魔力をまき散らす超絶美少女(ただしボッチ)にペア結成を迫られた件~言い寄ってくるSランク探索者から逃げて学院に来たんだけど、まぁいっか。超可愛い子と一緒に頑張ってSランク探索者を目指すなんて青春だね!

蒼井星空

第1話 転入……そして美少女からの勧誘

夢乃間ゆめのま燈真とうまくん。どうか私とチームを組んでください!」

この学校に昨日転入してきたばかりの僕に、絶世の美少女……天城あまぎ咲良さくらさんが頭を下げている。


どうしてこうなった……。

 


僕はどちらかというと縁の下の力持ちとか、なんなら影の支配者とかに憧れるタイプで、決して陽キャではない。

それにステータスは特徴のない平均型で、しいて言うならちょっと他人より根性があるくらいだ。

固有スキルにもそれが現れていて、僕の固有スキルリストの1つ目は"ド根性"だ。

2つ目はちょっと特殊だけど、現状使い道はない。3つ目は現時点で未解放……。

そして、僕のシャツにカエルはいない。


そんな僕が朝登校すると、隣の席に座るめちゃくちゃ可愛い女の子が『おはよう』と声をかけてくれる。

そして薄っすらと頬を赤く染めながら『放課後、体育館裏に来てください』と蚊が泣くような声で呟いて来るので、しまったなぁと思いながらここにやって来た。

そこにまぁ、当然だけどこの娘……天城さんがいた。


夕日をバックにしているが、むしろこの娘の方が光り輝いてるんじゃないかと思うくらいには可愛い。

彼女の顔、肩、そして華奢な体を包み込んでいるシルバーブロンドの長髪が光り輝いていて、なんでだろう……後ろの夕日より眩しいんだ。

少しうつむきがちだが端正なお顔、程よい……胸、腰のくびれ、柔らかそうな太ももに……いかんな、ただの変態親父になってしまった。


とにかく、彼女は可愛い。

まだこの学校に転入してきて2日目だが、勝手に学校一だと思っている。

少なくとも前の学校にこんなに可愛い子はいなかった。

テレビでも配信でもここまでの娘は見たことがない。

幼い頃にも可愛い女の子と遊んでる断片的な記憶があるけど、その子もまぁ可愛かったと思うけど銀髪じゃない。


きっと僕の好みだからというのもあるだろう。

細い糸しか通さないくらいにストライクゾーンを狭めたとしても、ピンポイントでぶち抜かれるだろう。


そんな娘からの呼び出しだが、告白か!とは思っていなかった。

予想通り、チームを組もうとのお誘い。

頭を下げた勢いで長く美しい髪がふわっと揺れ動く。


こんな天使のような美少女に勧誘されるなんて……。

男なら……特に僕みたいに平凡な男にとってはまさにラノベみたいな展開で、心の中は『ひゃっほーーーい!!!』ってなもんんだろう。

彼女はソロ、僕はボッチだから当然2人きり……もしかしたらプライベートでもお近づきになれるかもしれない。

 

ただ、違うんだ。僕が今求めているものは僕を追いかけてきそうなあの悪魔から逃げるための平凡さだ……いや、天城さんからのお誘いは喉から手が出るくらい断るには惜しい。

うーん、でも怖い……怖いんだ。


ん?なんでだよって?

お近づきにるチャンスを捨てるのかって?

