第21話 異世界転移編 ストレージ

「ストレージ・リスト!」


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 リュミテール国兵士の死体 × 125

  └ リュミテール国兵士の死体

     ├ 衣服

     ├ 所持品

     └ 死体

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 ストレージ・リストの中から1体の死体だけを選択して取り出す。 そして、こちらの様子をうかがっている蜘蛛くもに対して死体を放り投げた。


 蜘蛛の大きさは50センチほどであり、餌としては十分な量だろう。 そう思っていると、木の上からスルスル降りてきて、与えた死体にかぶり付く。


「キュゥ♪ キュゥ♪」


 どうやら喜んでいる様子だ。 蜘蛛も幸せ、私も死体が1つ処分出来て幸せ。 まぁ傍から見れば猟奇的な現場なのかも知れないが、細かい事は良いのだ。


 そんな事はさておいて、人間の死体は取り出したときはまだほんのり温かいのだが、ストレージ内で解体などは行えない様だ。 残念だな。


 魔物の死体の解体なんかもそうだが、解体や血抜きなんて作業は自分で行う必要がありそうだ。


 今度は近くに落ちていた木の葉を拾い、火を付けてストレージに仕舞い込む。


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 木の葉(燃焼中)

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 そしてストレージから出すと、木の葉は同じ位置まで燃えた状態のまま出てきた。


「時間停止と言うよりも、デジタル情報化に近い現象なのだろうか?」


 今度は、ストレージの中にあるコップと水袋を取り出し、コップに水を注ぐ。 そして半分位まで飲み干して、コップをストレージに仕舞い込む。


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 コップ(水入り)

  ├ コップ

  └ 水

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「うーむ、分離できる条件が分からん」


 ストレージから水だけを取り出すと、その場に零れ落ちた。 続いてコップを取り出すと、空だった。


「上下左右の概念まで情報化されてるっぽいな」


 ストレージに入る大きさの上限は分からないが、10メートルはある投石機がそのまま入ったところをみると、ちょっとした建物くらいまでは入りそうだ。


 と言うよりも大きさの上限なんて、その時になってみないと分からないが、巨大なドラゴンとかが入るならちょっと嬉しい。 夢が広がるな。


 さて、最小サイズだが、これは少量の水でも収納できたが、小さな砂の一粒は流石に無理だった。 どうやら目視で簡単に判別できる大きさが関係あるらしい。


 要約するとこうだろう。


 ・サイズは目視が基準となる。

 ・温度などは情報として維持される。

 ・混合物は分離可能っぽいが、化合物は分離が不可能である。

 ・目視で分離できるモノは分割が可能っぽいが、血が滴る肉などは分離できない。


 要するに基本的には認識として分離しているモノは分割が可能だが、一体化しているモノは分割出来ないってとこか。


 そう言えば、小説の種類によっては魔術が収納出来るモノもあったな。


「ファイヤー・ボール! 収納!」


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 火球(燃焼中)

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 うをっ、入った。


「排出! ってアレ? 出てこない?」 


 どゆ事? ストレージの中を覗き込むと、確かにファイヤー・ボールは入っているが、出てこない。


「排出! テイクアウト! アウトプット!」


 出てくる様子は無い。 そう言えば、上下左右もあったんだっけか。


 ファイヤー・ボールを収納した方向とは逆の向きに出口をイメージして…


「排出! やった、出た!」


 ストレージから出たファイヤー・ボールは、そのままの状態で出て行った。 うーむ。 使えん。


 東西南北や上下左右まであるんだから、コップに入った水程度なら問題無いかも知れないが、魔術を収納するのは無しだなと思った。


 もしかして方向情報がこの星の相対位置ならまだしも、緯度や経度で変わる絶対情報だった場合は、悲惨な事故に繋がり兼ねない。


 うん、無しだ無し。 そう考えると、コップに水を入れるのも考え物だな。


 じゃぁ蓋付きの瓶って確かあったよな。


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 ボトル(ワイン10年物)

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 これって、液体だけじゃなくて気体も収納出来るって事だよな。 ワインがミチミチに入っているワケじゃぁないんだし。


 まぁ記憶の片隅にでも仕舞っておくとするかな。


 こうしてストレージの検証は終わりを迎えたのだった。


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