第42話 幸せでいて、不穏な未来

どうしてこうなった……。



あの後、咲良さんと絵里奈さんから話がしたいって言われて、翌日話した。

2人は僕がどこかに行ってしまうんじゃないかって思ったらしい。

なんか不安にさせてしまったようで、申し訳なかった。


と同時に、僕なんかを心配してくれたことが嬉しかった。



「どこにも行かないから」

「本当?」

「絶対?」

両手をそれぞれ捕まえられててどこかに行く能力も度胸もないけどね。

どうでもいいけど、なんというかその……当たってて平常心だけがどこかに飛んでいきそうだけど。


「よくよく考えてみたら、僕たち、もうすでにSランクとか言われてもおかしくないくらい強くなったしね」

「それは確かに……」

「あくまでも咲良と燈真くんのおかげであって、私はまだまだだけども……そうね。パーティーとしての実績は相当高いわね」

そうなのだ。


実際学院ダンジョンはAランクダンジョンだったわけだ。そこにイレギュラーでロックドラゴンなんていたんだ。それを倒した僕らは少なくともAランク探索者になるだろうし、パーティーとしてもAランク認定を受けられる。

そうなればSまではあと1つ。


しかもSランクモンスターの討伐実績まである。

バトルロイヤルで優勝すれば即Sランク認定だろうし、できなかったとしても僕らはまだ1年生だ。あと丸々2年あればもっと強くなれる。


鬼女……祠堂さんから何か言われても、ただ聞くだけの立場ではもうないはずだ。

たった2週間程度で状況が大きく変わって……変わりすぎなくらいだけど、それは目の前の2人のおかげだ。


もう何というか抱きしめたいくらいには僕の心は晴れた。

だって、目の前で超かわいい子が笑顔になってくれるんだよ?

僕がここにいるって言っただけで。


嬉しすぎるよね。


そう伝えると2人とも真っ赤になっちゃったけども。



カウンターで爆弾を落とされて撃沈したのは僕の方だったことだけは言っておこう。


えっ?詮索はなしだよ?

ダメダメ。聞きたいって言われてもダメ。恥ずかしいし、プライベートってやつだよ。

えっ?


なんでわかるんだよ!

そうだよ。告白されたんだよ。2人から。

2人同時にとか、こんなこと現実にある?爆ぜろとか〇ねとか言われかねない。むしろ祠堂さんよりもそっちの方が怖いかもしれない。


でもね。

僕はちゃんと受け止めようと思ったんだ。

だって、2人はしっかり考えて伝えてくれたんだ。

こんな僕のために。


あっ、こんなって言っちゃいけないんだった。

絵里奈さん……絵里奈から言われた。

もう少しだけでいいから自分を信じろって。私たち2人から告白されたんだから自慢しなよって。


咲良からは頭を撫でられた。

恥ずかしすぎて穴があったら入りたいくらいだったけど、同じくらい幸せというか、暖かかった。


僕も頑張って2人に良かったって言ってもらえるように頑張るつもりだ。



そうそう。水無月校長からは平謝りされた。

もう一回校長室に呼ばれて行ったら土下座してて、なぜか白石さんに頭を踏まれてた。

白石さんからもまさか校長が理解してなかったとは思っていなかったとよくわからないけど謝られた。


前に話した通り白石さんはちゃんと理解してくれていて、その情報を共有すべきだったということだったらしいから、お礼を伝えたらなぜか赤くなってた。


そしてよくわからないテンションで自分もパーティーに入れてくれと言われた。


生徒会の人たちは力不足なのでと言って、僕に白石さんを加えるようにお願いもされてしまった。



なんとあの戦いで白石さんは"魔力耐性"をゲットしたらしい。メギドフレアドラゴンは相当凶悪だったし、その前のロックドラゴン戦でもかなり厳しかったからだと思う。なぜ僕には生えてこないんだ"魔力耐性"くんは……。


白石さんの優秀さはもちろん理解している僕らに反対意見はなかった。

しいて言うなら、なぜか僕が咲良と絵里奈に抱きしめられて、白石さんがキーってなったくらいだ。なんだったんだ?


そして白石さんが玲奈と呼べとか言い出した。

リーダーが遠慮するなと。敬称もつけずに呼び捨てにしろとか命令されていると、咲良と絵里奈からも同じことを求められたってわけだ。


それで慣れないけど、咲良、絵里奈って呼ぶようにしたわけだ。心の中でも。


ちゃんと白石さ……玲奈のこともそう呼んでないと、また白石さんとか生徒会長って呼んで減点されるから気を付けないといけないらしいよ。(他人事)




そこからは玲奈の配信に呼ばれてパーティー入りしたことを宣言させられ、嫉妬して絡んできた鬼女……祠堂さんを言い負かした。

自分のところに帰ってこいっていう祠堂さんに対して、僕には2人がいるんだから、今回はしっかり断った。


そうしないと優柔不断にもほどがあるだろ?


