第26話 またまた事件発生

週が明けると平穏な日常が待っていた。

授業を受け、実習をこなす。


鞘村さんはやっぱり優秀で、僕らの探索はさらに安定した。

というか、やることがなくなった。

学院ダンジョンはそもそもDランクダンジョンだ。イレギュラーのせいでアークデーモン、バロール、悪夢の王と続けてとんでもないモンスターが出たが、普通はそんなことは起きない。

あれ以降出てくるのはランク相応のモンスターになった。


気になるのは設置したはずのダンジョンコントローラーが見当たらないことだが、それについては不明とのことだった。ダンジョンが落ち着いているなら効果を発揮しているのだろう、とかいう適当な報告書が研究機関から帰って来ただけだったので、生徒会長が憤慨していたが……。



それからクラスメイト達は天城さんに謝ってくれた。

自分たちが未熟なせいで申し訳なかったって。先頭に立っていたのは委員長だけど、それ以外にも各チームのリーダーを務めている人たちがみんなで。

唯一、あの木瀬のところだけはいなかったけど、これで僕らの状況はかなり改善した。


まぁ、もし僕だったらちょっとくらい嫌味を言ってしまいそうだし、なんなら謝られている天城さんの隣で余計なことを言いそうになったけど抑えた。

なにせ天城さんが気にしてなかったから。


ウォオォォ~~~~ン……ウォオォォ~~~~ン……ウォオォォ~~~~ン……



なんだ!?


「緊急警報だな。授業は中止だ。みんなこの後の放送に注意するように」

教鞭をとっていた先生が生徒たちに指示する。


どういうことだ?何か起きたのかな?



『ただいま緊急警報が発令されました。学院ダンジョンで異変あり。至急、先生方と生徒会役員はダンジョン入り口前に集まってください。繰り返します……』


ダンジョンで異変?

正直、また?って感じだ。

今度は何が起きたんだろうか。


僕らは教室待機になるようだ……


『生徒会長の白石です。生徒会役員および関係者も招集します。三崎副会長、森戸役員、黒永役員、それから会長権限で矢吹慶一郎くん、溝口蔵人くん、夢乃間燈真くんと、それぞれのパーティーメンバーも招集に応じてください。招集先は先ほどの放送の通り、ダンジョン入り口前です』


えっ?僕たちも?

と思ったが、まぁ仕方ない。悪夢の王を倒すなんて活躍を見せてしまったんだから。


僕が立ち上がると、天城さんと鞘村さんも頷き、ついて来てくれる。




□ダンジョン入り口前


 

ダンジョン入り口前に行くと、そこには先生や生徒達。ざっと20人くらいだ。


「集まってくれてありがとう」

声をあげるのは白石生徒会長だ。


「今ここには6つのパーティーに来てもらっている。私、矢吹くん、溝口くん、夢乃間くん、それから時田先生と七咲先生のパーティーだ」

ほとんど知らない人たちだけど、呼ばれてるってことは一定以上のレベルの探索者たちなんだろう。


ざっと周囲を見渡すと、ほとんどが気合の入った表情をしている。


「他はわかるけど、そいつらは?一年だろ?」

そんな中で、僕らに対する疑問を持っている生徒がいるようだ。まぁ、仕方ない。1年生だし、僕なんか転入したてだ。僕自身も理解していない。


「夢乃間燈真くんは既にBランク探索者だし、メンバーの天城咲良さんと組んで先週、悪夢の王を倒したチームだ。異論があるかな?」

「ほう……」

その言葉を聞いて納得してくれる人もいるようだ。


だが……


「天城咲良って"魔力放出"持ちの女だろ?そんなのと一緒に行くのか?」

こいつもかよ。天城さんって有名なんだな……。それにもし動けないとかだったらそれはそっちの理由だろ?僕たちが参加しない理由にはならない。


「待て、溝口。まずは何があったのか聞かないと考えれない」

「あぁ?」

「そうだな。まずは説明をさせてもらおう。質問は後だ」

納得してくれた人が抑え込んでくれた。そして生徒会長が淡々と話した内容はこうだ。


まず、ダンジョンからモンスターが出てきて暴れたこと。これが警報が鳴った理由で、それに関しては既に先生方が対処して完了している。


次に、ダンジョン内の異変が原因の可能性があるということで一度ダンジョンの中に入ったが、明らかに魔力量が増大していたこと。白石生徒会長も入ったらしいが、視界がぼやけるくらいの魔力量だったらしい。


彰かな異変だが、国は学院で対処しろの一点張りらしい。校長が連絡したら、Dランクダンジョンの異変程度に対応できないなら学院なんて必要ないとか言われたらしい。さすがに酷くないか?しかも時期的にちょうどいいから学院選抜試験の対象にするようにとか言い出して勝手に決定してしまったらしい。


先生たちのパーティーが2つ来ているのは監視として許されるのが2つだけだからだそうだ。



その結果、ここにいる4つのチームが自動的に学院選抜試験のエントリー資格を保有しているということになった。


エントリーもしてないし、そもそも学院選抜試験って何?って感じなんだけども……。


まぁ、あとで鞘村さんたちに聞こう。


ここでエントリーしないなんてことはあり得ないから、当然申し込んだよ?

天城さんと鞘村さんも当然って感じで頷いてくれたし。


ちなみに、一応他にも行かないか確認したが参加者はいなかったらしい。



「学院選抜なら他の参加者に文句を言うわけにはいかないのはわかるだろ?」

生徒会長がかなり挑発的な笑みを浮かべながらさっき文句を言っていた生徒に聞いた。

まぁ、そりゃそうだよね。


木瀬と同じように『怖いよママ』って言ってるのと同じになってしまうからね。


こうして急遽だけど明日の朝からダンジョンに挑むことが決まった。



僕は一応嫌な視線を向けてくる生徒達から庇う位置に立っていたんだよね。

天使の笑顔を守るためには当然の仕事だから。



そしたら後ろから僕の手を握ってくれる天城さんが可愛すぎて、正直周りの生徒なんて気にかけてる余裕はなかったことだけ、今ここで話しておくよ。

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