第9話 秘密の会議
□学院寮 絵里奈の部屋(天城咲良)
「つんつんつんつんつんつん」
「ちょっ、ちょっとえりりん!」
「あはははははは」
「もうっ!」
夢乃間くんと一緒にパーティー申請用紙を書いて先生に提出してから待ってくれていたえりりんと一緒に寮に戻り、いつものようにえりりんの部屋を訪れた。
私たちは放課後はたいていどっちかの部屋で過ごしてることが多い。
普通はこの時間はパーティーでの相談や自主練に当てて、その後で、なんだけどね。
今日はえりりんは風邪開けということで早々にパーティー活動休みになってたらしいし、私と夢乃間くんは明日から活動しようという話になっている。
それでえりりんの部屋に入ったんだけど、唐突にニヤニヤているえりりんが突っついてきた。
むぅ……。
「ごめんごめん、怒らないで。でも良かったじゃない。ようやくパーティ結成だね」
「うん」
「Sランクパーティ目指さなきゃだから大変だろうけどね」
「うん♡」
「あちゃ~」
「えっ?」
私がお昼のことを思い出しながら聞いていると、目の前でえりりんがダメだこれはみたいな顔をしている。
「つんつんつんつんつんつん」
「ちょっと!!!」
そして再びつんつんしてくる。
「咲良がベタ惚れになる前に対策を考えないといけないわね」
「どういうこと!?」
「だってこれまでずっとボッチお姫様だったわけじゃない」
好きでボッチだったわけじゃないのに……。
私の固有スキルには"魔力放出"というものがある。
これは俗に言うネガティブスキルで、戦う時に常時魔力を周囲に放出してしまうの。
ネガティブスキルは単独で出ることはなくて、たいてい強力な固有スキルとセットで出現する。
私の場合は既に3つ埋まっているから、1番目と2番目のどっちと一緒に生えたのかはわからないけど、なんにせよこれのせいで今までずっとソロだった。
一般的には魔力は探索者やモンスターが戦いに使うものだが、探索者ではない人が触れたら体が弱り、最悪死に至るもの。
探索者であればある程度の耐性を持っているのが普通だけど、それでも高位モンスターがまき散らす魔力の前では低ランク探索者は身動きすら取れなかったり、精神異常をきたしたり、肉体的に傷ついたりする。
私の"魔力放出"はそんな高位モンスターと同様に、付近にいるものに等しく襲い掛かる。
そのためAランク探索者でも私の隣に立つことができなかった。
Sランクは試したことがないからわからない。
Sランク探索者は気軽に会える存在じゃないから。
「まぁ、やっと組めたわけだから、これからはパーティーでの試験も受けれるわね」
「うん!」
この学院は探索者を育成するための学校だ。だから試験は通常の勉強に加えて、ダンジョン探索や実技がある。
ずっとソロだった私は実技もソロで挑んでいたので、パーティー用の試験は受けられなかった。
それが受けられるようになる。
受ければ一定の成績は取れると思うから、より高ランクの探索者を目指せる。
そもそもパーティーが組めれば私だけでは突破できないダンジョンも探索できる。
ネガティブスキルが生えるくらい、私の他の固有スキルは優秀だ。
なにせ"魔導王"と"武闘王"。
どちらもかなり珍しいスキルだ。
ランク的には、魔導神>魔導王>上級魔導騎士>魔導騎士>上級魔導士>魔導士の中の上から2番目。
ただ魔導神は世界に1人しかいないと言われているし、私にはさらに武闘王もある。
火力、および支援魔法、回復魔法までこなせる。
ただ、状態異常に対する耐性は高くないし、探索支援系のスキルは持っていない。
理想的にはそういう補助や支援をしてくれる人がいてくれるのがベスト。
でも、"魔力放出"のせいで組む相手がいない状態だった。
一方で夢乃間くんはその辺りもできそうなオールラウンダー系みたい。
アークデーモンとの戦いでは支援魔法や回復魔法に加えて転移とか、浮遊とか鑑定を使っていた。
期待するなと言われても、期待しちゃうわよね。私……変じゃないよね?
それに自爆攻撃から守ってくれるくらい優しい。
私は防御力はそこまで高くないし、申し訳ないことに勝ったと思って気を抜いていた。
もしあの攻撃を食らっていたら正直厳しかったかもしれない。
それをあんなに自然に守ってくれるなんて……。
えりりんは"落ちた?"なんて言って笑ってたけど……正直、夢乃間くんがあの時近付いてきたのには驚いた。
けど、魔法までかけて守ってくれたのは反則的にカッコよかったのは事実よ。
今までそんなことされたことない。
まぁ、ソロだったし当然だけど。
「まったく、幸せそうな顔をして……」
「あっ、ごめん」
1人で考えにのめりこんじゃった。
にやにやしてたかな?
「いいわよ。そりゃ嬉しいのはわかるし、私だって嬉しい」
「えりりん」
「あとは逃がさないようにしないとね。早めに既成事実を……」
「それじゃあ、夢乃間くんが嫌がってる祠堂さんと一緒になっちゃうよ!」
「それもそっか……いや、そうね。ぐぬぬ。変なハードルを!せっかくのカモなのに!」
「ダメだよそんな言い方!せめてチャンスって言って!」
「いい?咲良!男なんて単純でいつまで経ってもガキなんだから、しっかり握らないと」
「えっと、なにを?」
「もう、言わさないでよ」
「……もう!」
「あはははは」
まったく。私たちは高校生で、学院のクラスメイトとしてパーティーを組むんだから、真面目にダンジョン探索を目指していけばいいのよ!
もちろん夢乃間くんが言ってた卒業時にSランクというのはとても凄い目標だし、誘った私だって頑張るつもり。
「目標は、まずは下の名前でよびあうことと、相性の確認よね」
「パーティーのだよね?そんなことが大事なの?名前の呼び方なんて関係なくない?」
「何を言っているの?大事なことよ。お互い遠慮なく言える仲にならなきゃ!」
「なっ、なるほど……私、そんなの考えたこともなかった……」
ずっとソロだった私と違って、えりりんはパーティーでは良好な関係を築いているから参考にしないとね。
真面目な話なら……。
「そうよ。そうしないとちょっとしたことですぐに離婚の危機よ?誰かに寝取られちゃうよ!?」
「なんの話よ!!!」
***あとがき***
お読みいただきありがとうございます!
燈真と咲良はどうなっていくのか!!?
これからにご期待ください!
そして、より多くの方に読んでいただくため、☆評価(☆☆☆→★★★)を頂けると嬉しいです。作者も舞い上がります。
作品フォロー、応援(♡)やコメントもお待ちしております。
どうかよろしくお願いいたします!
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