第12話 異世界転移編 公爵邸

「そろそろ撤収てっしゅうして街を見たいんだが、案内してもらえるか?」

「もう宜しいのですか? 探せば売れそうなモノは見つかると思いますが」

「良いんだよ。 もう飽きたし」

「ならば街へと向かいましょう」


 そう言うセバスの後を追って、城門へと向かう。 途中で兵士と遭遇したが、彼らにはストレージへと直行してもらった。 ナムナム。


 そして、城門へと到着すると、門は閉まったままだった。


「なぁ、昼間から城門って閉じているモノなのか?」

「普通は開け放っておりますな。 どうやらこの城から出したくないと考えた貴族でもいたのいでしょう」

「どゆ事?」

「城門の先は貴族街が御座いますから、城の次は貴族の屋敷などと考えたのではないでしょうか」

「ふーん、貴族街ねぇ。 そいつらも今回の召喚に絡んでいると思う?」

「いえ、どうでしょう。 王はかなりの独善的なタイプでしたから、最終的に召喚を決断したのは王だったかと思われます」

「すると、家臣たちが進言して召喚んを行った可能性は?」

「無いとは断言出来ませんが、いたとしても少数でしょう。 私も英雄の召喚が行えるなんてのは初めて知りましたから」

「なら貴族街はスルーで良いや。 絡んで来たら殺す方向で」

「承知致しました」

「んじゃぁ城門をさっさと破壊するとしよう。 ディメンジョン・カッター!」


 閉ざされた城門を細かく切り刻んで門の外に出ると、それを見た住民の一部が、ダッシュで逃げていった。 城門を閉めた心当たりでもあったのだろうか?


 だが、その他の住民は何が起こったのか理解出来なかったらしく、中には馬車を止めて中から降りてコチラに文句を言う奴までいた。


「貴様は何をしたか分かっているのかっ!」

「ウザい」


 死の大鎌デス・サイズで首を撥ねてストレージに直行させると、周囲から悲鳴が上がった。 どうやら貴族は簡単に殺されまいとでも思っていたのか、動揺している様だ。


 しかし、折角止まってくれている馬車があるので、その馬車にセバスと押し入った。


 すると、中には貴婦人らしき人物が青い顔をしているのだが、口を開けば殺されるとでも思っているのか口を固く閉ざしている。


「御者のオッチャン、冒険者ギルドまで直行してね。 でないと、ご婦人まで死ぬ事になるよーっ」


 すると、馬車はそのまま動き出した。 どうやら冒険者ギルドの位置を知っていたらしい。


 だが車内の雰囲気は最悪だったので、サービス精神を出して、会話を盛り上げようとする。


「いやぁ、私を勝手に召喚拉致して下さった国王をぶっ殺そうと思ったらさぁ、何だか近衛騎士団と共にトンズラしちゃったみたいでさぁ。 行き先とか心当たり無い?」

「いえ、私は何も存じません」

「あっ、そうだ。 私は、ルビー・サファイアって言うんだけど、名前を聞いても良いかな?」

「アメリア・フォートランドと申します」

「じゃぁアメリアさん、本当に逃げる先に思い当たりとか無いの?」

「…公都が有力かと存じます」

「で、その公都って何処にあるの?」

「この首都の東に馬車で2週間の距離にあります」

「へぇ、結構距離があるんだ。 ならさ、貴族街に逃げ込んだ可能性は無いのかな? その場合は、貴族街を更地にする必要があるんだけど」

「…いえ、貴族街には基本的に兵を駐屯させる事が許されておりません。 ですので、再起を図るのであれば、公爵家に援軍を要請するかと思います」

「でも、今の国王は近衛騎士団に守られているハズだ。 なら最低限の兵力はあるのだから、どこかの屋敷にかくまわれている可能性はあるんだよね? どこか思い当たる屋敷とか知らないかな?」

「…思い当たる屋敷は存じ上げません」

「ホントにぃ? 嘘がバレるとろくな事が無いよ、アメリア・フォートランド」

「こっ、公爵邸ならあるいは…」


「御者のオッチャン、悪いけど行き先は公爵邸に変更してねーっ!」


 すると馬車が止まり、Uターンを始めた。 どうやら公爵邸は王城の近くにあった様だ。


 ご婦人は、これから公爵邸に迷惑を掛ける事が分かっているのか、苦い顔をしている。 こんな時でも体面を気にするんだなと、不思議に思った。


 暫くすると、馬車が止まる。


「ここが公爵邸?」

「はい、間違い御座いません」

「ふーん、迷惑を掛けたね。 それじゃぁご縁があれば、また宜しく頼むよ」

「いえ…、お気遣い無く」


 馬車から降りると急ぎの用事でも思い出したのか、急発車をして去っていった。 せわしないなぁ。


 しかし、公爵邸は門を固く閉ざしており、門番すらいなかった。 もしも国王が避難しているんだったら、門番がいないのは不自然だよな。 間違ったかな?


 でもここまで来たので、一応、大声で人を呼んでみる。


「公爵邸の管理人さーん、誰でも良いからいませんかぁーっ!」


 すると、不機嫌そうな顔をした執事っぽい奴が屋敷の方からやって来る。


『鑑定!』


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 名前 : ウォルター・グラスフィールド

 種族 : 人族

 性別 : ♂

 レベル: 80

 体力 : 640

 魔力 : 400


 筋力 : 310

 持久力: 290

 賢さ : 420

 器用さ: 440

 素早さ: 330


 攻撃力: 400 + 80

 防御力: 350 + 20


 スキル: 剣技、計算、料理、鑑定


 取得魔術: 火炎魔術、生活魔術


 称号: 『元・傭兵』、『執事』


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 どうやらこの世界に執事は騎士よりも強いらしい。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る