第4話 事件の後

ふと気付くと、視界に写るのは知らない天井だ……。


「ここは……?」

「目が覚めたようだな。良かった。安心した」

「後藤先生?」

僕はベッドに寝かせられていて、その様子を後藤先生が見てくれていたようだ。


「意識もしっかりしてるな」

「はい。それでここは?」

「そうだったな。ここは学院の医務室だ。天城が慌てて傷だらけになってるお前を抱えて戻ってきたんだ。驚いたぞ」

なるほど。

抱えて走れるってことは天城さんは無事だったんだな。良かった。


まぁ、あの強さからすればアークデーモンの攻撃なんか軽く防いでいたかもしれないから、僕が余計なことをしたという可能性もあるんだけどね。


「まさかいくらボスが可変式の特殊なダンジョンだからといっても、Dランクダンジョンでアークデーモンが出たってことも驚きだし、ボス部屋から出てきたのも大事件だ。さらに自爆攻撃とか……災難だったな」

「天城さんは?」

「あいつは無事だ。混乱してて要領を得なかったけど、お前が身を挺して守ってくれたから無傷だと言っていたから今日は寮に帰してる」

「よかった……」

無駄じゃなかったっぽい。


「悪いが生徒達も全員帰した。今は生徒会や教師陣で調査しているけど、もう何もないだろう。感謝する」

「僕は特に何もしてないです。最後の最後にマジックシールド貼ったくらいで」

「君は取り残されていた2人を救出してくれただろ?彼らが残っていたら天城は本気を出せていない。さらに天城のことも守った。そして君自身もこうして生きてくれている。だから感謝だ」

「はい……」

なるほど。

僕が行ったときに周囲のレッサーデーモンを倒すのにとどまっていた理由はあの2人が倒れていたからだったのか。


なら、行ったのも無駄じゃないな。

それにこの程度の活躍なら、たいして注目もされないはずだ。


最後に天城さんに向かって倒れ込んだのはヤバかったけど、守れたなら結果オーライにしてくれるかな?

明日、『このセクハラ野郎!』とか言われたら泣いちゃいそうだけど、天使さんだし大丈夫だよね?


僕は起き上がり、後藤先生に挨拶をしてから寮に戻った。

食事を採る気力はなかったので、事情を知っているのか心配してくれた職員さんにもお礼を言い、食事を断り、そのままシャワーだけ浴びて眠りについた。






一方、学院内掲示板では……。


□1年A組掲示板(鞘村絵里奈)


【イインチョ:後藤先生から『夢乃間君が無事に目を覚ませて寮に戻ったから安心しろ』っていう連絡を貰ったわ】

【マユ:良かった~。みんな無事だったね。】

【イインチョ:アークデーモンに吹っ飛ばされたアツシも無事だし、取り残されちゃったリュウタとサトシも無事だったしね】

【マユ:なんか学院内でニュースになってるみたいで、部活の先輩から大丈夫だったって心配されたよ~】

【イインチョ:あのあと生徒会の人とか先生たちで調査に入ってたみたいだしね】

【ケンゴ:いくらボスが可変式と言ってもDランクダンジョンなのにアークデーモンとかやばいよな……】

【絵里奈:ほんとにみんな無事で良かったわ。】

【ショウ:で、夢乃間君はなんでやられてたの?】

【イインチョ:アークデーモンの攻撃を食らったらしいのよ】

【ユウシン:どうせあいつだろ?】

【ゆっきーな:血相変えて抱えて夢乃間君を連れて帰って来たけど、気付かずに戦って海人みたいにボロボロにしちゃったんだよ】

【イインチョ:いや、それは……】

【サトシ:俺たちは夢乃間君に助けてもらったんだ。でも、戻るって言うから止めたんだけどな……】

【リュウタ:彼は知らないもんな。明日もう一回謝っておこう

【ユウシン:あの女、顔だけはいいからな。隣の席になって、あの転入生ちょっと嬉しそうな顔してたからなぁ……】

【ゆっきーな:それまじ?それで支援に行ってボロボロにされるって可哀そう】

【耕平:でもさすがBランクだよな。その程度で済んだってことだろ?もう寮に帰ったってことは】

【マユ:耐性とかも高いのかな???】

【イインチョ:そろそろ消灯だよ!】

【マユ:やばっ。おやすみ!】


私はイラつきつつ、『おやすみ~』と書いて学院の掲示板を閉じる。


まったく……。

咲良はわざと周りを攻撃してるんじゃないのよ。


しかもアークデーモンとの戦いの様子は公開もされてないのに、自分勝手な予想をさもそれしかないだろう、みたいに書いてきた遊心や優樹菜の顔を頭の中でボコボコにしてやった。



また、通知……。

一瞬うんざりしかけたけど、それは咲良からのメッセージが届いたことを知らせる通知だった。


学院掲示板を開く前に、実習での事件のニュースを聞いて大丈夫だったかと送っていたのを思い出して、チャットを開く。

 

