第25話 異世界転移編 自覚
「いやぁ、夜の散歩は楽しいですなぁ、お嬢様」
「おかえり、セバス。 どうだった?」
「それが飛んでいる内に気配を消す方法も分かりまして、実に興味深い風景でした」
「そりゃ良かった。 それで、ヴァンパイアになった気分はどうだい?」
「何というか、夜なのに目が
「そりゃぁヴァンパイアは夜行性だからね。 能力値も少しだけど増加しているハズだよ」
「そうだったのですね。 これなら不寝番も苦になりそうもありませんな」
どうやらセバスは、自分が
「で、食事はどうする? もうすぐウサギが焼けそうなんだけれど」
「はい、頂きます」
「ワインもあるけど、飲む?」
「是非に」
ストレージからワインのボトルを出して、セバスに手渡す。 するとセバスは、爪を器用に使ってコルクの栓を抜き放った。 段々、
そして、焼けたウサギを手に取って
「こんな夜も悪くは御座いませんなぁ」
「その代わり、日光には弱くなっているし、
「それは心配ないかと。 流石に日光は困りモノですが、
「やはり問題は、日光か」
「お嬢様は、日光が平気なのですよね。 どの様に克服したのですか?」
「ん? 真祖に進化した時だったかな。 急に平気になった」
「となると、私も進化した方が宜しいので?」
「まぁそうなるね。
「それは、対人間とですか?」
「いや、人間には限定されない。 魔物なんかでも問題ないハズだ」
「夜に狩りを行えば良いのかも知れませんが、夜行性でない魔物もそれなりにいますから、何か効果的な方法でもあれば良いのですが」
「その事なんだけどさ。 一度ダンジョンに行ってみないか?」
「あの
「そっ、ソレ。 ダンジョンの中だと日光も届かないし、獲物の数も多い。 進化には最適だと思うよ」
「しかし、ダンジョンに二人で挑むのは危険では?」
「そこは、ヴァンパイアである事を考慮すれば、問題ないよ。 まだ慣れていないかも知れないけど、コッチは怪我をしても再生できる能力があるからね」
なんて偉そうな事を言っているんだけど、実は私はこの世界での再生は経験した事が無いんだけどね。 それ以前に私の魔力障壁を突破できる敵が、そうそういるとは思わないケド。
「便利で御座いますなぁ、ヴァンパイアとは」
「何なら今夜、確認しておくかい? ウルフとかは夜行性だったハズだろ?」
「確かに自分の体ですから、早めに確認しておくのが良いかも知れませんね」
「それじゃぁ、食べ終わったら、ウルフ狩りにでも出掛けてくれ」
「承知致しました。 必ずやウルフを単独で撃破して見せましょう」
ん? アレっ? ヴァンパイアにとっては、ウルフ系なんて警戒する相手じゃないハズなんだけどな。 場合によっては眷属化させるような相手だし。
「ウルフ系って何か警戒すべきポイントとかあったっけ?」
「お嬢様、ウルフ系は連携が厄介なのですよ」
「あっ、そっちの話か」
「そっちとは?」
「セバス、ヴァンパイアはウルフに噛み付かれたり引っ掻かれたりした程度じゃぁ、死にゃぁしないんだよ。 すぐに治るし」
「それでは、どうすれば宜しいのでしょうか?」
「片っ端から殺していく感じだね。 その内に相手は全滅しているから」
「再生前提の戦い方ですか。 慣れるまでは恐怖心が邪魔しそうですね」
「それは違うぞ、セバス。 元々ヴァンパイアはウルフなんかよりも遥に格上なんだ。 気配を消さなければ、襲ってくる事すら無いよ」
「つまり、弱者のフリをして
「まぁそうなるね。 あっ、でも剣は使っても良いよ。 本来は使うまでも無い相手かも知れないケド、剣の方が爪を使った攻撃よりも得意なんだろ?」
「まぁそうですが…」
「噛み付かれた場合はね、そのまま首を圧し折ってやれば良いんだよ。 ヴァンパイアにはそれ位の
「そればっかりは、慣れないとどうしようも無いかと思います」
「それじゃぁ、最後にアドバイスを一つ。 ヴァンパイアは実は、首をもがれても死なないんだ。 自分で着け直す必要があるけどね」
「まさに化け物ですな」
「お前の事だよ、セバス」
いつまでも昼間にフードを深く被ったままってのは、人里だと生き辛いと思うしね。 私としても、セバスには最低でも太陽を克服してもらいたいんだよ。
だって、コンビニがない世界で生活するなら、日中の買い物とかもしなきゃだからね。 そりゃぁ私が買い物したって良いんだけど、それなら執事を手に入れた理由が半分以上無くなってしまう気がするんだ。
別に真祖になって、ステータスをカンストさせろって言ってるワケじゃないんだ。 超克者か克服者になれば良いんだから、そこまでの時間は必要ないと思っている。
「食べ終わったかい? セバス」
「はい、美味しゅう御座いました」
「気配は消せるんだよね?」
「完璧かどうかは分かりませんが、一応」
「ならお前に命ずる。 一匹でも多くの魔物を狩れ。 勿論、ウルフも含めてだ」
「拝命致しました、お嬢様」
「では行け! 私は手出しはしないつもりだ」
「心得ております。 それでは、失礼致します」
そう言ってセバスは再び空を飛んで、森の上空へと消えて行った。 さて、私はどうしようか? 寝るのも選択肢としてはありだけど、実は私も目が冴えちゃっているんだよね。
そうだ、こっそりとセバスの後を尾行してみようかな。 いまのセバスの状態の把握だって必要だろうし。 よし、そうしよう。
セバスよりもかなり高い高度に移動して、気配察知と魔力探査を最大にして観察する。 うん、獲物を探すのに夢中になっていて、私には気が付いていないみたいだ。
おっ、早速獲物とエンカウントだ。 あれはボアかな? おおぅ、凄い剣技だ。 首を一刀両断。 あっ、獲物は置いて行くんだ。 何だか勿体ないな。
後で、私が回収しておこう。 おっ、次はウサギか? これまた、上空からグサリと一撃。 意外とやるんじゃね?
そんなこんなで、獲物を殺して回っている。 私は気付かれ無い様に獲物を回収。 すると、血の匂いを振りまいているセバスはウルフにエンカウント。
相手が複数だった事もあり、今度は地上で戦うみたいだ。
さぁ見ものだな。 セバスは少し緊張しているみたいだが、まぁガンバレ。 応援しているぞ。
おっとぉ、正面の敵を意識している内に囲まれたぞぉ。 どうなるセバス。 ガンバレ、セバス。 お前の勝利を祈っているぞ。
とまぁ、セバスの緊張感は完全に無視する感じで、私はその戦いを見届ける事にした。
まぁ、普通は余裕で勝てる相手だ。 ストレージの中にポテチやコーラが無い事を残念に思いながら、その戦いを観戦した。
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