第13話 ダンジョン探索実習②~強敵

□学院ダンジョン4層(水谷香織)


『ごめん、委員長切るね。合流よろしく!こっちは出てきたモンスターを倒すよ!』

『『『おー!』』』

「わかった!今から追いかける!」

私はそう言って通話を切った。


「よし、行こう!」

「「「あぁ!」」」

そしてパーティーメンバーと一緒に走り出す。


いや、走り出そうとした……。



『クックックック……』


「なに?」

私たちの前に、いつの間にかモンスターが立っていた。


それはとても大きなモンスター……私たちの2倍はありそうな身長、筋骨隆々の身体、燃え盛るような赤い目、そして巨大な蝙蝠のような翼……。


「ばっ、バロールだと!!!?」

「知っているの?」

モンスターオタクでよく図書館で図鑑を眺めていた佐々木君は知っているようだ。


「知ってるさ……僕は記録されているAランク以上のモンスターは全部覚えてる……」

「えっ、Aランク?」

「それって、このまえ天城さんと夢乃間くんが戦ったアークデーモンと同じレベル?」

なんでそんな強力なモンスターが立て続けに出てくるの?


国が調査して改めてアークデーモンはイレギュラーで、ここはDランクってなったんじゃなかったの?

しかもあのモンスター、嗤ってる。


「同じレベルじゃない……」

「えっ?」

佐々木君の目はバロールに釘づけた。


「同じクラスでも明確に差がある。バロールは……アークデーモンより強力なモンスターだ……」

「なっ……」

『フム……我ヲ知ッテイルナラ話ガ早イ。貴様ラハ贄ダ』

どうする……相手は完全にこちらを見下しているけど、逃がすつもりはないみたい。


そもそもこいつはどこからやってきた?

先行している鞘村さんたちはスルーしてこっちへ来た?


いや、考えてる暇はないわね。

ここは3層からの階段が近い。


なんとか守って……天城さんたちを待てるか?

そもそも体が重い。

Aランクの放つ魔力に耐えながら攻撃にも耐えて待つのは厳しい。

しかしそれしか手がない。


同じ階層にいる鞘村さんたちもモンスターの攻撃を受けたばかりのはずで、助けは望めない。


しかし現実は無常だった。


ゆっくりと手を掲げるバロール。

その先に黒い魔力が集まっていく。


「マジックシールド……なんとか耐えるんだ!」

佐々木君が防御魔法を唱えてくれるが……。その表情は厳しい。バロールに集まっていく魔力が多い。

 

『我カラ逃レラレルト思ッテイナイダロウナ……』

来る。


前衛3人で盾を構えて魔導士の佐々木君を庇う。

耐えれたら佐々木君の回復魔法で……



『ダークウェイブ』

なっ……。



これは、次元が違う……。


黒い魔力は波のように私たちに襲い掛かり、あっさりと佐々木君の防御魔法は打ち破って、さらに私たちをなぎ倒した。



弾き飛ばされた私たちはそのまま意識を失ってしまった。




 

□学院ダンジョン4層(鞘村絵里奈)

 

私たちの前に、Cランクダンジョンでフロアボスとして出現するクラスのモンスターであるゴーレムが現れた。

戦士である徹と肉壁である光一が前に出る。

 

彼らが敵をけん制したり、攻撃を受け止めている間に私が魔法を当てる。梨沙は全体を支援する。それが私たちの陣形だ。


「スピードアップ!!」

ゴーレムの攻撃力は高いが、動きが遅い。梨沙は全員に速度アップの魔法をかける。


「行くぞ!」

そして徹は剣を構えてゴーレムと対峙する。


ん?肉壁くんは最前線じゃないのかって?

彼は私の目の前にいるわね。って、なにしてんのよ!私だけ守ってどうすんのよ!!!


「光一、あんたも前に行って!」

「この戦い、鍵は絵里奈様だ。だからボクは君を守る!」

えーと、まったくときめいたりはしないし、言ってる意味がわかんない……。


「じゃあ、光一も貯めといて!ゴーレムが動きを止めたら撃てるように!」

「……」

なぜそこで無言になるのよこの肉壁!

キレそうになるけど徹が1人でゴーレムの動きを押さえているからまぁいいか。


「あんた地属性魔法打てたわよね?ゴーレムの動きを封じて!」

「ふむ……わかったよ絵里奈様!」


ゴーレムを警戒しているのか、他のモンスターは介入してこないから、私たちはゴーレムとの戦いに集中していた。

このパーティでならゴーレムとも戦える。

それは私たちの自信と経験になる。

行くわよ!?


「行くぞ!アースシェイク!!!」

光一の魔法がゴーレムの足元で発動する。周囲の地面が揺れ、ゴーレムの足元が崩れた。


やるじゃない!

ただの肉壁じゃないって信じてたよ!


そしてチャンスだ!


ゴーレムは魔法攻撃に対して防御態勢を取っていて反撃は来ない。

そこに徹が切り込んでいる。


そして私は剣を構えて走る。


「これで終わりよ。ストーンスラッシュ!!!」

そしてスキルを発動させて剣を振る。

これは地属性を付与した斬撃を放つスキルだ。


行け!……えっ?


「逃げて!絵里奈!!!!?」



『クックック。コノ階層ニ入ッタ者ノ中デハ、オ前ガ一番強イヨウダ』


「なっ……」


私のストーンスラッシュは確かにゴーレムを貫いた。

しかしゴーレムの反対側から黒魔力が沸き上がり、ゴーレムを消し去り、私に纏わりついてきた。




「絵里奈様!……くそっ、ウォーターストライク!」

光一が私に纏わりついた黒い魔力に魔法をぶつけるが、全く効果がない。

 

「みんな逃げて!咲良に救援を!」

これはまずい。退却して、救助を求めるしかない。

 

「あっ、天城さんを呼んでどうなるの?」

「……今はそんなことを言ってる場合じゃないだろ、梨沙!」

やめてよ。今そんな言い合いをしてる場合じゃないでしょ!

光一……早く救援をうって……これは……




『贄ハ手ニ入レタ。他ニ用ハナイ……ダークウェイブ!』

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