第8話 異世界転移編 一般兵

「うーむ、迷った」


 調子に乗って一人で来たものの、迷った。 これでもかっって位に迷ってしまった。


「セバスに案内させれば良かったな…」


 後悔先に立たず、実に名言である。 例えば後先考えずに恰好を付けて、一人で何でも出来るなんて考える奴が陥りやすいバカに対する言葉でもある。 てか、そのバカは私だった。


 でも仕方がないじゃん。 経験値を独り占めしたかったんだもの。


 とは言え迷った以上、帰り道すら分からないのだ。 完全に詰みである。


 こうなったら吸血鬼の嗅覚に従って、取り敢えず人間だけでも先に探した方が良さそうだ、などど考えていると向こうから完全武装した兵士がやって来た。 ラッキー!


「なぁ、王の執務室って何処にあるのか教えてくれねぇ?」

「てっ、敵襲ぅぅぅーっ!!」


 いや、まぁ良いんだけどね。 経験値的には美味しくなさそうな雑兵だけども、チリも積もれば何とやらって言うし。


「だからさぁ、人が頼んで聞いているんだからさぁ、無視するなんてひどくね?」

「誰が貴様なんぞに教えてたまるかっ!」

「あっ、そ。 じゃ死ねや」

「うぎゃぁぁぁ~っ!」


 困った時には死の大鎌デス・サイズ、どんな問題もスパッと解決! ってまぁ、相手が両断されただけなんだけど、お代わりが次から次へとやって来る。 当然、切った相手はストレージへ直行だ。


「ひっ、ひるむなっ! 王城で好き勝手させてしまっては我らの恥だぞ!」

「おっ、おぉーっ!」


 何だろ、勇ましい奴が一人いるけど、他の連中は逃げ腰だ。 ワザと逃したら、王のいる場所まで案内してくれないかな?


「てぃ!」

「ぐぎゃっ!」


 死の大鎌デス・サイズを剣で防ごうとした奴を、縦に両断する。 すると、勇ましかった奴以外は全員逃げた。


「まっ、待てっ! お前たち、逃げるなっ!」

「薄情なお仲間たちだな。 てい!」

「うぎゃっ!」


 必死に逃げようとする一人をロックオン、するとそいつは見窄みすぼらしい扉の部屋に閉じもった。


 うーん、王の執務室にしては扉が貧相に見えるが、一応確認も兼ねて扉を死の大鎌デス・サイズで切り裂いてみた。 するとゲームの時とは違って、切断面は出来るけど扉ごと吹き飛ぶ様な事にはならなかった。


 扉を蹴破って室内へとダイブイン、すると貧相なベッドの傍で震えている兵士と目が合った。


「嫌だぁぁぁ~っ! 死にたくない!」

「残念、経験値になってもらうぞ。 てぃ!」

「ぎゃばっ!」


 どうやらココは、コイツの宿泊場所だったらしい。 ヒキニートじゃあるまいし、自分の部屋に閉じ籠もるって何だよ。


 すると背後から襲いかかって来る気配が…。


「死ねっ!」 コンっ!


 折角の大上段だったのだが、私の防御力の前では爪楊枝よりも貧弱な攻撃だったらしく、虚しい音を立てて攻撃は終了。 鬱陶うっとうしいので、そいつもその場で死の大鎌デス・サイズで両断しておいた。


 何だろう、コレ。 剣を振り下ろされても、危機感すら感じない。 あっ、そう言えば自動で防御障壁を展開しているんだった。


 私が部屋から出ようとすると、蜘蛛の子を散らすように逃げ出す兵士達。 その中の一人を鑑定してみた。


「うーむ、鑑定!」


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 名前 : アルファイド

 種族 : 人間

 性別 : ♂

 レベル: 31

 体力 : 240

 魔力 : 15


 筋力 : 30

 持久力: 80

 賢さ : 50

 器用さ: 20

 素早さ: 31


 攻撃力: 15 + 20

 防御力: 20 + 30


 スキル: 剣技


 取得魔術: 生活魔術


 称号: 『リュミテール兵』


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「弱っ!」


 どうやら、一般的な兵士はこんなにも弱いらしい。 追加で後数人確認してみたが、どれも似たり寄ったりだった。


 吸血鬼化する前のセバスだって、攻撃力は500近くはあったハズだ。 元は付いていたけど、剣聖ってのが強いんだか、一般兵が弱いんだか。


「これじゃぁ、経験値なんて期待するだけ無駄むだかも知れないな」


 こんな事なら、セバスに露払つゆはらいでもさせるべきだったのかも知れないな。


「おーい、何処にいるんだよ近衛騎士団さーん! オラに経験値を分けてくれぇぇぇ~っ!」


 私の叫びは、兵士達が逃げ去った廊下に、むなしく響くだけだった。


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