第44話 死刑は免れた……らしい
いろいろとあって、本当にいろんなことがあった。まさか帝都入り口で殺しあいに発展するとは思わなかったし、ラナーが王族だとも知らなかった。このまま殺されるのかなって思っていたけど、そこは流石。実力主義の帝国。
意外と、「実力あるからいいよ~」って感じで許された。絶対に、裏でラナーの力が働いていると思うけどね。
帝国が実力主義なのは、地下にダンジョンがあるが、帝国国内にはダンジョンの入り口がないということ。実は、もともとこの大陸一帯は帝国しか、国が存在しなかった時代があるのだ。その後、十数年に一度発生する魔物の大進行。その大進行の原因が、とある穴によるものだと考古学者たちのチームが特定。
その穴を塞ぎ、管理するために貴族が派遣されて、王国が誕生した。この王国は、ダンジョンの入り口の数だけ存在し、帝国は実質的に王国を従えているのだ。とはいえ、ダンジョンがある各国と帝国では実力差が出てしまうのは明らかだった。
そこで、帝国は徹底的に軍事力を強化し優秀な人材はとことんまで採用し重宝してきた。だからこそ、僕のような辺境の馬鹿でも、こうして許しを得ることができる。
「それでは、ルインさん。私と帝城まで来てね」
「いやだけど」
「そういわずに、ね?」
「愛らしく首を傾げても、嫌なものは嫌だ。大丈夫、ちゃんと帝国はスルーして別の国か大陸に移動するから」
「それは困る」
でしょうね、という言葉は飲み込む。僕の実力を把握して、帝国の姫であるラナーが逃がしてくれるはずもない。はぁ、いや、うん。
なんていうか、運がないよね。
「私もつれていくべき」
「それは困ります、姫様っ!」
「そうですっ!これ以上、帝国の至宝を汚すわけには!」
「皇帝も心配しておいでですっ!一度、城まで帰ってきていただきたいです」
僕でもおかしいと思ったが、やはりだめらしい。今の騎士の返事からして、そもそもラナーが外に出ているのは自分勝手な行動なのだろう。親である王が心配shてくれているのは良いことだが、騎士の必死さがすさまじい。
場所が場所、人が人なら、殺されてるぞ、これ。
「そういわれても、困る。楽しくないし」
「そんな問題ではっ!」
「皇族としての責務を果たしてるし、結婚ぐらい勝手に相手を選べばいいじゃない。ただ、皇族のしきたりで私は自分よりも弱い人と婚姻はできないよ?」
「そ、それはそうですが。せめて、兵たちに訓練をつけるくらいはしてくださっても………」
「ついてこれるようになったの?」
「それは………」
真顔で淡々と答えるラナーに、騎士たちはどんどん表情が悪くなっていく。しまいには、殺された兵士たちの残骸を指さして、「これで?」と言いたげな表情だ。これが帝国、強さ至上主義の成れの果てだ。
う~ん、関わりたくない。
こうなれば、そーっと、一人で出ていくしかないな。うん、頑張れ、ラナー。
そう思って、一人で離脱しようとしたら「どこへ行かれるのですか?」と騎士に止められた。右に左に揺さぶってみるけど、「逃げないでください」と言って、僕の首根っこをつかんで持ち上げる。
「むぅ、僕は関係ないと思うけど?」
「そんなことない。ルインさんがいる所が、私の居場所」
「なぜ、その男にそこまでこだわるのですか」
「私より強いから」
「「「なっ!?」」」
「はぁ」
いや、なんでラナーがため息つくの?僕が大きなため息をつきたいよ。
はぁ、死刑は免れたのに、なんでこんなにもめないといけないんだ。僕はもっとゆっくりひっそり、のんびりと暮らしたいのに。
はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ、仕方ない。
「わかったよ、ラナー。三日だ。三日は、帝国にいるから、その後は知らないけど。住み続けるのかどうかは別として、三日は帝国の生活をする。だから、一回親にあってくるといいよ」
「ルインさんが言うなら」
しぶしぶといった様子で、僕はラナーに提案した。なお、ラナーも不満顔だったので、どうやらラナーも家に帰る予定はなかったらしい。ただ、帝国に勧誘して帝国の国力増加を図ったのだとか。
紛らわしい…………
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