第34話 学院選抜試験⑥キス……ロックドラゴンを倒すためだからね?

□新宿ダンジョン4層(夢乃間燈真)


【やばい……】

「えっ?」

お姫様抱っこのせいで生み出された変な空気を振り払っていると、不穏なコメントが目に入った。


「どうしたの、燈真くん?」

「コメントで『やばい』っていうのが見えて、他のチームに何かあったのかなと」

【あった。これはヤバいと思う。ロックドラゴンだ】

「「「えぇ?」」」


ロックドラゴンは巨大な岩のようなドラゴンだったはず。出会ったことはないけど、ランクはSランク。毎回思うけど、こんなDランクダンジョンで出てくるモンスターではない。


「戦況はわかりますか?」

【白石様のパーティーと、溝口ってやつのパーティーがいたけどどっちも壊滅状態だな。生徒会長が1人でなんとか致命傷を防いでいるが、それ以外は全滅してる】

「急ごう!」

【えぇっ、行くの?ダメだって、逃げて!】

【教師に任せよ?ね?】

【ランクは悪夢の王と同じSランクだけど、ロックドラゴンは固いし、広範囲攻撃ばっかりでやっかいだからね?】

【学院側には連絡したからさ!】

みんな心配してくれているが、ここで逃げる選択肢はない。


すでに咲良さんは走り出している。

彼女の攻撃の威力なら戦えるだろうし、白石さん1人しか残っていないのに先生たちを待つのは厳しいだろう。

攻めて合流して他の人を守りながら待つ。可能なら倒す。これしかない。


そうやって走っていると、巨大な岩のドラゴンが見えた。

でかい……。


しかし怯んでる余裕はない。

大盾ごと吹っ飛ばされる白石さんも見えたから。


そこから転移を使い、なんとか間に合った。

飛ばされた白石さんを受け止め、回復させる。そして転移でロックドラゴンのテリトリー外に避難させた。


「絵里奈さん、僕がここに皆を集めるから守っていて欲しい」

「了解。でも、大丈夫かな?遠距離攻撃とか」

「ロックドラゴンはテリトリー外には攻撃しない。咲良さんは突っ込んだね。あれで周りを気にしてる余裕はなくなったはずだ。今のうちにみんなを回収してくるから」

「わかった。魔法障壁張って守れるようにしておくね」

「頼む!」

そう伝えて、僕は転移を繰り返して一人づつ回収する。


ケガの状態が酷い人もいるが、死んでいる人はいない。

これならなんとかなる。



「これで全員だね。よろしく。回復魔法もかけたから大丈夫だと思うけど、何かあったらこれを使って」

「これは……。うん、わかったわ」

【救助の手際が良すぎて画面に見入ってたわ】

【今手渡したのハイポーションだよな?いくらすんだよ】

【夢乃間くんがハイスペックすぎる件】

【遠目で見えてる咲良ちゃんもやばいよな。普通に殴って怯ませてるとか】

【頑張れ!君たちなら勝てる!】


コメント欄は相変わらずだね。

「じゃあ行くね。何かあったら叫んで」

「わかった。私も参戦したいけど、さすがに今回は役立たずだわ」

「そんなことないよ。みんなを守っていてくれれば、気にせず戦えるから」

「うん。頑張って♡」

【くっ、見た目は普通だけどカッコいい……】

【推すわ。これから夢乃間くんを推すわ!♡】


えっと……。うん、気にせず行こう。


それにしても4層でSランクモンスターとか本当にどうなってるんだよ……。




「咲良さん!支援魔法オールイン!」

「燈真くん……えっ?すっ、すごいね。なんかいろいろな支援魔法が混ざってる?」

「あぁ、同時発動できるように混ぜたんだ」

「……そんなことできるの?」

えっ、できないんだっけ?

普通にできたから便利に使ってるんだけども。


まぁいい。避難は終わったから、あとは目の前のデカい奴を倒すだけだ。


「さすがに大きいね。どうやって倒すか……」

「ドラゴンだから逆鱗があると思うんだよね。ほら、あそこ。あれを叩こうかと思ったけど」

「なるほど。ということはあいつの動きを止めればいいかな?」

「うん」

「よし行こう」

「えっと……」

「ん?」

どうしたんだろう。プランはできたから実行あるのみだけど、少しうつむきがちに僕を伺う咲良さん。

可愛いけど、どうしたの?


「キスしてほしいの……ダメかな?♡」

「……」

かっ、かわいい……。なにこの可愛い生き物……。

えっ、いいの?何回でもするけど、本当にいいの?


いいんだな。これは。だっておねだりされたんだからいいよね?


僕は転移の勢いで咲良さんに接近し、彼女の頭を抱えるようにしてキスをした。

一応カメラからは隠しておこうと思ったんだ。


そして唇を離すと、恥ずかしそうに微笑んでいる天使がいた。

ごちそうさまです。

心も体も大満足です!!!


行くぞトカゲ野郎!!!!!!!




ということで、ロックドラゴンは瞬殺しました。


 

一応方法を伝えておくと、地属性魔法で両足の地面を崩してロックドラゴンを転がし、拘束魔法で捕え、逆魔法障壁で覆って完全に動きを止めた。

そこに咲良さんがとことこ駆け寄って行って、逆鱗の前で構えて全力パンチ。

恐らくあまりの衝撃にもんどりうちながら周囲に攻撃を繰り出したロックドラゴンだったが、僕の魔法障壁が全てを無効化。


何回か繰り返していたらあっさり死んででっかい魔石になったよ。

今は鞘村さんと合流して先生たちを待っているところだ。

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