第14話 異世界転移編 冒険者ギルド

「それじゃぁ、臨検を行っても良いかな? 執事のウォルターさん」

「ウォルターとお呼び下さい。 それで、どの部屋から臨検なさいますかな?」

「そだねー、それじゃぁ客間の案内からお願いしようかな」

かしこまりました、こちらで御座います」


 美味しいお茶も頂いた事だし、私としては穏便に済ませたいところ。 勿論この屋敷は白だと思っているので、荒事あらごとにはならないと思っている。


 そして、案内された客間は天蓋付てんがいつきのベッドがある部屋だった。 気配察知にも反応は無いし、この付近にも隠れている者はいない様子だった。


「他の部屋もご覧になりますか?」

「いや、良いよ。 気配察知には特に何も引っ掛からなかったし。 それより広間とかがあるなら見たいな。 大人数が入れるような」

「広間で御座いますか? それならパーティ会場に使用する部屋が御座いますから、そちらを案内致しましょう」

「うん、頼むよ」


 そう言って、今度はパーティー会場に使用出来そうな部屋を複数、案内された。 公爵邸ってやっぱデカいわ。 そうやって複数の部屋を案内させられたのだが、不自然なくらい人がいなかった。


 まぁ、お茶で時間稼ぎをされていた時には薄々感じてはいたんだけどね。 確かに王族は来なかったのかも知れないケド、それ以外に逃げ込んだ人がいたんじゃないかな?


 私としては、経験値的にも美味しくなさそうな貴族とかはどうでも良いし、責任者の王族以外はどうだって良い。 だけど、城から逃げてきた連中をかくまっていたのがバレるのを恐れたのか、私たちがお茶を楽しんでいる間に逃したんじゃないかな。


 実はヴァンパイアってのは地獄耳で、そこら辺の事情は少しは分かっているんだけどね。 そいうった連中は見逃す事にしたのだ。 どうやら逃げ込んだのは貴族だけだったみたいだし。


 今頃、馬小屋あたりで息を殺して嵐が過ぎ去るのを待ち望んでいるのではなかろうか?


 その後、幾つかの部屋を臨検した後に、ご親切にも次の目的地まで案内してくれるらしい。 なので、ここでは遠慮なく頼む事にした。


「じゃぁ、冒険者ギルドまで送って貰えるかな?」

「構いませんが、冒険者ギルドまで何用ですかな?」

「冒険者登録と、あと可能ならば冒険者狩りかな」

「冒険者狩りですか?」

「そっ、何でも私たちは賞金首になっている可能性が高いんだそうだ。 だったら出向いてあげた方が親切ってモノだろう?  それに、どんな風に指名手配されているのか関心があるんだ」

「それは、争いになるのでは?」

「そこは冒険者次第かな。 まぁ来る者は拒まずの精神で」

「大変申し上げにくいのですが、公爵家の家紋入りの馬車ではお送り出来ませんが、宜しいですか?」

「まぁ送ってくれるなら何だって良いよ。 そっちだって早く厄介払やっかいばらいしたいんでしょ?」

「…厄介払いなどは、考えておりません」


 お忍び用の馬車があるって、公爵家ってお金持ちなんだなってバカな事を考えながら二人して乗り込むと、それ専用の御者が場所を発車させた。


 気になったので、御者ぎょしゃを鑑定してみる。


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 名前 : ダント

 種族 : 人族

 性別 : ♂

 レベル: 53

 体力 : 230

 魔力 : 300


 筋力 : 80

 持久力: 190

 賢さ : 43

 器用さ: 95

 素早さ: 55


 攻撃力: 40 + 20

 防御力: 60 + 20


 スキル: 剣技、計算


 取得魔術: 生活魔術


 称号: 『元・傭兵』


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 おおぅ、下手な騎士より強そうだな。 一応帯剣してるし、護衛も兼ねている御者何じゃないかな。 恰好は普通のオッサンだけど。


 そんなこんなで追い出される様に公爵邸を後にした私たちは、貴族街をぬけて一般市民区画に入った。


 貴族街は何だか少しピリピリした空気があったんだけど、こちらは至って普通だ。 王城が襲撃されたことすら知らないのか、ごく普通の生活を送っている印象だった。


 まぁ市民生活に、すぐに影響が出るワケでも無いし、こんなモノなのかも知れないな。


 そして馬車が進んでいくと、途中からは帯剣している人間が増えてきた。 どうやら目的地に近付いてきたのだろう。


「お二方、こちらが冒険者ギルドで御座います」

「あっ、もう着いたの? 降りるぞ、セバス」


 そこはまるで西部劇の酒場みたいな場所だった。 取り敢えず、いつ襲われても良い様に死の大鎌デス・サイズを肩に担いで中に入る。 すると騒がしかった室内が一瞬静かになり、その後すくに喧騒が戻った。


 中には腰の武器に手を回している者も、何人かはいる。 だから、ワザと周囲に聞こえるようにセバスに質問した。


「なぁセバス、本当にこんな雑魚の集会場みたいな場所で、私たちが賞金首扱いされているか?」

「お待ちを、お嬢様! 何をあおっていらっしゃるのですか!」


 周囲が殺気に包まれる。


「おぅおぅ、酒代がやって来るとは、良い度胸「死ね!」うぎゃっ!」


 取り敢えず、抜剣して近寄って来たバカがいたので、死の大鎌デス・サイズで両断した。 勿論、すぐにストレージに仕舞い込む様なマネはせずに、苦しみ藻掻きながら死んでいく様を周囲に見せつける。


 すると、何人かは冷静になったみたいで、腰の剣から手を放して何事も無かったかの様に、酒をの見始めた。


 だが、何人かは血を見て興奮してしまったのか、無謀にも斬り掛かって来た。


「死ねぇぇぇ~っ!」

「お前がな」


 死の大鎌デス・サイズをふるう度に広がる血の海、それが楽しい経験値稼ぎの開始の合図になった。


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