第23話 異世界転移編 セバス
「なぁセバス、お前、気配遮断を覚えてみる気は無いか?」
「気配遮断で御座いますか?」
「ヴァンパイアの基本スキルなんだよ。 そんなに憶えるのは難しく無いと思うぞ」
「本来は、目標とした人間に気配を察知されずに襲うために、習得自体は容易なハズだ」
「承知しました。 で、どの様にすれば良いのでしょうか?」
「人間の感覚で言えば、息を殺す感じかな? 周囲の空間に同調するイメージでも良いかも」
「こう…でしょうか?」
セバスは真剣なのだが、気配は
「なぁ、お前って執事をしていたんだよな。 その時には習わなかったのか?」
「私は歳で剣聖を引退したのですが、その時に
「それで、執事になったんだよな。 でも色々と憶える事はあったんだろ?」
「はい、しかし物覚えが良い方では無かった私は、ミスばかりを繰り替えしていました」
「それでよく執事が務まったよな」
「おいおい慣れていけば良いと言われておりました」
「そっかぁ、執事って気配を消すのが上手いイメージがあったんだけどな」
「お恥ずかしい限りで御座います」
うーん、その宰相もボディーガード位にしか考えていなかったのかも知れないな。
「じゃぁ剣聖をやっていた時はどうだったの? 気配を消す練習なんかはしなかった?」
「はい、
剣聖ってある意味シンボル的な役職だったのかも知れないな。
「じゃぁ自分より強い相手と戦った事は?」
「お嬢様が最初で御座いました」
「負け知らずだったんだ」
「恥ずかしながら、井の中の
セバスって騎士団よりも強かったもんな。 もしかしなくても近衛騎士団よりも強かったんじゃないかな。 まぁ剣での戦いに慣れているなら戦い方まで
でないと、オーク討伐すら出来なさそうだし。 困ったぞ。
「よし、最初はホーン・ラビットの生け捕りに挑戦してもらおう」
「流石にそれは、簡単過ぎるのでは?」
「そう思うか? なら、5匹のホーン・ラビットの生け捕りを命ずる。 終わるまでは、食べる事も寝る事も許さない」
「5匹ですね。 それなら2~3時間もあれば十分でしょう」
「ならこの袋と縄を渡しておく」
そう言って、ストレージから袋と縄を取り出して、セバスに渡した。
「じゃぁ、
「承知しました。 なるべく早く戻って参ります」
そう言ってセバスは森の中に入って行った。 私の魔力感知や気配察知では、ウサギは現在、セバスから全速力で逃走中なんだけどね。
あの様子だと苦労しそうなんだけど、ヴァンパイアの自覚ってまだ得られていないみたいなんだよね。 だって、人間ですら
大体、生け捕りを命じた意味を分かってんのかな? 殺すよりも難しいんだよ。 しかも
でもセバスはどちらかと言えば、実践派だと思える。 実際にウサギを生け捕りにしている最中に気配遮断とか力加減とかを覚えるんじゃないかと、期待しているんだ。
だから頑張れよ、セバス。 って事で私はホーン・ラビットの解体にチャレンジしてみるつもりだ。 目的は勿論、食べるためである。
「ストレージ・リスト」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
・
ホーン・ラビット
・
・
塩(500Kg)
胡椒(1kg)
・
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ホーン・ラビットの死体と、塩と胡椒を少々取り出す。 そして、廃棄物を埋めるための穴を魔術で作り出す。
「ディグ・ビット!」
小さな穴が地面に掘られ、そこへウサギの頭を自慢の爪で切り落とす。 次は流れ出る血も穴の中へと直行、暫く血抜きが終了するまでは足首を持った状態で待った。
「こんなモノかな?」
血が出なくなったので、今度は
そして最後は、爪でウサギの腹を
そこから木の枝なんかを拾ったり、焚き火の囲いに使えそうな石を拾って簡易的な
「テンダー!」
魔術で焚き火を着火して、ウサギが焼き上がるのを待った。 うん、初めてにしては上出来なんじゃなかろうか? 廃棄した穴は、最後に骨も埋めるつもりなのでそのままだ。
暫く待っているとウサギ肉がコンガリ、キツネ色になり始める。 裏返して、反対側にも火を通す。 おおぅ、マジで料理っぽい。
そして待つ事しばし、ウサギ肉は見事な丸焼きになった。 思ったよりも、
さぁお待ちかね、ウサギ肉に実食だ。
その中に少しの甘味と旨味が感じられる。 これは料理次第では化けそうだなと、そう思った。 焼き鳥のタレでもあれば、いくらでも食べられそうだ。
サバイバル料理にヴァンパイアの爪が良い仕事をしたワケだが、野営セットをどこかで入手しておくのも悪くは無い。
こうなると、本とかネットとかの偉大さが良く分かるな。 だって、街で料理本とか入手出来きるとは思えないんだよね。 禁書庫の本って殆どが洋紙皮だったし。
「セバスは遅いなぁ。 やっぱり手間取っているんだろうか?」
待っている間に、ウサギ肉は全て私の腹の中に収まった。
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