第29話 異世界転移編 キング・ゴブリン

「ダーク・バレット・ガトリング!」

「グガァァァァァァーッ!」


 咆哮ほうこうと共に、私の魔術が無効化される。 流石は魔術耐性があるキング・ゴブリンだけの事はあるな、とその時思った。


 まだアチコチで燃えてはいるが、ちょっとした焼け野原になっていし、どうやら物理で仕留めるのが正解の相手な印象を受ける。


「よし、お前の出番だ死の大鎌デス・サイズよ」


 そう言って、私はストレージから死の大鎌デス・サイズを取り出し、地上へと降りる。 すると、キング・ゴブリンは背中に抱えていたバトル・アックスを引き抜いた。


 キング・ゴブリンのサイズは2メートルを越えているが、手にしたバトル・アックスのサイズもバカでかい。 一体どうやって入手したのか気になる一品だった。


 まぁ良い。 地面に降りた私は、死の大鎌デス・サイズを下段に構えながら猛進して切り上げる。


「死ねっ!」

「グガァッ!」


 私の切り上げをバトル・アックスのパリィで跳ね除ける。 鋼鉄すら切断する死の大鎌デス・サイズは、バトル・アックスごと切り裂く予定だったのが狂わされて、私は一瞬呆けてしまった。


「へっ?」


 その瞬間にバトル・アックスの大上段が迫って来る。


「ガァッ!」

「うをっ! パリィ!」


 私は、大鎌を使ったパリィで、バトル・アックスの攻撃を防いだ。 大きな武器どうしでやる戦い方じゃないよな、とそんな印象を受ける。 材質も妙だが、気になったのでバトル・アックスを鑑定してみた。


『鑑定!』


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 名前 : デス・アックス

 素材 : アダマンタイト

 呪い : 装備者が戦闘を行った場合、必ず何方かが死ぬまで戦闘を終了出来ない。


 ウエポンスキル: 所有者に大斧術のスキルを与え、大斧が自在に扱える様になる。

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 ちょっ、ウエポンスキルに呪い付きの武器なのか? 本当に何処で入手したんだ? しかもアダマンタイト製じゃないか。


 そんな事も合って、一合、二合と打ち合う度に、激しい火花が散った。


 相手の攻撃は、打ち下ろしと、横凪よこなぎのみ。 対応自体は難しくない。 しかし体格差と体重の差によって、マトモに受けてしまえば弾き飛ばされてしまう。


 なので、相手の攻撃を避けて斬り掛かっているのだが、ウエポンスキルの恩恵か、上手くいなされている。


「ちっ、面倒な相手だな」

「グガァァァァァッ!」


 相手も私を面倒と感じているのか、苛立いらだっている印象を受ける。 まぁね、並の冒険者だったら、とっくに死んでいたんだろうし。


 だがな、お前は忘れているぜ。 大鎌ってのは、麦をために開発された農具だったってことだ。


 私は上段に意識が向かう様に攻撃を続けながらその時を待った。 完全に下段の意識が無くなった時に、踏み出していた相手の右足首を刈り取った。


「グガァガァガァガァーッ!」


 余りの痛みか、苦しそうな顔つきで横倒しになった状態で下から私をにらみ上げる。 だが、もう手遅れだ。


「少し楽しかったよ。 だから死ね!」

「グガァッ!」


 そうして、私はキング・ゴブリンの首を刈り取った。


 ≪レベルが一定に達しました。 レベルアップを行います。≫

 ≪レベルアップに伴い、各パラメーターが上昇しました。≫


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 名前 : ルビー・サファイア

 種族 : 初まりの吸血鬼(オリジン・ヴァンパイア)

 性別 : ♀

 レベル: 4

 体力 : 1,001,600

 魔力 : 1,501,000


 筋力 : 1,096 + 666

 持久力: 1,096 + 666

 賢さ : 1,096 + 333

 器用さ: 1,096 + 333

 素早さ: 1,096 + 333


 攻撃力: 1,201,000 + 1,600

 防御力: 1,002,100 + 3,400


 スキル: ストレージ、鑑定、筋力強化、持久力強化、詠唱破棄、魔力操作、魔力循環、魔力纏、魔術威力強化(大)、魔力自動回復(大)、再生(大)、聖魔術無効、日照無効、聖水無効、血流操作、大鎌術


 取得魔術: 火炎系列魔術、爆裂系魔術、雷系魔術、水系魔術、土系魔術、風系魔術、死霊魔術、空間魔術、…etc


 称号: 『デイライト・ウォーカー』、『人に仇なす者』、『無慈悲なる者』、『ゴブリンの天敵』


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 ふぁあぁっ? 『ゴブリンの天敵』? そう言えば、キングなんて付いていたくらいだし、この集落はゴブリンの王国扱いだったのだろうか?


 まぁいいや、キング・ゴブリンとデス・アックスをストレージに仕舞い込み、周囲を確認する。


 うん、自分でやっておいて何だけど、随分と酷い有様だ。 至る所で苦悶に満ちた表情のゴブリンの黒焦げ死体が散乱している。


 でも、ゲームの世界では人間の町なんかを対象にした、同じような地獄を大量生産してきた記憶があるんだよなぁ。 あの時はNPC相手だったけど。


「まぁ、人間の町なんかを襲撃する未来は来ないだろ」


 私は呑気のんきに、そんな事を考えていた。


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