第31話 学院選抜試験③配信

「おはようございます。天城咲良です。慣れてないのであまりうまく喋れないと思いますが、どうぞよろしくお願いします」


【きたーーーーー!!!!!】

【やばいな、実物めちゃくちゃ可愛いじゃん】

【うん、天使がいる】

【すっごいね。まじで白石様と戦える】


って何の話だよ!?


「天城さんが天使なのは同意するけど、そもそもどこで知られたの!?」

「あっ、燈真くんブブー。減点ね」

「なんで?」

【なんで?】

【なにがあった?】

【わかんないけど、夢乃間リーダー、原点です!】


ノリ軽いな!?


「下の名前で呼びあおうって言ったのに、名字呼んだからアウト!」

「あぁ……」

【くっ、アオハルかよ!】

【羨ましい羨ましい羨ましい】

【美少女からのアウト頂きました~】

【夢乃間リーダーがだろ?】

【ほら、天城さんはそのまま行っちゃったけど大丈夫?】


あっ。

待って!


「それで、なんで僕らの事が知られてる感じなのかなと思ってね」

【それは君たち、アークデーモンとか悪夢の王とかバロール倒したでしょ?】

「うん。あま……咲良さんがね」

【今のはアウトではなかろうか……】

「セーフだから!あまりにも知られてて驚いただけだから!」

【くっ、卑怯な……】

なにがだよ!?


話しが進まないじゃないか!


【あの時切り抜き画像とか出たんだよね】

「えっなんで?どこかで撮られてた?」

「あぁ、学院の記録動画だね。学院には生徒たちの探索の記録をとる義務があって、必ず公開サーバーに上がっちゃうんだよ。アークデーモン戦も悪夢の王戦も動画は削除されたらしいけど、公開されていた期間に有名になっちゃったって、中学の友達から聞いたよ」

「なるほど……」

「この学院に入るときに説明があったと思うんだけど……」

「……(口笛)」


【あまりにも露骨で適当な逸らし方……40点!】

何がだよ⁉

そんな話も聞いた気がしたけど、僕にとっては学院に逃げ込むことが大事だったから、それ以外はスルーしたんだ。

そもそものんびり適度にまったりやっていくつもりだったから、動画とか配信に映るとか考えてもいなかったしね……。

 

それに天城さんあんまり聞いてないし。

やっぱり恥ずかしいのかな?

ちょっと顔が赤いからそうっぽい。


「配信自体が初めてのことなので、暖かく見守っていただけたら嬉しいです」

【そうだよね。ごめんごめん】

【君たちの目的は探索なんだからあまり気にせずね】

【我々は勝手に騒いでるけど、気にせずに】

【僕らの目的も全力応援だしね】


「ありがとうございます」

思った以上に暖かくてびっくりする。

前に見た鬼女の配信はもっと荒れてたような……。


というか、ふと思ったけど、動画や画像が出回ってるってヤバいな。

鬼女に気付かれるんじゃないだろうか?


うん、怖いことを考えるのはやめよう。それがいいよね。


【それにしても学院ダンジョンって配信でわかるくらいに魔力濃度高いよね?】

【それ思った。Dランクダンジョンなのにマジで?って感じ】

「今は異常事態のようですから。選抜試験もその調査みたいなものですし」

【なるほどね。国や学院が投げたの?酷いね】

「学院は教師たちで調査するつもりだったらしいですけどね。勝手に学院選抜試験にすることを決められたってみんな怒ってました。今回も、ボス部屋とかでSランクモンスターと遭遇するような事態になったら校長権限で試験は中止して共闘するように言われています。その判断の支援のために、通常は手は出さないですが先生たちのパーティーもダンジョンに入っていますし」

「あっ、夢乃間くん……」

【なるほど。先生たちはしっかりしてるんだな】

【やっぱり国がクソか……】

「あぁっ、まずかったかな?まぁいっか。事実だし」

【【速報】やっぱり国がねじ込んでた!】

【こらこら、学生を困らせるな。一応切り抜いて保管しておくよ。何か問題が起きそうだったら君たちの弁護のためにだけは使わせてもらいたい(by弁護士)】


うん。まぁ、配信しろってことはこういう情報は洩れるよね。

仕方ないよね。うん。



僕らは歩きながら進んでいく。決して無理はしない。

たまにモンスターが襲ってきてるけど天城さんが全部瞬殺してくれてる。僕がやることは支援と回復だけだ。


【たまにチラッと見えるけど、咲良ちゃんが強すぎる件】

【1層だからって言うのはあるんだろうけど、全部一撃粉砕だよね?】

【強くて可愛い……ステキ……♡】

【悪夢の王と戦った子がここで負けるとかありえないよな】

【たまに咲良ちゃんの周囲が光ってるのは夢乃間くんたちが支援魔法賭けてるのかな?】


「そうですね。あんまりまだ必要なさそうですけど、体力は使うし、格闘だからかすり傷とかはあるので治したりしてますよ?」

【さらっと出てくる支援魔法や回復魔法】

【詠唱も貯めもなく発動してるのすごw】

【今の時点でスカウトしたいレベルですね、はい】

【でも、3人パーティーなんだね。もっと増やしたりしないの?】

「えぇと……」

【言いづらかったらいいよ?何か理由があるんだろうし】

勝手にネガティブスキルのことを離すのは得策じゃないしね。


と思ったら、天城さん……いや、咲良さんが下がって来た。下の名前で呼ぶためには、こういう意識のところから変えておかないと無理だってことに気付いたから、咲良さんって呼ぶよ、咲良さん。


「パーティーが3人なのは私が理由なんです。私が"魔力放出"持ちだから」

【そうだったのか】

【なにそれ?教えてエロい人】

【"魔力放出"。俗に言うネガティブ固有スキルだな。戦闘中に周囲に魔力を放ってしまうんだけど、それが敵味方関係なく悪影響を与えてしまう】

【そんなのあるのか……それ、リーダーや鞘村さんは大丈夫なの?】

【大丈夫だから組んでるんでしょ。あと、大丈夫な人が少ないから3人ってことだよね】

「はい。燈真くんは固有スキルで耐えられる人で、えりりん……絵里奈は"魔力耐性"持ちだから」

【なるほど。そういうことだったんだね】

【そんなハンデがあっても、あれだけ強ければね】

【実際、固有スキルとして凄いのを持ってるってことだよね?ネガティブスキルは凄いスキルと一緒にしか生えてこないから】

【そうなんだ。全然知らんかった】

【そこが強さの秘訣なんだろうね】

【そんなネガティブスキルなんか気にせずパーティー組んで頑張ってるってことでしょ?すげぇな。憧れるわ】

【だな。実際AランクとかSランクのモンスターを倒してるんだし、これから応援させてもらうよ】


そして、視聴者さんたちはやっぱり暖かくて、少し緊張気味だった咲良さんの表情がようやく穏やかになった。その笑顔がご褒美です。

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