第14話 ダンジョン探索実習②~天城さんの本気
□学院ダンジョン3層(夢乃間燈真)
僕らは2層を抜けて3層に入った。
モンスターを蹂躙する天使。そしてそれを後ろから眺める僕……。
僕って撮影係とかだったかな?
強すぎなんですけどこの娘。
そして後ろにいるのにお肌がピリピリする。
相手に合わせて天城さんが放出する魔力が増えているんだろう。
まぁ、これくらいなら気合十分の僕にとっては大きな問題にはならない。
後ろにいるしね。
3層もモンスターで溢れていた。
「もうこんなにモンスターが出たのかな?」
「ん?あぁ、鞘村さんたちが通った後なのにってこと?」
「うん。ちょっと多すぎる気がして。今までこんなことはなかったのに」
「もしかしたらまたボスに変なのが出てるのかもね」
「変なの?」
「前回はアークデーモンが手下をいっぱい召喚してたでしょ?そんな感じのやつがまた出てるんじゃないかってこと。だって、今ここにいるモンスターって4層とか5層にもともと出てたやつらだよね」
「下から逃げて来てるのがまだ続いてる?」
「そう思った」
本来なら切迫感があるこんな会話。
昔のパーティだったら固く、重苦しいものだった。
なにせリーダーが短気だったから、むしろそっちを怒らせないように必死だった。
それがどうだ。
相手が天使だとここまで違うんだ。
こんな会話なのに楽しいし、たまに振り返ってくれる天城さんの顔のあまりの可愛さに気分があがる。
ただ、こちらを振り返るとこっちに向く魔力が増えるのかお肌が痛くなるけども……。
そんな会話をしながらも僕らは走り続ける。
ピコーンピコーン!!!
「緊急アラート!?」
「どうした?……って、『強力なモンスターが現れ交戦不可能。鞘村さんが捕らえられた?』」
「えっ?」
「急ごう!鞘村さんと同じパーティーの木村君からだ!」
「うん!えりりん!!」
嫌な予感がする。
僕らは全力で駆けた。
そして4層に降りた。
ここの空気は明らかにおかしい。って、魔力多すぎないか?
先週来た時には余裕綽々でパーティー探索をこなしてたはずなのに、今はとても良くない雰囲気に変わっていた。
ちらほら見えるモンスターも……なんでダークウルフとかサンダーコボルトがいるの?あいつらCランクダンジョンのモンスターでしょ?
それがたくさん……どんどん近付いて来る。
逃走中なのか?
「夢乃間くん、えりりんを探そう!もしかしたら緊急アラートを見て委員長たちも向かっているかも」
「あぁ。とりあえず支援魔法をかけておくよ?」
「ありがとう!行こう!」
僕は攻撃、防御、魔法、速度をあげる魔法をそれぞれかける。
なんで魔力耐性アップの支援魔法を覚えてないんだ、僕は。
まぁ、仕方ない。
ここからは"ド根性”、君の出番だ!
なんとか耐えてくれよ!
ん?今までもずっと仕事をしてきただって?
わかってるよそんなことは!でも、ここで頑張らないといつ頑張るんだってくらいの状況だろ?
なぁ!!!
「えっ……夢乃間くん……あれ……」
僕らが周囲のモンスターを蹴散らして進んでいくと、見たことのないモンスターが現れた。
「鞘村さん……?」
「えっ、えりりん!!!?」
「天城さん待って!!!って、そりゃあ行くよな。オール支援!!!」
それは人間のような体形の大男で、ごつい体と大きな翼を持つモンスターだった。
右腕を掲げながら立っているが、その右腕の先には巨大な薄黒い魔力の塊が水のように波打ちながら浮いており、その中に鞘村さんが入っていた。
親友のそんな光景を見て天城さんが黙っていられるわけもなく、飛び込む。肉弾戦で挑んだのは鞘村さんを傷つけないためだろう。
僕はそんな彼女に支援をかける。
『ホウ……コノ魔力……ヨウヤク歯ゴタエガアルヤツガ出テキタヨウダ』
「えりりんを離せ!!」
ぐぅ……魔力放出の強度が上がる……、耐えろ!耐えるんだ夢乃間燈真!
僕はモンスターに鑑定をかける。
いや、見たことあるモンスターだけどね。気を逸らすためだよ……?気絶するわけにはいかないんだ。
***Monster Date***
名前:バロール
種族:悪魔
強さ:かなり強い(Aランク相当)
特徴:人間の言葉を喋る。同じAランクでもアークデーモンより強い。闇属性と炎属性を持っている。
********************
うん、知ってる……。目新しい情報はない。
だめだクラクラしてきた。
ん?鞘村さんと目が合った。意識はあるみたいだ。
ということはあの魔力の球体の中では呼吸ができるんだな。
ただ、顔色は悪い……相当強い魔力を浴び続けてるからか。
でも天城さんの魔力放出の影響は受けてないみたいだな。あの球体が逆に防波堤みたいになってるのか?
なら今すぐ助けない方が良いのか?
それじゃあ、天城さんにも鞘村さんにも回復魔法と支援魔法をかけておこう。
「リカバリア!」
対象を絞るヒールではなく、範囲魔法にしてみた。
おっ、届いた。鞘村さんは捕らえられたときに負ったのか、ケガをしていたが、それが治った。
驚いた顔をしている……やっぱ鞘村さんもきれいだよな……とか思ってる場合じゃない。
あの球体は通過して魔法は効果を発揮した。
それなら……。
「キュアマインド!」
よし!鞘村さんの表情が少し良くなった!
『ホウ?我ノ魔力ヲ通過サセルカ……貴様モ優秀ダナ……』
「すみません、パスで」
「夢乃間くん……」
だって、バロールのターゲットになってる場合じゃないんだ!
僕は君の魔力放出だけでお腹いっぱいで……
『アビスヴォイド!』
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