第39話 冒険者編 生活魔術
ユックリと睡眠を取った後に、食堂に向かう。 勿論、朝食を取るためだ。
「
「あいよ!」
セバスがは先に朝食を食べている最中だった。 早起きらしい。
「おはよう、セバス」
「おはよう御座います、お嬢様」
「朝食を取ったらギルドへ向かうぞ」
「依頼を受けるのでしょうか?」
「いや、今日は近場のダンジョンの情報を収集に行こうかと思う」
「それなら、私が存じ上げておりますが?」
「それは私たちでも入れるダンジョンなのか?」
「全ては自己責任の上、誰でも自由に入れますよ」
「王都の近場にダンジョンなどはあるのか?」
「えぇ、初心者向けのダンジョンが1つ」
「初心者向けかぁ。 もう少し難易度が高いダンジョンが良いんだがな」
「それなら、歩いて1週間程の距離に、中級者向けのダンジョンが御座います」
「飛んで行けば、数時間で到着しそうだな。 よし、そこへ向かおう」
「お嬢様、ダンジョンに行くのでしたら、それなりの準備が必要かと存じます」
「買い物に行った後にでも直行しよう。 そのダンジョンは、深さはどの位なんだ?」
「20階層程度だったかと思います」
「ダンジョン内で宿泊する事は可能か?」
「セーフ・スペースが御座います。 そちらならば、寝袋さえあれば就寝は可能かと存じます」
「なら寝袋も買わないといけないな」
そんな会話を続けていると、私の分の朝食が届けられた。 パンとスープ、そしてサラダといった簡単なメニューだ。
「へい、お待ち」
「ありがとう。 いただきます」
朝食を続けながら、ダンジョンに潜るために必要な事などを聞いていく。 すると、生活魔術が必要な事が分かった。
幸い、セバスが生活魔術を習得しているので問題はないのだが。私は習得していないのである。 理由は簡単で、ゲーム内では必要性が無かったためである。
そう、ゲーム内では戦闘などを行っても服が汚れる心配は無かったし、お風呂に入る必要性すら無かったからだ。 しかし、セバスに出来る事で自分が出来ないのは何か悔しい。
「なぁセバス、生活魔術ってどうやって覚えたんだ?」
「結構簡単に習得する事が可能で御座いますよ。 宜しければ、お嬢様には私がお教えしましょうか?」
「くっ、頼む」
「食後にも早速、練習致しましょう」
食事を喉に押し込む様に食べた後で、私の部屋で教わることになった。 嫌なことはサッサと片付けるに限る。
「それではお嬢様、生活魔術についてはどの位の事をご存知ですか?」
「何も知らん」
「では基本から。 生活魔術には『クリーン』、『ウォーター』、『ウォッシュ』、『ドライ』、『ティンダー』が御座います」
「『ウォーター』は水系統魔術、『ティンダー』は火炎系統魔術で何とかなるので不要だ」
「ならば、『クリーン』から始めましょうか」
「そうしてくれ」
生活魔術って日常に、あると便利な魔術を合わせたみたいなモノなんだなと、漠然と思った。
「お嬢様は、魔力操作などは行えるのですよね。 ならば習得は難しくないと思います」
「そうなのか?」
「えぇ、通常は幼い頃に魔力操作を覚えるついでに生活魔術を覚えるモノなのです」
「じゃぁ、生活魔術を使える者は多いのか」
「えぇ、殆どの人間が使えるかと存じます」
「くっ、一般人以下とは…」
「前の世界では、どうなさっていたのですか?」
「風呂に入ったり、洗濯機を使ったりしていたな」
「洗濯機とは何で御座いましょう?」
「衣類などを洗濯する魔道具みたいなモノだ」
「変わった魔道具が存在する世界で御座いますね」
「文明が発達していたんだよ。 それよりサッサと教えてくれ」
「魔力で汚れを洗い流すイメージで御座います」
「ん、それだけ? 呪文とかは?」
「特に御座いませんな」
「なる程、そっち系か」
「そっち系とは?」
「気にするな。 独り言だ」
そう言えば、こっちの世界に来てからお風呂とか入ってなかったもんな。 是非とも『クリーン』位はマスターしたいものだ。
魔力を循環させて、体や髪などから汚れや脂分が流れ落ちる事をイメージする。
「クリーン!」
すると、何だか肌がサッパリとした印象を受ける。 成功なのだろうか?
黒いゴスロリファッションだった事もあって、血の跡はハッキリしないが、次は衣服に付いた、血の汚れなどを魔力で洗い流す事をイメージする。
「クリーン!」
すると、今度は乾燥した血の様なモノがポロポロと砂の様に零れ落ちた。 どうやらそれなりの返り血は浴びていたらしい。
「おおぅ、『クリーン』を『ウォッシュ』の代用に使うのは初めて見ましたぞ」
「えっ? 『クリーン』って衣服の汚れは落とせないの?」
「通常はそうで御座います。 しかも『ウォッシュ』で洗うよりも綺麗になった印象ですな」
「マジか…」
どうやらこの世界の『クリーン』とは別の魔術を作ったぽい。 まぁ良いや。 綺麗になったんだし。
「これなら『ウォッシュ』も『ドライ』も必要無さそうで御座いますな」
「いや、人に出来る事が自分で出来ないのは悔しい」
「そうで御座いますか。 それなら全ての生活魔術を試してみましょうか」
「あぁ、頼む」
そうして、大した時間が掛かる事無く、全ての生活魔術をマスターした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます