと、私たちに襲い掛かってくる連中はいなくなっていた。


 セバスも戦闘を終了して剣を収めているところだったので、話しかけてみる。


「相手が殺しに掛かっているのに、殺さなかったのか? 甘くいないか?」

「お嬢様、アレをご覧下さい」


 セバスに言われた方角を見ると、そこには私とセバスの指名手配書があった。


「はぁ? 私の賞金が、たったの金貨150枚だとっ?」

「私は20枚で御座います」


 金貨1枚を10万円だとすると、私の賞金は1千5百万円って事になる。 フルプレートメイルの高額なもの1つでも同じ位の値段がするので、安すぎる印象を受ける。


 いや、私で安すぎるなら、セバスは雑魚扱いなのではなかろうか? どうやら指名手配を行ったのは国そのものと言うよりは、どこぞの貴族が行ったのではあるまいか。


 この金額だと、大量の経験値を溜め込んでいる冒険者からの襲撃なんてのは望めそうにないなと、ふと残念に思った。 仕方が無いな。


「そう言えば、冒険者の登録証って身分証になったりするのか?」

「えぇ、勿論なりますよ、お嬢様。 もっとも、マトモな身分証扱いになるのはCランクあたりからだと思いますが。 まさか登録を考えておいでですか?」

「そうだが、何か問題でもあるのか?」

「いえ、指名手配されている者が登録できるかどうか、分かりませんので」

「それなら、受付嬢でも説得すれば良いんじゃないか?」

「それもそうで御座いますね」


 そう言う事らしいので、受付嬢のいるカウンターへと向かうと、イキナリ抗議されてしまった。


「ギルド内での戦闘は困りますぅ!」

「いや、イキナリ襲われたので返り討ちにしただけだ。 正当防衛だろ?」

「それでも、冒険者同士の殺し合いは困るんです!」

「いや、私はまだ冒険者では無いんだが?」

「とにかく、ギルド内での殺しは禁止です!」

「つまり、外で待ち伏せして殺しまくるのは良いんだな。 経験値の足しにもなるし、積極的に狩るとしよう」

「やめて下さい!」

「私たちの指名手配書を残しておく限り、小遣い稼ぎの自殺志願者は減らないと思うぞ」

「そもそも、部外者はギルド内には立ち入り禁止です!」

「だから関係者になってやろうと思って、冒険者登録に来た。 大人しく登録に協力しないと、何だか暴れたい気分になるんだ。 具体的には、ここを更地にしてしまうかも知れないな」

「ギルドは、脅迫には屈しません!」

「セバス。 壁際に避難している冒険者を斬り殺せ。 お前はヴァンパイアとしての自覚を持つべきだ」


「お嬢様、何を無茶な事を言っているんですか! 私は無差別殺人なんてお断りで御座います」


「セバスよ、お前はこれからヴァンパイアだと言う理由だけで、人間に襲われる未来が必ず訪れる。 平穏な未来なんて、決して送れないぞ」


「いや、それでも私は…」


「ヴァンパイアである事を隠して生きているのは、雑魚のする事だ。 人間との共存を望むのだともしても、ヴァンパイアである事を隠すのは私が許さん」


「受付嬢の娘さん、貴方が私たちの冒険者登録さえ受け付けて下されば、これ以上無駄な犠牲は出ません。 ですので登録を拒否しないで頂けませんか?」


「えっ、いや、でも、冒険者登録出来るのは人間と亜人だけって決まってますし、ヴァンパイアは亜人に含まれているかどうかなんて知らないですし」


「なら今すぐ調べて下さい、犠牲者を出したくないのです」


「ギルドマスターに聞いて来ます!」


 そう言って、受付嬢は奥に消えていった。 周囲の冒険者は私がセバスに殺害を命じたのを聞いていたのか、緊張をもった表情で動かずにいる。


 だが、そういった状況は受付嬢が戻って来たので、長くは続かなかった。


「ギルドマスターがお呼びです。 お二方、こちらへお越し下さい」

「分かった、会おう。 セバス、行くぞ」


 そして案内された先には、筋肉ダルマなオジサンがいた。


『鑑定!』


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 名前 : ウォルフガング・ガズペル

 種族 : 人間

 性別 : ♂

 レベル: 58

 体力 : 540

 魔力 : 42


 筋力 : 80

 持久力: 182

 賢さ : 80

 器用さ: 43

 素早さ: 51


 攻撃力: 50

 防御力: 40 + 30


 スキル: 剣技、身体強化


 取得魔術: 生活魔術、火炎魔術


 称号: 『アルハイド・ギルド・マスター』


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 おおぅ、騎士よりもステータスが高いじゃねーか!


「ねぇ、狩っても良いかな?」

「イキナリお前は何を言ってやがるんだ?」


 これが、ギルド・マスターのウォルフガングとの邂逅かいこうであった。


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