第11話 ダンジョン探索実習②~包囲網?
「やっぱり今回のダンジョンは外れだよな~明らかに雑魚モンスター強いよ……」
すぐ近くで戦いながらぶつぶつ文句を言っているクラスメイト。
確かに今日の探索実習で出てくるモンスターは普段のゴブリンやスケルトンではなく1,2段階上のモンスターが多い。系統は一緒だけど。
でも僕の今の心境を語るならこうだ。
ダンジョンRTAだから早く行きたいのに君たちのせいで天城さんが本気で戦えなくて面倒くさいよ……。
そう。
僕は今、天城さんには戦闘させずに1人で戦っている。
なにせクラス単位でのダンジョン探索実習だ。
前回は好きなところに行って戦えた。
だからきっと天城さんは人気のないところで実習をこなしていたんだろう。
それが一斉スタートで、なおかつ明らかに木瀬や安藤たちのパーティーに邪魔をされて抜け出すのに失敗した。
なんでRTAなのに開始と同時に地属性の広範囲魔法なんて放つんだよ。
抜けて行ったのは委員長のパーティーと鞘村さんのパーティーだけ。
僕らを含めた7つのパーティーは団子状態になってしまったのだ。
まぁ、いざという時は周囲なんか気にせず天城さんに戦ってもらえばいいんだけど、さすがに不必要にクラスメイトを傷つけてくださいとは言えない。
彼女自身も苛立ちを感じているみたいだけど、今のところ僕の言うことを聞いてくれて大人しくついてきている。
ちなみに天城さんに"魔力放出"の効果範囲を聞いたところ、そこまで広くはなかった。
それに指向性があるらしく、主に天城さんが向いている方向に広く、後ろ側には浅くなるらしい。
となれば、先頭にさえ出てしまえば多少影響があったとしても抜けられるだろう。
そこまでば僕の力で振り切る必要がある。
あるんだけど、なぜか僕ら以外の6つのチームは一定の距離間でまとまって移動している。
どうせならクソ強いモンスターでも出てくれないかな???
そんなことを考えながら僕は淡々とホフゴブリンとゴブリンメイジを斬り捨てた。
普通周囲を囲まれていたら戦うタイミングもなさそうだが、どんどんポップしてくるから戦う相手には困らない。
コイツの首を斬り飛ばして木瀬にぶつけたりしてればいいか。
「うぉおっ!?」
「ちょっと、首だけ飛ばしてこないでよ!」
「悪い。なんか綺麗に飛んで行ったんだ。そっちに」
「夢乃間くん……くく……」
木瀬と安藤の怒りなんてもはやどうでもいい。
笑を堪えている天使の笑みの中、小さく噴き出している声を僕は聞き逃してあげたりしない。
ストレス発散は大事だよね。
「ごめんね、夢乃間くん」
「謝ることはないよ。いざとなったら気にせず魔力放出してもらって抜ければいいし」
「……」
僕の発言に周囲の温度が下がる。僕らの会話を気にしてるらしいし、ちゃんと言っておくか。
クラスメイト達は勘違いしてるよね。
「それは……」
「それは?ダメだよ天城さん。そんな甘いこと考えてちゃ」
「甘い……?ごめん」
「謝らなくていい。でも、例えば強いモンスターが出た時、自分が負けそうな時、大事な人の命がかかっている時。そんな時に手を抜くのはありえないだろ?」
「うん……」
「今はダンジョン探索実習だ。でも、僕らはいずれ外のダンジョンを探索していくために訓練をしている段階なんだ。真面目にやるべきだよね?」
「うん……」
「多少周囲に影響を与えるからって、君は手を抜いている余裕なんてあるの?そんなに強いの?」
「いえ……強くないです。まだまだ弱いです」
「でしょ?まぁ、クラスメイトを傷つけたくない気持ちはわかるから今は何も言わないけど、いっつもそれじゃ困るよ?」
「うん……」
「ということで行こう」
僕は一気に速度を上げる。
天城さんもついて来る。ちょっと暗い顔で。
やばい、言い過ぎたかな?
むしろクラスメイト達に『甘いんじゃぼけぇえぇえええぇえええええ!!!!』って伝えたいだけなのに、コミュニケーションって難しいよね。
すり抜ける際に見えたクラスメイト達はあんまりいい顔をしていなかった。
木瀬なんて思いっきり僕を睨んでたけど、探索者育成のための学校にいてトップクラスに強い女の子を精神的にイジメてなにがしたいんだ?
「よし、抜けたね。こっからは気にせず行こう」
「夢乃間くん……ごめんね。私……」
う~ん、ちょっと言い方がきつかったかな?
ここでもし僕がイケメンだったら頭をぽんぽんして『行こうぜ!』って言えば治まるんだろうけど、やっていいかな?
いや、虫でも見下すような目で見られたら悲しいし……まずは言葉を……。
「僕は優しい天城さんが好きだよ?僕の方こそごめんね」
「えっ?うん……。ありがとう」
なぜか驚かれた。……あっ、好きだよとか言ってしまった。
僕のバカ野郎!!!言うんだったらちゃんと言えよ!
案外行けそう……じゃないよね。はいすみません。勘違いしてすみません。
今は実習なのに甘いのは僕でした。
「よし、気持ちを切り替えよう。って、落とした僕が言うのもなんだけど、初のパーティー探索だしね!」
「うん!頑張る♡」
変なこと考えてたせいでつい天城さんの頭をぽんぽんってしたら、なんと気を取り直してくれたみたいだ。
良かった~。無意識に避けられたりしたら、今度は僕が致命傷をおうところだった。
でも、笑顔になってくれた天城さんは両手で可愛く握りこぶしを作って『よしっ』ってやってる。
あのう……、ちょっとだけ控え目にしてくれると嬉しいけどね。
うっ……。
天城さんが"魔力放出"を気にせず気合を入れたみたいだ。
こっからは後ろをついて行っても……いや、行くよ。行きますよ。
「さぁ、鞘村さんや委員長たちのパーティーを追いかけよう」
「おー!」
クラスメイト達を振り切った後、周囲を気にせず戦う天城さんはやっぱり可憐で優雅だった。
僕たちは新路上にいるモンスターたちを全てなぎ倒しながら進んで行った。
って、そもそも今回の実習の内容を話してなかった~~~~!?
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