そしたら黙ったからわかってくれたと思う。





そこまでやって、ようやく落ち着いたんだ。






そして10月の晴れた日……僕らは4人でダンジョンに入った。


普段の授業の実習には玲奈が同行できないから、日曜日に申請してみんなで一緒に入ったんだ。

学院選抜試験のとき以来だね。一緒にダンジョンを探索するのは。




改めてAランクダンジョンだと言われた学院ダンジョンでは、学生たちが継続して探索し続ける運用を続けることにしたようだ。

毎回Aランク以上の先生……つまり、ほぼ毎回校長先生がついて来るようになったし、平日午後は誰かしら潜るから校長は常に待機している。対策はそれくらいだ。

校長先生が過労死しないことを願うよ。


こんな感じでボスを定期的に倒していれば、あまり強いボスは出ないらしい。

なのになんでアークデーモンが出たのかとかはいまだにわからないけどね。



「今回はレッドゴーレム。Bランクね」

玲奈が記録を付けている。

ダンジョンに入ってボスに遭遇したパーティーは、その時であったボスを必ず記録することになっている。


まぁ僕らの敵じゃない。

今回は絵里奈と玲奈の二人であっさり倒した。


握りこぶしくらいの魔石が落ちて、討伐完了だ。







しかし……












『グルゥ……』




「なんだ……あの犬?」

どこからともなく真黒な犬が出て来た。





動けない……。



あまりに巨大な魔力に戦慄する。

咄嗟に前に出る。

こいつはヤバい……。



それが僕を見た。



急に汗が噴き出る。

悪寒と頭痛もだ。


来るのか……?



勝てる気はしないけど、2人を……いや、3人を守らないといけない。



唾液を飲み込むことすらできない。


巨大なプレッシャー……。


やつがふと鼻をあげるだけで凄まじく緊張する。

動いて来るのか?






しかしすぐに興味を失ったのか、やつは魔石の方に近寄っていく。



そして歪な大きな口を開き、魔石を喰らった。



ゴリッゴリッっと咀嚼する音が響き渡る。



僕らは動けない。


動いたら噛み殺される。


そんな恐怖でいっぱいだった。




その犬は咀嚼を終え、飲み込むともう一度僕らの方を見た。



 

今の間に全力で魔法を使っていた。


魔法障壁を何枚重ね掛けしたかわからない。


支援魔法も、もう効果はないだろうけどずっと使っていた。



首の後ろに汗が流れる……。


目を離すことはできない。







しかし、犬は再び顔を背け、そして軽く飛びあがると、そのまま消えて行った。





なんだ……今のは……?







fin.





***


ということで、完結ですw


ここまでお読みいただきありがとうございました。

応援いただきありがとうございました!


この作品は現代ファンタジーの世界観でラブコメが書きたいと思って書き始めた作品で、気付けばハーレムに……あれ?

そして不穏な敵が……あれあれ?


そのままもともと考えていたプロット(冒頭8話は"ド根性"で魔力放出に耐えてパーティーを結成する。その後40話位までで燈真が祠堂を怖がる必要がなくなりること+咲良と付き合うことになったら完結)を駆け抜けました。

なぜか絵里奈が一緒に告白していたのは自分でも書いていてびっくりしましたが、この状況で1人だけ抜け駆けはしないよなと思いました。



今後もいろんな作品を書いていきたいと思っておりますので、どうぞ皆様、当作品への評価に加え、作者フォローを頂けると新作公開時などにご案内できると思います。どうぞよろしくお願いいたします。


p.s.

謎が残っているだろ? とか、祠堂と対決してない! とか、バトルロイヤルは!? とか、3番目の固有スキルなんだったんだよ!? とか、燈真くんのハーレム&活躍が見たい! とかあると思いますが……すみません。


いつの日か続きのプロットを考えたりしたら書くかもしれませんが、上述した通り、当初のプロットを書き終えたため、完結とさせていただきます。

(うつろいがちな作者ですみません。現在はリッチ様を完結まで書ききるため、そちらの執筆を行っております。https://kakuyomu.jp/works/16818093078652902480

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魔力をまき散らす超絶美少女(ただしボッチ)にペア結成を迫られた件~言い寄ってくるSランク探索者から逃げて学院に来たんだけど、まぁいっか。超可愛い子と一緒に頑張ってSランク探索者を目指すなんて青春だね! 蒼井星空 @lordwind777

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