第37話 SSランク

□学院ダンジョン5層ボス部屋(夢乃間燈真)


ようやくここまで来た。というかあっさり来てしまった。

途中で強力なモンスターと出会うことはなく、そして先行した矢吹さんたちと出会うこともなく……。


そこで見たのは凄まじい魔力を放つ強力なドラゴン……そして周囲で倒れている矢吹さんたちだった。


「矢吹くん!」

「これは……酷い……」

「水無月校長、白石生徒会長、あれを」

「なっ……」


僕は鑑定を行う。



***Monster Date***

名前:メギドフレアドラゴン

種族:ドラゴン

強さ:不明(SSランク相当)

特徴:生態不明。一説には無機質な箱型の卵から生まれるとされる。誰が産み落としているのかは不明。孵化するといきなり成体となって襲い掛かってくるという話があるが真偽は不明。

********************


「メギドフレアドラゴン?」

【マジか……】

【箱型の卵……それだ。矢吹って人がそれに魔力を投入したらあいつが出現したから……】

【なんでそんなことをしたんだろう。なにかと勘違いしたのか?】


経緯はよくわからないけど、間違いないらしい。


あのクラスになると転移での移動でも厳しいかもしれないが、やるしかない。

周りには蹴散らされた矢吹さんとパーティーメンバーたちがいる。


「燈真くん、行くわ!みんなをお願い」

「了解」

「ここは悪いが私が指揮をとるぞ。白石は防御空間を作ること。鞘村は回復役だ。天城は牽制を頼む。夢乃間は怪我人の回収を頼む。それが終わったら君も牽制を。5分……いや、3分もたせてくれ!」

「「「「はい」」」」

「私が止めを刺す。だから天城と夢乃間には負担をかけるが」

「了解です。では行きます」

僕らは行動を開始する。


メギドフレアドラゴンの魔力のせいかピリピリするけど、そんなものはもう慣れてる。

"ド根性"のおかげでそもそも恐怖心はないしね。


先頭に立つのは咲良さんだ。

それなのに怖がったり日和ったりしてる余裕なんかない。

僕は天使に続くだけだ。支援魔法は当然全開で全員にかける。



【いや、戦うつもりなのマジで!????】

【さっきのロックドラゴンのレベルじゃないぜ!?】

【校長、止めようよ!まずいって!!】

【でも水無月校長って確かSランカーだよな?普段活動してないけど】

【全力の魔法なら行けるのか?でも……】

【そもそも怪我して倒れてる学生を救うためには応戦するしかないんだ。覚悟も決めてんだろ。俺たちは見守るだけだ】

【いや、応援ならできるわ!頑張って!!】

【そうだ。頑張れ!】



僕は咲良さんが殴り込んだのに合わせて複数の魔法を投げつける。あのドラゴンの注意を逸らしたい。


そして、ドラゴンの注意が魔法に行った隙に転移で矢吹さんたちを1人ずつ白石さんの構築した防御空間の中に連れて行く。

1人、2人、3人……。よしあと1人。


僕は水系の魔法を浮かべてドラゴンに飛ばす。

気にしろ!攻撃力はないけど、質量だけはあるからさ!


するとドラゴンが火球を生み出し、僕が作った水球に向かって放った。

今だ!


転移でドラゴンの近くに転がっている矢吹さんの横に移動し、抱え上げる。あとは戻るだけ……


「夢乃間くん!避けて!!!」

「えっ?」

咲良さんの声に慌てて顔を上げると火球が飛んできていた。しまった、連発か?

頭の中で計算するが間に合わない……


くそっ……。


僕は抱え上げた矢吹さんに浮遊魔法をかけて白石さんの方へ飛ばす。

自分には魔法障壁を重ね掛けした。

耐えるしかない。


転移した後は多少待たないと次の転移が使えない。

今まではその間に簡単な回復魔法をかけたりしていたが、今回は間に合わなかった。


凄まじい炎が飛んで来る。頼むぜ"ド根性"。


「燈真くん!」

「夢乃間くん!」

スローモーションになる世界の中で絵里奈さんと白石会長の声も聞こえる。


そう言えばさっき咲良さんは名字で僕を呼んだから減点だよね?

そんなアホなことを考えながら火球を喰らった。


瞬時に視界の中の全てが燃え上がる。

いや、炎が僕を包んだんだな。


熱い……。


魔法障壁にぶつかっているし、後から水系の魔法も展開したけど相殺しきれない。

これは闇属性も混ざってるな……。


一応耐えれるが威力を消しきれていない。



そのまま炎を受けて僕は吹っ飛ばされた……。





「シャイニングバースト!」

僕に向けて炎を放ったことで隙だらけになったドラゴンに対して咲良さんが強力な魔法を放つ。


そのおかげで僕の方には追撃は来なかった。

さすがだ咲良さん。助かった。


なんとか全身やけど程度でとどまった僕は立ち上がれはしないが回復に努める。

言われた時間は稼いだよね?


たぶん水無月先生は魔法攻撃をするんだろう。避けられたりでもしたら悲しいし、攻撃を食らったところなら当たるかもしれない……。僕は一旦回復をやめる。


くっ……無理に動こうとするとまだ回復できてなかったところが痛い。骨も折れてそうだな……。

でも好都合だ。


咲良さんの攻撃から立ち直る前に当てる……。このままだと"魔力放出"に負けて気を失いそうだけど、その前に……魔力放出のダメージも乗っけてやる!行くぜ!


「破滅の共振(ドゥームシンパシー)」 

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