第30話 学院選抜試験②開始
「さて、みんな集まっていますね。準備は良いですね?」
僕らは生徒会長の言う通り、準備万端だ。
朝7時。寮には僕らが学院選抜試験に参加することは伝わっていて、いつもより早い起床、早い朝食、早い登校をした。
普段そんなに早く登校しない僕にとって、ほぼ誰も歩いていない学院への道は新鮮、というか初めての経験だった。
そこで天使に声をかけられて朝からテンションマックスになり、鞘村さんから『私もいるぞ』と小突かれてから冷静さを取り戻し、一緒にやってきた。
なんて爽やかな朝なんだろう。
ちょっと雨が降りそうな曇り空だけど全く気にならないよね。
「知っての通り、今回の探索は学院選抜試験として実施する。だから、今から配る機材を使って、各自配信するように」
へっ?
「使い方は1年生でも1学期に習っただろ?」
「はい、大丈夫です」
ほっ……良かった。鞘村さんが受け取ってくれている。問題はなさそうだ。
「では健闘を祈る。目標は5層のボス部屋まで行って、出現していると思われるボスを倒すことだ。だが、過去2回のイレギュラーから考えるとボス部屋を出ている可能性は高い。くれぐれも注意を払って進むように」
白石生徒会長が美しい顔に真面目さを張り付けて生徒たちに注意を促す。
その言葉を聞いて、僕は気を引き締めた。
『一点注意事項だが、決して無茶はしないで欲しい。今の時点でどんなモンスターがボスとして座っているかがわかっていない。場合によっては試験は中断して共闘を持ちかける可能性もある。その際に指示や連絡を無視しないこと。これは徹底してくれ。守らなかった場合には、選抜試験から除外する」
「それは生徒会長権限で?」
「いや、校長権限だ。校長から私の判断で試験中断すること、共闘を呼び掛けることについては許可を貰っている。そもそも、同行してくれる先生方が判断するのが基本だ。ただ、それができない場合には範囲が私、私が無理な場合には副会長、その次は矢吹くん、溝口くん、夢乃間くんにまで展開することになっている。さすがにそこまで誰も判断できない状態になった場合に、試験を継続するバカはいないだろう?」
「そういうことなら異論はない」
「了解した」
「わかりました」
僕らは全員同意する。
悪夢の王より上なのかな?ここでワクワクしているとか言ったら怒られそうだから言わないけど、天城さんと鞘村さんと一緒ならSランクモンスターとでも戦えるし、なんだったらキスするよ。うん。不可抗力だし、役得だし、勝つために仕方ないよね。うん。
「じゃあ、俺たちはとっとと行かせてもらうぜ。"魔力放出"を浴びたらきついからな」
「そうだな。ではスタートだ」
「ご安心を。僕らは最後尾を行かせてもらいますので」
「……」
生徒会長のスタートを聞いて、僕らは思い思いに出発した。
先行していくのは溝口って言うずっと突っかかってきた人たちのチーム。次に生徒会長たち。その後に矢吹さんたちが行って、最後が僕らだ。
そもそも1年生の僕らは学院選抜試験を無理して突破する必要はないし、むしろ今突破してバトルロイヤルで鬼女と当たる方がきつい……。
学院の危機に対して協力したいとは思っているから進むが、最後尾をゆっくり行けばいいだろう。
そんな説明を2人にしながら僕らは歩いて行った。同意してくれて良かった。
「じゃあ、配信を付けるわね」
「お願い。僕は全くわかってないしね」
「そう言えばそうよね。じゃあ説明しながらやるね」
鞘村さんって良い子だよね。
見た感じちょっとやんちゃというか、ギャルっぽさはあるけど、面倒見がいいし、気も使ってくれるし、笑顔がステキだ。
「スマホでこのバーコード読み込んでくれる?うん。そうそう。それで登録完了。送られて来るコメントが見れるようになると思うからね」
「なるほど……」
「ダンジョン配信用の機材は起動すると勝手に浮いてついて来るからもうやるね~」
鞘村さんがスイッチを押すと、カメラが浮かび上がった。
僕らのことを記憶させて、今後はついて来るようにするらしい。
メインターゲットはじゃんけんの結果、僕になった。
大丈夫かな?美少女移せって視聴者さんたちから怒られないかな?
僕だったら可愛い子の後ろ姿が見たいよ?
「おはようございます。東都探索者育成学院1年A組の鞘村絵里奈です。学院選抜試験にエントリーしているチームの1つですので、規定に従って配信を開始します。よろしくお願いします」
【おぉ~礼儀正しい!】
【そして可愛い!】
【白石様と2窓します。よろしくです】
【1年生で選抜試験は凄いね。頑張ってね!】
途端にコメントが流れ始めた。
鞘村さんが目配せしてくれる……って、そうか、自己紹介か。
「おはようございます、パーティーリーダーの夢乃間燈真です。1年生なのもあって、他のチームよりも慎重な行動になると思いますが、どうぞよろしくお願いします」
【おぉ、男の子だ】
【ほんとだ!頑張って!応援してるからな!】
【君があの。じゃあもう1人は……】
ん?なんか知られてる?どういうことだ?もしかして鬼女のチームにいたからかな?
不思議なことだが、流れるコメントが割と好意的なことにホッとした。
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