第52話 闇も町も潰して稼ごう
「た、頼む!見逃してくれ!」
「ふむ、君が本当にこの町を仕切っているフィッシャーズの親方なの?なら、見逃してあげることもできるけど?」
「あっ、ああ!俺が親玉だ。だ、だからほらっ!全員従ってるだろぉぉ!!」
両手を広げてアピールする、無常髭をした筋骨隆々の男。腕回りの筋肉が鍛えられているようで、服の上からもその仕上がった筋肉から支配者と言われたら納得できる。
うん、僕も一瞬騙されたよ?
「確かに、金をしっかりと持ってきてくれたことには感謝しているよ?」
「あ、アハハ。ありがとうございます」
乾いた笑みを浮かべる男を前に、僕は差し出された大袋を撫でる。確かに、こいつらの蓄えていた全財産はここに入っているのだろう。中身も、この帝国で流通している通貨で一番大きなものが、ギッシリと詰まっているしな。
ただ、どう考えてもこの男は影武者なのだ。この場に残っている男どもも、生き残っているものに関しては、力が強いだけの馬鹿しかいないしな。
僕が地上の施設を破壊した時点で、どうせ一番上の人間は逃げてるだろうしな。
「さて、時間稼ぎももういいだろ?」
「へぇぁあ?」
「ああ、いいよ、もう。演技は十分。金は貰ったし、君たちもその影武者の言うことを聞くのは嫌でしょ?さっきから、この男が嘘をつくたびに、眉と手が少し反応したたぞ」
そう、何も情報はこいつだけではない。周りの護衛を含め、情報源は沢山あるのだ
そこから総合的に判断して、どう考えてもこいつらは、嘘つきなんだよな。
「な、なにを言ってるんですか?」
「はぁ、もう演技は良いって言ってんだろ?というか、こんなクソガキにいい様に言われて恥ずかしくないの?それとも、この町を取り仕切っている奴の下にいる男どもは、そんなに雑魚しかいねぇのか?」
「い、いあやぁ。何を言われているのか………」
「おい、もういいだろ」
「ああ、もういいだろ。ボスだって非難したハズだ」
ガチャガチャと音を立てながら、周囲に控えていた男どもが動き始める。こっちの情報源ではあったが、こうして直ぐに行動する短気っぷりも助かるなぁ。
武器を手にした時点で、この場にいる男どもにもう用事はない。価値もない。
さて、僕ももう移動を始めるか。
「おい!逃げる気かぁぁああ!」
「いや、死体がしゃべるな」
「はあ?」
瞬間、細切れにされた男どもが全身から血を噴出してその場で肉塊になる。いやー、一瞬で細切れにすれば、偶にこうなるから面白いよねぇ。稀にゴミの山ができるけど、それもアリだな。
「ゴミは大人しく、ごみ箱に入っとけよ」
僕が部屋を後にした後、何かが崩れ水の中に沈んでいくようなベチャベチャとした音が、狭い地下通路に木霊した。
「さて、早くいくしかないな」
この町のボスどもを探している中、何度か爆弾が爆発する音がした。音は全部同じ方向から聞こえたが、幾つか分散している事は間違いない。そして、その男どもが逃げた先でどこに行くのかって?
簡単だろ、町長がいる所に行くしかない。彼らの後ろ盾は、この町の一番上だけなのだから。
地下に張り巡らされた様々な通路を調べ、攻略することも面倒だ。それに、親玉を連れてこないと把握できないしな。どこに通路があって、どこに抜け穴があって、誰がどこまで作っているのか。
それを把握している人間は、今はもういないかもしれないけどな。
「さて、さっさと行くかぁ」
適当な出口を探して、僕はそこから町の中にでた。なるほど、宿屋の近くや町の普通の民家に化けて、こうして通路を管理していたのか。これは、全部探している時間がもったいないな。
というか無理。
探索は諦めて、さっさと町長のいる館に向かう。町の中は、既に大騒ぎだ。当たり前だ、町の外側とはいえ深夜に至る所で爆発が起こっているのだから。爆発した場所からは、誰も外に出ないことを祈っているけど。
そうこうしている間にも、また爆発が起こった。今度は、同じ場所だったな。さっきまで爆発音が無くなっていたけど、復活したってことは………。
別グループなのか、それとも地下通路がグチャグチャなんだろうか。考えても仕方ないな。
「わめいているのは良いけど、もっと早くやることがあるでしょ」
町の中をぐるぐると回っている町民を蔑んだ視線で見つつ、僕は町長の邸宅に到着した。すごいなぁ、どうしてこんなにも大きな館ができるんだろうか。この町の規模だと、絶対に無理なサイズでしょ?どうして町民が1000人程度なのに、10000人模領主の屋敷と同じくらいのサイズなんだろうね?しかも、護衛も多くいるし、屋敷で働く女中もたくさんいるみたいだね。
わー、不思議だなーー。
さて、どうしよう。今の時間で、馬鹿正直に門を叩いても絶対にロクなことにならないしなぁ。目の前にいる兵士も、けげんな表情で僕のことを見ているけど。
仕方ない、面倒だけど荒事で行こう。
全身の魔力を、大鎌に集中させる。肉体系の強化は最小限、大鎌に乗せる魔力量を数倍に引き上げる。さて、町長の大きな館はどれくらい更地になるかなぁ。
「おい、何をしているっ!」
「早くその魔力を収めろ!ここがどこか理解しているのか!」
「恨みはないけど、消えてね?」
僕は大鎌を全力で振り抜いた。振り始めた瞬間、バンッという音を立て、目にもとまらぬ速さで振り抜いた大鎌は空気を切り裂き、音を置いて飛び出した。
その大鎌に乗せられた魔力が鎌の攻撃範囲を数百倍にするのだから、溜まったものではない。
屋敷の一階、その基礎部分を切り裂いて返す刃で天井部分を容赦なく吹き飛ばした。
「さて、悪役町長の館攻略でも始めますかねぇ~」
基礎が破壊され、崩れた始めた屋敷を眺めながら、中から聞こえる悲鳴を心地よいBGMとして僕は意気揚々と乗り込んだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます