第十九話 前編

早霧(勝家)ら、総勢約3000の兵は足利晴氏を討つべく上野の館林城付近へ進軍していた。



そこに小太郎が突然茂みから現れ

「待たれよ!」

と、声をかけて来た。


綱景「相変わらず、神出鬼没でござるな。」


政繁「今に始まった事ではございませぬが… それで晴氏の居る位置は?」


「はっ!我らが地元の商人に変装し、酒を振舞ったところ良い具合に酔い潰れて、この先の窪地に陣取っておりまする。」


早霧「して、その数と他の陣との構成はどうなっておる?」


「ただの集団といった具合で、ここに数十人単位で固まって酒を飲んでおりまする。」


「ほう。陣形すらなくか…」


政繁「これは好機ですぞ!殿。夜陰に紛れて一気に蹂躙致しましょうぞ!」


「うむ。下手な策は不要だな。小太郎殿、晴氏の正確な位置は?」


「はっ!地面に書くと、ここから南に行くと一人だけ甲冑を脱いでる者がおりまする。そ奴が足利晴氏でござる。」


綱景「戦の最中に、のんきな奴じゃ…」


早霧「まさか敵が攻めて来るとは思ってないのであろうな。」


政繁「でしょうな。所詮は京かぶれの阿呆でござるゆえ、戦と無縁の存在なのでしょうな。」


「敵は、この雨で我らの接近に気付いておらぬ。小太郎殿の書いてくれた北の峰に移動するぞ!旗を降ろし、出来るだけ静かに移動しろ。」

と、早霧らは移動を開始した。



その頃、北条氏康らは河越城に全軍の移動を完了していた。


氏政「父上。小太郎の情報では館林城の東に足利晴氏、城を跨いで北西に上杉朝定が陣取っておるとの事。如何致しまするか?」


「うむ。予定通り上杉朝定を強襲する。しかし、忍城に睨みを利かせなければならぬ。そこで氏続の隊1500は忍城へ向かってくれ!」


「はっ!心得ましたが、時間稼ぎという事でございまするな?」


「うむ。分かっておるとは思うが、敵を北の厩橋方面に向かわぬように注意致せ!良いな?」


「はっ!出来る限り対処致しまする。」


「ワシらは先に出る、一刻後に出陣すればよかろう。」


「はっ!大殿も御武運を!」

と、氏家らも総勢約3500の兵を持って出陣したのだった。



そして、史実とは違う早霧対晴氏、氏康対朝定の戦いが始まるのだった。



つづく。


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