第40話 冒険者編 買出し
「ダンジョン攻略に向けて、買出しに行こうと思う」
「承知しました。 ご案内致します」
私たちは『旅人の安らぎ亭』を後にして、買出しに向かう。 今度は2人での買い物だ。
「ダンジョン攻略には何が必要だと思う?」
「そうですねぇ、テントや着替え、後は保存食でしょうか」
「じゃぁまずはテントだな」
「畏まりました。 こちらで御座います」
そう言って、商店街の方へ向かって行く。 相変わらず追跡者の気配があるのだが、今は無視をしている。 と言うのも追跡しているのは宰相の密偵だと分かっているからだ。
こっちはコウモリでその密偵を一晩中見張っていたのだが、一度交代しただけで大した動きを見せていないからでもある。 まぁ襲ってくる事も無いだろうと思っているから好きにさせていると言うのもあるが。
少し
「お嬢様、追跡者がいる様ですが、どう致しますか?」
「襲って来る様なら殺そうかとも考えていたんだけれど、アイツは宰相が差し向けた偵察用の密偵だ」
「そこまでご存知だったのですね。 しかし、宰相様ですか。 私としては
「相変わらず甘いな、お前は。 だがアイツの任務は、討伐軍が到着するまで監視するのが仕事の様だ。 どうせ討伐軍は皆殺しにするのだから、放置しておいても問題ないだろう」
「討伐軍が組織されるのですね。 もしかしてお嬢様は、市街戦を避けるためにダンジョンに
「いや、お前のレベル上げがメインだぞ」
「レベル上げで御座いますか?」
「ヴァンパイアとしての戦い方をキッチリ覚えて貰うぞ」
「畏まりました。 少しでもお嬢様のお役に立てる様に頑張ります」
まぁこんな事を言っているが、実はセバスには戦力としてはあまり期待していないんだよね。 と言うか、相手に手心を加えそうな怖さがある。
そんな性分もダンジョンで矯正出来ればなんて考えているんだけれど、見込みが甘いのだろうか? 宰相には未だに恩義を感じているみたいなんだよね。
「到着致しました。 この店で御座います」
「何の店なの?」
「旅関連の商品を専門に扱っている店で御座います」
「あっ、なる程。 ダンジョンに潜るのにも役立ちそうな店だな」
そう言って2人で店に入る。 店内は思ったよりも広く、数人の客が思い思いの買い物をしている様だ。
その中で、野営専門のコーナーに立ち寄った。 野営用のコンパクトな鍋やフライパンなどもあり、思わず手が伸びてしまった。
「まさか、ダンジョンの中で料理をするおつもりですか? 魔物が寄って参りますぞ」
「いや、お前。 森での事を忘れているだろ?」
「はっ、そう言えば気配遮断を行わなければ魔物は逃げて行くのでしたな」
「ダンジョンの魔物がどう行動するかは分からないが、保存食ばかりでは味気が無いと思ってな」
「そう言えば、保存食も買い込まなくてはなりませんな」
「いや、王宮の食料庫から大量の保存食を応酬したから、売る程にあるんだ」
「ならば、テントなどは含まれていなかったのですか?」
「いや、あるにはあるんだが、大人数用でな。 とてもじゃないケド使えないんだ」
「ならば個人用のテントが必要で御座いますな」
「そゆ事」
まぁ実際使えるのかどうかは知らないが、鍋やフライパンの他にも、小型の
セバスは、1人用のテントを2つに、
「収納スキルがあるから、背嚢は必要ないぞ?」
「いえ、お嬢様と
「それを背負って戦うのか?」
「軍にいた時は、遠征などではそれが普通で御座いました。 勿論、常に背負って戦うワケではありませんが」
「なる程ねぇ。 軍属ならではの考え方か」
「いや、冒険者も同じようなモノで御座います」
「えっ、マジで?」
「はい、収納スキル持ちは少のう御座いますから」
セバスはどうやら、私が本気でブートキャンプをさせると思っている様だ。 いや、間違いじゃ無いんだけどね。 飛べる事すら忘れているのではなかろうか?
まぁ好きにさせるか。 そうして思い思いのモノを手に取っていく。 私は毛布なんかも手に取った。 後は小型のナイフ。
「こんなモノかな?」
「そうで御座いますね。 精算はお任せしても?」
「当然だ。 必要経費として認めるさ」
「じゃぁカウンターへ向かおう」
「はい、お嬢様」
カウンターへ2人で向かい、精算を行った。
「金貨2枚と大銀貨3枚です」
高っ! この世界では工業製品が無いセイか、道具類の値段がやたらと高い。 しかしセバスは何も言わないところを見ると、正規の値段なのだろう。
金貨2枚と大銀貨3枚を支払ってストレージに仕舞い込む。
「私は、替えの下着などを見て回りたいんだが、セバスは何か必要なモノはあるか?」
「そうで御座いますね、調理をするための調味料などを見たく存じます」
「どっちが近い?」
「調味料の方で御座いますね」
「ならソッチを先で」
「畏まりました」
調味料は露天で売っていたのを多めに購入していく。 気にせずストレージに仕舞い込んでいるが、店主に
次は、下着だ。 セバスの分は希望金額を聞いて料金を手渡した。 そして私は、セバスに教えてもらった女性洋服店に向かう。 下着もそちらで扱っているとの事だった。
「すみません。 替えの下着をセットで欲しいんですが」
「いらっしゃいませ。 こちらで御座います」
そう言って下着売り場に案内される。
するとそこには、ドロワーズだったり、カボチャパンツだったり、お世辞にもカワイイ下着などはカケラも存在していなかった。
「あのぉ、これで全部なんですかぁ?」
「はい、中々の
「はぁ…」
カワイイ下着はこの世界では諦めるしか無いらしい。 いや、一層のことオーダーメイドで…。
そんな無謀な野望は、文明レベルの前に無残に敗北した。
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