第5話 勧誘への戸惑い

「夢乃間燈真くん。どうか私とチームを組んでください!」


こうして、このお誘いにつながるというわけだ。

ご理解いただけただろうか?


整理すると、天城さんはめっちゃ強いけど周囲にも魔力をまき散らすから味方もダメージを受ける、というデメリットがある。

それでクラスメイトから避けられている。もしかして誰かをやっちゃったのかもしれない。

そういえば教室に空席が1個あるな……。


一方で僕はのんびり適度にこっそりやっていきたい。

さらに彼女のまき散らす魔力に耐えられるかと言うと、怪しい。

カッコ悪いから『昨日実は限界でした』とか言えないし……というか言えなかった。


今日の1時間目は昨日の振り返りだった。

映像はないみたいで、主に天城さんの解説で、僕はそれを補足させられたんだけど、正直役に立ってないだけで恥ずかしさでいっぱいだった。


最後に『アークデーモンを倒しきっていないのに油断した自分のミスです。夢乃間くんが自爆攻撃から守ってくれたんです』ってめっちゃ嬉しそうに言われてしまった。

あまりの可愛さに目だけじゃなく、心まで持っていかれた。

その間に解説の時間は終了していたよ。


質問は主に『お前、あの状態の天城さんにくっついてて魔法行使できるとか凄くね?』みたいなのばっかりだったから、なおさらだ。

天使からの熱い視線、クラスメイトからの驚愕の視線のなかで『気を失う寸前でした……むしろ失いかけたことで偶然に自爆攻撃から庇えました』とか言えるわけがないだろ?


その僕の弱さの結果がこれだ。


どう考えても天城さんは僕が一緒に戦って大丈夫な人だと思っているだろう。

ド根性のレベルが早く限界突破しないかな?

あと、なぜか解読不能な3つ目の固有スキルが隠遁系だったら、"のんびり適度に"は無理でもこっそりやれるかもしれない。


「それはちょっと……」

そんなこんなで、僕はなんとか勇気を振り絞って断りの言葉を発しようとする。


「えっ……そっか。ごめん、そうだよね……」

途端に泣きそうな表情になる天城さんの様子に、心臓が飛び出そうになると言うか、自己嫌悪モードに突入しそうになる。

天城さんがそのまま走って行ってしまう姿すら眺める勇気がなかった。





「おっ。夢乃間君だ」

「天城さんに誘われたんだよね?」

「えっ、まじで?まさか組むのか?」


教室に帰るとそこに天使はいなくて……興味津々のクラスメートに囲まれてしまった。

なにこれ気まずい助けてぼっちはちゃんと一人にしてあげて。


「あっ、いや……」

「だよなぁ。あんな暴力的な女やめとけと思ってたから断ってくれてよかったぜ」

「えっ?」

よってきた中で一番態度がでかいがたいの良い男の子が言い放った言葉に絶句してしまった。


「そうそう。知らずに組んで潰された海人はいまだに復帰できてないんだよ?」

「……」

そうなんだね。やっぱりそういうことか。


「まじで一緒に戦うだけでボロボロにされるとか、モンスターって感じ~」

「……」

「ほんとだよな。何のためにここにいるんだろ?ソロで強いんだから、ソロで探索してればいいのにな」

「……」

口々に文句を言っている。

昨日天城さんに助けられた人までもだ。

流石にこれは……。


 

「カッコわる……」

「えっ?」

不意に鋭い声が聞こえた方を見ると、昨日はいなかった女の子だ。

柔らかい栗色のストレートヘアに、整ったスタイルの美人さんだったが、その指で苛立たしげに首元のチョーカーを弄りながら怒りの表情を浮かべている。


その女の子はそのまま教室を出て行ってしまった。

力いっぱい叩きつけるように扉を閉めて出て行ってしまった。



「なんだよ鞘村のやつ。感じ悪りぃな~」

「あの子は天城さんと仲いいからね」

「ちょっと美人だからってねぇ~」

「そんなに怒るなら自分で組んであげればいいのにね。できないからって夢乃間君に当たらなくてもいいのに」

えっ?あの言葉、僕に向けたものなの?

てっきり天城さんがいないところで悪口を言っている君たちに怒ったのかと思ってた……。


しかし苛々するのは僕も同じだ。

確かに魔力をまき散らしてしまうのは実害がある。

でもきっとそれはあの強さを得るためなんじゃないだろうか?

固有スキルで凄いものを得ると、対価だと言わんばかりに酷いものがくっついてることはある。


僕なんか、"ド根性"は耐性アップとか痛覚遮断とかだから使えるけど、2つ目は使い勝手が悪いし、3つ目なんか読めもしないし効果を発揮してない。

"ド根性"を1万時間使ったら開放されるとか、どんなものが出るんだろうか?


ちなみに固有スキルは最大3つだ。

しかも多くの人は全くもっていないか、1個だけか。

だから3つもある僕はその時点で恵まれているとは言える。


きっと天城さんも持っている。恐らく2つか3つ。

あの凄まじい戦闘力で、魔法も格闘も凄かった。だから魔法系と格闘系と、あとは"魔力放出"があるんだろうな。

完全にソロ専用の固有スキル構成だ。


普通こんな構成だったら学院に来ようとはしないと思うんだけど、何か理由があるんだろうか?

悩ましいな。

チームを組んで学院のダンジョンを探索して行けば、3つ目解放のための条件が自動で満たされる可能性がある。

転入してくるまでにも酷い扱いを受けたせいで結構使用時間はあったし……。



「まぁ、君は天城さんに近付かない方がいいよ」

「優秀な探索者がデメリット抱えてるやつと組むメリットがねぇよな~」

「だよねぇ。私たちのところに入らない?」

「あっ、ずりぃよ」

「1学期の成績で選抜戦の参加資格を持ってるところが優先じゃね?そうしないと……」

なんか彼らの話を聞く気にならなくなってきたな。

 

本来は一刻も早くダンジョン探索を進めて行かないとまずいのに。

だから各国がやっきになって探索者を育成してダンジョン探索を進めてるのに。


君たちも知っているだろ?

それなのに戦力になるはずの女の子を弾くのか?

陰湿ないじめみたいな形で……。


「夢乃間君もそう思うだろ?なぁ」

「昨日組んでもらったけど僕らのところならバランスもいいしさ」

「あぁ、ずりー」

「うるさい……」

「えっ?」

あっ、思わず本音が……。




***あとがき***

お読みいただきありがとうございます!

クラスメイトに苛立ちを覚えた燈真はどうするのか???

どうぞ次話にご期待ください!


そして、より多くの方に読んでいただくため、フォローや☆評価(☆☆☆→★★★)を頂けると嬉しいです。作者も舞い上がります。

応援(♡)やコメントもお待ちしております。

どうかよろしくお願いいたします!

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