第15話 ダンジョン探索実習②~先へ

『アビスヴォイド!』

「ミラーカウンター!」

『ナニッ!?』

あっ、昔の癖でとっさに反転魔法を……。しかも属性逆転つけちゃった。


「夢乃間くん……凄い……」

「天城さん!畳みかけるよ!!!」

「うん!」

バロールは僕が聖属性に反転させて打ち返した魔法を喰らって大きくのけぞっている。

チャンスだ!

 

「「セイクリッドストライク!!」」

しかも特に打ち合わせることもなく同じ魔法を放つ天城さんと僕。

やっぱりこれは運命感じてもいいのかな?


魔法を放つ天城さんの顔がステキすぎて魔力放出のことは頭の中から消え去った。

凛々し……尊い……。


そして僕らの魔法はバロールに直撃する。

念のため追撃とかくっつけたんだけど無意味だったかな?まぁ当たったからいいや。


僕は次の展開の準備を始め、天城さんは殴り込んだ。

脳筋だけど、やっぱ強い。

パンチもキックも重たそう……あんなに軽そうな体のどこからそんな威力が?


『グゥ……ヤルデハナイカ!』

「エターナルシャイン!」

なんとか天城さんの蹴りをかわし、おそらく転移だと思うけど魔法で距離を取ったバロールに対し、天城さんは僕の想像以上の魔法を繰り出した。


えっ……それ、学生が使うレベルじゃない……。やばい……。


『フン!貴様、コノ女ガ目ニ入ッテオラヌノカ!』

「なっ」

バロールは鞘村さんを閉じ込めている魔力の球体を移動させて天城さんの魔法にぶつける。



「きゃあ……」

そしてぶつかる黒と白の魔力。

その中で鞘村さんが……


「もちろんわかっているさ。だから僕がいるのさ」

『ナニ!?』

「夢乃間くん!!!」

僕は準備していた転移魔法で球体の中にダイブ……このまま鞘村さんを救出するのさ。


って、なんだよこの球体。

魔力の濃度濃すぎ……やばい魔力放出とあわせて僕の意識を刈り取りに来る……。


ダメだ夢乃間燈真!

こんなところで気絶したら誰も助けられないぞ!

ここで鞘村さんをカッコよく救出すれば天城さんからの評価もうなぎのぼりなはずだ!!!

耐えろ僕の"ド根性"!間違いなく見せ場だからさぁ!!!




なんとか意識を保った僕は崩れていく黒い魔力の球体と襲ってくる白い魔力の間で鞘村さんを抱えて飛ぶ。

行け!転移だ!!!




『クッ……アノ状況カラ逃ガストハ……!?』

「マジックブースト!」

「ありがとう夢乃間くん!覚悟して!エターナルシャイン!!!」


僕は転移先に着地すると同時に、天城さんに支援魔法を送る。

もう一発さっきの魔法を撃つのはわかってる。

行け!天城さん!









「ヒール!」

「あっ……ありがとう、夢乃間君」

「無理しないで。ずっと高位モンスターの魔力に晒されてたんでしょ?」

「うん……」

「キュアマインド」

「あぁ……ありがとう。落ち着く……♡」

距離を取った僕は天城さんがバロールを倒すのを眺めつつ、鞘村さんを降ろし、抱きかかえるような形で回復魔法をかけている。


鞘村さんはかなり厳しい状態だったようで、僕に身を預けている。スキルを使って効果を高めているんだけど、受け入れてくれているようだ。役得ってことでいいよね?


天使な天城さんと比べると、明るい茶髪でおしゃれな鞘村さんは少しギャルっぽい。そして系統は違うけど可愛い……。



「えりりん!」

そしてバロールを倒した天城さんが戦闘モードを解除してかけよってくる。

ヤバい、可愛い。

親友を心配する表情はまさに天使のようだ。


僕の心配もしてくれたら嬉し……いや、僕は魔力放出に耐えれてると思ってるだろうから、ないな。


「大丈夫。回復魔法もかけたし、今は安心して気を失ったのかなと思う」

「ありがとう、夢乃間くん。私、気にせずあんな魔法を使っちゃって……」

「えっと……大丈夫だよ。予想していて飛び込む準備をしてたからね。無事に助けられて良かった」

近い、近いよ天城さん。

鞘村さんを心配してるからだろうけど、そんなに顔をよせられたら僕が気を失ってしまいそう……。



 



「天城!夢乃間!……鞘村も無事か!?」

そこへ先生がやってきた。

他の生徒達もだ。


救援を受け取ってから降りて来てくれたんだろう。

僕は鞘村さんを天城さんに預けて、ここで起こったことを説明した。



「ばっ、バロールだって?なぜそんなモンスターが……それに他の子たちは」

「感知する限りこのフロアにいますね。きっとバロールに敗れたのかなと。ただ、反応があるので救助しましょう。数は合ってるので」

「助かる、夢乃間。場所はわかるのか?」

「はい」

僕は他のクラスメイト達と手分けして全員救助した。

バロールの力に押されたのか、モンスターがほとんどいなかったのは助かった。


その分、3層にはかなりモンスターが増えていて、みんなが降りてくるのに手間取ったらしい。




「全員揃ったな?それでは目標の5層に行くぞ」

先生の掛け声で僕らは順番に5層に続く階段を降りる。

4層でバロールに敗れた委員長たちと鞘村さんたちのチームは全員救出し、回復させたがさすがに無理はさせられないので待機だ。

今、他の先生たちが救助に向かってくれているらしく、それを待つことになった。


一方、その他の生徒たちはもともとの目標だった、5層ボス部屋の前まで行く。

予想としてはあのバロールはボス部屋にドロップしたボスモンスターで、前回のアークデーモンと同じく外に出てきたんだと考えられる。


それならボス部屋は抜け殻になっているだろうから、大きな危険はないだろうという判断だった。




しかし……僕らが降りた5層は、4層よりもさらに濃密な魔力が充満していた……。

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