第40話 想い
□寮(天城咲良)
あまりのショックにふらつく燈真くんをなんとか自室に帰した。
その後、一緒にいようと思ったけど、1人にして欲しいと言われて帰ってきてしまった。
寂しそうな顔だった……。
うーん。まさかこんなことになるなんて思わなかった。
ちょっと酷い。
あまりに状況が悪い。
私が燈真くんをパーティーに誘ったからかな?
部屋に戻るとえりりんが待ってくれていた。
「私がパーティーに誘ったせいでこうなったとか思ってないでしょうね?」
「えっと……」
全部見透かされてた。さすが親友……。
「燈真くん、どんなだった?」
「なんか頭の中がぐちゃぐちゃな感じ?びっくりしたってところが強い気はするけど」
「なるほどね」
「あの後、校長がいろいろ勘違いしてしまっているのを白石さんが指摘してわからせてたわ。白石さんは正確に理解していて、東都テレビのアナウンサーも顔見知りだったらしく、丁重にお帰り頂いたみたい」
「なるほど。でも、バレるよね」
「もうバレてるかもね……」
「燈真くんどうするかな?」
「どうって……まさかどこかに転校していくとかはないと思うけど……」
「嫌っ……」
「うん……」
泣きそうだよ。
せっかく仲良くなったし、もっと一緒に戦いたい。
これまで生きてきて燈真くんほど信頼できる人には会ったことがない。
いつも冷静で、陰キャとか言いながら優しくて面白くて、そして強い人。
燈真くんは私のこと強いって言ってくれるけど、それは燈真くんがいるから。
軽々といろんな支援や回復をくれる燈真くんがいるから、私は後先考えずに戦えるんだよ。
オールインワンとか聞いたこともないよ?
魔力譲渡もできるから困ったら使うからね、なんて言ってたけど、そんな魔法、日本で使える人がいるんだろうか?
浮遊も転移もそんなぽんぽん使える人なんていないんだよ?
だから戦えたの。
やだよ……離れたくないよ……。
「絶対離れたくないよね……」
「うん……」
その言葉にハッと顔を上げた。目に映るのは切なそうな表情の親友。
「もう好きになっちゃったもんね……」
「うん……」
えりりんも同じ気持ちなんだね。
わかってたよ。
私は燈真くんのことが好きだし、えりりんも燈真くんのことが好き。
もやもやするし、燈真くんがえりりんと仲良くしてるところを見るとちょっと嫉妬してしまうんだけど、でも親友だ。
「気持ちを伝えてみるのはどう?」
「優しいから残ってくれるかも……ずるいかな?」
「ずるくないと思う。言わない方が後悔しそう」
一緒に幸せになれるなら、それは嬉しい。
10年前から日本では一夫多妻OKだし、あとは燈真くんが受け入れてくれるだけ。
キスもしてくれるし、デートもしたし、何でも話せるし。
自然と仲良くなっていって、いつかは……そう思ってた。
でも待っていられない。取られたくないし、いなくなって欲しくない。
「でも、私はどうだろう……」
「えっ?」
私の言葉にえりりんが驚く。
「何かあったの?送って行ったときに何か言われたとか?」
「ううん」
「じゃあどうして?」
「だって……燈真くんにいっつも辛い思いをさせて来たから」
「えっ?」
「えりりんも気付いてたでしょ?燈真くん、"魔力放出"に耐えれてないよね?いや、耐えてはいるのか。でもダメージは受け続けてるよね?」
「……咲良」
「あの燈真くんの魔法。たぶん自分が受けたダメージを相手に負わせる魔法だった。あの時燈真くんは全身火傷だらけだったし、打撲もあった。もしかしたら骨折も。でも、その魔法を受けたドラゴンは頭が働いていないみたいだった。完全に高密度の魔力を浴びた人と同じ反応だった……」
びっくりした。
ずっと何の問題もないんだと思ってた。
えりりんが取った"魔力耐性"と同じで、影響を無効化できるんだと思ってた。
でも、違った。
彼は……燈真くんは文字通り耐えてただけだったんだ。
本当はきついのに。
それを知ってしまえば、不思議だった彼の行動が理解できる。
アークデーモンの自爆攻撃を受け止めた時。
彼は明らかにふらついて倒れかかって来た。
てっきり焦って自爆攻撃を止めようとしているのかなと思ってたけど、それは私がそう思いたかっただけ。
思い返せば、彼はアークデーモンの攻撃に気付く前に倒れかけていた。
なぜ?
そんなの私の"魔力放出"で影響を受けていたからとしか考えられない。
夜、急に返信がなくなるときがあった。それはいつも探索実習がある日だった。
きっとなんとか耐えた後、倒れるように寝ていたんだ。
全く気付いていなかった。
昨日は早く寝たの?なんて探るようなことを言ってしまっていた。
最悪だ。
私はダメージを与えるだけじゃなく、彼を追い込んでいたかもしれない。
それなのに好きでしたなんて言ったら……?
「考えすぎ。ダメだよ、咲良」
「でも……」
「でもじゃない。燈真くんが"魔力放出"の影響を受けていたとして、じゃあなぜ黙って耐えてたのか考えればわかるでしょ?」
「えっ?」
「……わからない?あなたたち、本当に自己評価が低いのね……。一緒にいたいからに決まってるじゃん。一番最初は戸惑ってたのかもしれないけど、組んだ後は彼、楽しそうだったわよ?」
「……本当に?」
「そんなの、咲良もわかってるでしょ?」
「……」
「ちゃんと話をしよ?このまま終わりになんてさせないんだから」
「うん」
やっぱり、持つべきものは親友だ。本当にありがたいし、本当に優しい。私にはもったいないくらい。
私たちは夜中までおしゃべりして、そのまま一緒に寝てしまった。
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