第24話 びっくりした~(咲良視点)
□天城咲良
夢乃間くんとデートしたの。
彼はまだ転入してきたばっかりの男の子で、初日から私と一緒にアークデーモンと戦い、翌日には私とパーティーを組んでくれた。
"魔力放出"というネガティブな固有スキルがあるせいでクラスメイト達に敬遠される私にとって、彼は救世主みたいな人だった。
いくら強くたってずっとソロでやっていけるわけない。それはわかっているのに……わかっているからこそ、誰とも組めない状況に落ち込んでた。
そんな私と一緒に戦ってくれる。
どうしても攻撃一辺倒になってしまう私のことを的確にサポートしてくれる。
"魔力放出"の影響で倒れてしまうこともない。
生徒会長からも言われたけど、後ろにいてくれるだけでもの凄い安心感がある。
えりりんのことも助けてくれた。あれは助かった。ハイになってた私が反省すべき点ね。
そんな夢乃間くんを誘ってしまった。決して不意に夢乃間くんにキスした生徒会長に嫉妬したからではない。
本当に。
私と夢乃間くんはパーティーメンバーなんだし、私たちはまだ高校生だし、ありだよね?仲良くなるのは良いことだよね?
夢乃間くんも笑顔で喜んでくれてるみたいだし、恥ずかしかったけど勇気を出して誘ってよかったな。
えりりんに選んでもらった服を褒めてくれたし、その……『見とれてた』なんて言われたら恥ずかしい。
でも、嬉しかった。今まで男の子からそんなこと言われたことなかったし。
そんな中で夢乃間くんが話してくれた過去は重たいものだった。
私を信頼してくれてるんだと思った。そして一緒に強くなっていきたいと思ってくれてるのが分かった。きっとその祠堂っていう人は避けて通れない人なんだろうから。だから打ち明けてくれたんだと思う。
夢乃間くんは軽い雰囲気で話していたけど、記憶がない……つまり、なんで自分がそこにいるのかわからないというのは相当な恐怖だと思う。
さらに追い打ちをかけるような大人の裏切り……。
感謝と恐怖でぐちゃぐちゃになったんじゃないかと思う。
だから逃げた。
そのおかげで私は彼に出会えた。夢乃間くんに希望を貰った私は、夢乃間くんが過去を振り切る手助けになりたいと思ったの。
それで……思い出すのは恥ずかしい。
それでキスなんかしたら、夢乃間くんが嫌う女の人と一緒になっちゃうんじゃないかと思ってたはずなのに、止められなかった。
なんというか、私は自分が卑怯だと思った。
悩んで苦しんでた夢乃間くんの想いを利用してすり寄ってしまったのかもしれない。罪悪感。
それでも彼は嬉しそうにしてくれて……だからいいよね?なんて甘えてしまう。
私、隣にいても良いよね?結局、そう誤魔化した。
それから帰ってくるまで、口数は少ないけど、暖かい雰囲気を作ることができたと思う。
夢乃間くんは私の感情なんか見透かしてるかのように、私が見つめると見つめ返して頷いてくれた。
別れ際、肩をぽんぽんってして、今日はありがとうって言ってくれた。
お礼を言うのは私の方だよ。
救われた気分になったの。
一緒にいていいんだって思えた。
そのせいでえりりんのことを離せなかった。
えりりんは笑って許してくれて、明日一緒に話そって言ってくれた。私の周りは優しい人ばっかりだ。
でも、失敗だった。
「えっと、2人で組むから僕とは解散とかかなと?」
なんで?
なんでそうなるの?
そんなわけないよ!
そんなの嫌だよ!!!?
そう思うのに口が動かない。緊張してしまって……喉がカラカラになった。
「なんでそんなに自己評価低いのよ!燈真君はいる前提で、私も入れてもらおうって話だよ!」
「なんだ。びっくりした~」
「こっちのセリフよ!」
同じく慌てながらもえりりんが会話をつないでくれて助かった。
「夢乃間くん、いないと嫌だよ?」
私はそれを言うのが精いっぱいだった。
「それでね。えりりんはずっと"魔力耐性"がゲットできたら組もうって言ってくれたの。だから夢乃間くんにも確認したくて」
言い訳のようにとって付ける自分の言葉。本当にただの言い訳。昨日言えてたら夢乃間くんを動揺させることもなかったのに。私のバカ。
「全く問題ないよ。前衛に天城さんで、中衛に僕、後衛に鞘村さんにしたらかなり安定しそうだよね」
「うんうん。だよね!」
「じゃあ、私の加入OKね?」
「異議なし」
「良かった~♡」
「ありがと。よろしくね♡」
無事、私たちは3人パーティーになった。
ほっとした。
□???(???)
それはダンジョンの中の荒涼な大地に横たわり、大きな口を開ける。
すると漂っていた多くの魔力が集まり、その口に飲み込まれて行った。
圧迫されるような魔力の刺々しさが薄れ、平穏が戻って来た。
それは喰い終わると立ち上がり、歩いていく。
行先は……
それが歩いていると、ふと不思議なものが置かれていることに気付いた。
なにか変な四角いもの。あまり好ましくない魔力を放ち、その魔力がその場所を覆っている。
あまり自分には関係ないが、魔力はある。
それは喰った。
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