できることなら僕だって、こんな針の穴を素通りしてくるような可愛い子と良い関係を築きたいけど、そんな簡単な話じゃないんだよ。

天城さんは超かわいいし、昨日見た限り相当強い。そんな彼女と組んだことが悪魔にバレて連れ戻されたりしたら……イヤダ考エタクナイ……。



とりあえず、なぜ平凡な僕が天使に勧誘されるなんてビッグイベントに遭遇しているのかについては、とりあえず昨日あった出来事を語ればわかってくれると思う。


*****


「全員席に着け。HRだ」

「起立。気を付け。礼」

「「「「よろしくお願いします」」」」

朝の学校の何気ない風景だ。

特にこれといった特徴のない40歳前後の教師が教室に入って騒がしくしている生徒たちに少しきつめの声をかけると、生徒の一人がお決まりの声をあげ、全員が礼をする。

そこに特別な意味はないことが多いが、今日は珍しくあった。


「じゃあ、転入生を紹介するぞー。入ってくれ」

「はい」

僕は事前に指示をされていたとおり教室に入る。

一斉に静まり返った空間の中で全員の好奇の目に晒される。


「夢乃間燈真です。よろしくお願いします」

この学校は日本で最も優秀なダンジョン探索者育成学校であり、通常転入生などない。

あるとしたら一般の学校で突然才能を開花した生徒がいて、さらにその生徒がその時点で相当優秀な場合だけ。

10年に1度もない奇跡。

好奇心を向けられるのは当然だった。まぁ、全ての視線が好意的なんてことはありえないが。


当然ながら優秀なこの学校の生徒たちは日々競い合っている。

ダンジョンの何層まで行った、どんなモンスターを倒した、Aランク探索者に認めてもらえた、珍しい武器をゲットした、可愛いファンがついた、優秀なパーティーに勧誘されている。マウントを取りあう出来事はたくさんある。


「夢乃間くんはすでにBランクのライセンスを持つ優秀な探索者だ。みな、仲良くやってくれ。席はそうだな。天城の横が空いてるから、そこだ」

「「「!?」」」


教師が指さした場所は窓際から2番目の列の一番後ろ。

……窓際の席にはとんでもなく可愛い女の子が座ってる。あれがきっと天城さんなんだろう。

学校で目立つつもりはなく、むしろ静かに、穏やかに、こっそり生きていたい僕にはちょっと刺激が強すぎる気がするが……


「夢乃間くん。天城咲良です。よろしくね」

「あぁ、こちらこそ。よろしく」

少しだけ速足で席に向かった僕を待っていたのは、お約束のいじわるな男子生徒の足……ではなく天に響くハーブのような美声だった。

なにこの娘。顔も可愛くて、声も可愛くて、不自然な転入生に自然に声をかけてくれるとか、まじで天使かな?

思わずにやけてしまう表情筋を必死に抑えつけ……そっけなく挨拶を返すのに全神経をついやし、なんとか完遂させた。

 

「あとは連絡事項だが、今日の午後はダンジョン探索実習だからな。昼食の時間が終わる前に全員準備して入り口の前に集合だ」

「「「「はい」」」」


こうして僕は陰キャにとってはドキドキの『転入生の自己紹介』という非常に緊張するイベントを終え、さらには突如発生した『天使の隣の席になる幸運に感情を出さずに耐える』イベントもクリアしたわけだ。


一つだけ意外だったのは、『天使の隣の席』を指示されたにもかかわらず、特に嫉妬の視線や呟きがなかったことかな。

まぁ、みんな真面目に探索者としての実力向上を目指すクラスだからかもしれない。


そう思いながら僕は午前中の授業を受け流した。

そして給食……そう給食だ。この学校にはまさかの給食があって、ぼっちに安らぎの時間をくれなかった。

まぁ知ってたけど。


昼食を採った後はダンジョン探索実習の時間だ。

もちろん僕も準備を整え、指定された集合場所に向かった。

当然ながら初の実習だから頑張ろう、と気合を入れる。

後から考えるとこの気負いがまずかったんだな。

そんな必要は全くなく、僕の当初の目的だった"のんびり適度にこっそり"という言葉をもう一度思い浮かべるべきだった。





***あとがき***

お読みいただきありがとうございます!

2024/9/19公開の新作になります。本日中にもう1話公開した後、明日からは毎日1話更新していきます。よろしくお願いします。


ぜひ夢乃間ゆめのま燈真とうまくんを応援していただけると嬉しいです!


なお掲示板は登場します。また、配信もおいおい学外のダンジョン探索の際などには登場してくる予定です。

現代ファンタジー×ダンジョンもの+ラブコメです!どうぞご期待ください!!!

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