【咲良 :私は大丈夫。えりりんの方こそ大丈夫?】

【絵里奈:大丈夫よ。もう熱も微熱くらい。明日には行けると思う。】

【咲良 :よかった~。無理しちゃダメだからね♡】

【絵里奈:大丈夫よ。咲良の方こそ。また掲示板の中は酷いけど……】

【咲良 :えーっと、そうだよね。失敗したなぁ……】

【絵里奈:どんな状況だったの?】

【咲良 :ボスで強いモンスターが出てね。しかもボス部屋から出てきてるって聞いて、戦いに行ったの。】

【絵里奈:なんでよ。逃げなさいよ。】

【咲良 :えぇ、そこ?そこはだって、ほら。倒せると思ったしぃ】

【絵里奈:しぃ……じゃないのよ。で?】

【咲良 :うぅ、話しづらい。】

【絵里奈:で?】

【咲良 :行ったらアークデーモンがいて、レッサーデーモンを従えてたんだけど】

【絵里奈:逃げなさいよバカ!】

【咲良 :あ~、バカって言った~。負けないんだから、もちろん魔法をぶつけたよ!】

【絵里奈:なんでAランクのボスモンスターとCランクモンスターが群れてるとこに殴り込むのよ!】

【咲良 :だって~。リュウタくんとサトシくんはやられて転がってたし】

【絵里奈:ほっときなさいよ!どうせ助けたって感謝なんかしないやつらよ!】

【咲良 :それはちょっと……。で、戦おうとしたら夢乃間くんが来てくれたの。】

【絵里奈:それが転入生?掲示板で心配されてたわね。】

【咲良 :あぁ、そうそう。私の隣の席になったの。】

【絵里奈:ほうほう。でも転入生なんて珍しいよね】

【咲良 :だよね。でもBランク探索者なんだって。倒れてた2人救助してくれて助かったし、その後も支援魔法や回復魔法をかけてくれてね。】

【絵里奈:えっ?ちょっと待って!なんで一緒に戦ってるの?まさかそれでダメージ受けた感じ?】

【咲良 :いや、最後に私がミスしたの。アークデーモンが倒れたから、倒せたって思ったんだけど、実はまだ生きてて自爆攻撃を受けちゃって……】

【絵里奈:えぇ?】

【咲良 :夢乃間くんが私を庇って受けてくれたの。びっくりしちゃって私……。どうして戦いが終わった後に夢乃間くんが近寄ってきたのかもわからなくてドキドキしてたらドーンってなって。びっくりしたんだけど、夢乃間くんは攻撃を受けて意識を失ってるから慌てて抱えて戻って。そしたらそのまま医務室に連れて行かれて、私は寮に帰るように言われてね。】

【絵里奈:ストップストップ。情報量多い!】

【咲良 :あっ、ごめん。】

【絵里奈:なんにせよ、その男の子が咲良を守ってくれたのね?】

【咲良 :うん♡】

【絵里奈:落ちた?】

【咲良 :えぇ?いや、そんな、だいぶカッコ良かったけど、でも……】

【絵里奈:カッコいいの?】

【咲良 :うん。いや、その……。見た目は普通かもだけど、守ってくれたし。】

【絵里奈:そもそも一緒に戦えるってのが凄いわね。私にも魔力耐性さえあれば一緒に戦えるのに……。】

【咲良 :やめてよね。実際に強力なモンスターの魔力を直に浴びて耐えようとしないと取れないんだからね。取れるかどうかは運だし。】

【絵里奈:……だよね。無理しちゃダメだってわかってるんだけど、どうしてもね。】

【咲良 :無理しないでよ、えりりん。】

【絵里奈:むぅ~。でもその転入生どうなってるんだろう?もしかして固有スキルとか?】

【咲良 :そこは全然わかんなくて。むしろ怪我は大丈夫だったのかな?うぅ……私がミスしたから。嫌われてたらどうしよう……】

【絵里奈:クラスの掲示板で『夢乃間君が無事に目を覚ませて寮に戻ったから安心しろ』っていう先生のメッセージを委員長があげてたから大丈夫でしょ】

【咲良 :ほんとう?よかった~~~】

【絵里奈:うんうん。良かったわね。明日お礼言っときな~】

【咲良 :そうする。ありがとね、えりりん。】

【絵里奈:うんうん。じゃあ、そろそろ寝るから、おやすみ~♡】

【咲良 :ありがと♡おやすみ~♡】





***あとがき***

お読みいただきありがとうございます!

なんとか頑張った燈真でした。

今後とも、どうぞ彼の活躍をお楽しみください。


そして、より多くの方に読んでいただくため、フォローや☆評価(☆☆☆→★★★)を頂けると嬉しいです。作者も舞い上がります。

応援(♡)やコメントもお待ちしております。

どうかよろしくお願いいたします!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る