第十七話 後編
あれから数日が経過し、ようやく小太郎より足利晴氏の家紋入りの旗立てが届いた事により早霧(勝家)は家康(竹千代)以外の配下の武将を呼び軍議を開いた。
そして、大道寺政繁に今回の策についての詳細を話した。
政繁は笑みを浮かべ
「実に面白き策でございまするな。要は、この旗を掲げて上杉憲政陣営へ向かい、何人かを死傷させて足利晴氏陣営の方角に逃げたように見せかけければ良いのでございまするな?」
「そうだ。その後、当然ではあるが憲政は晴氏に疑念を抱くであろう?」
「そこで、今度は雨の夜に奇襲をかけるのでござるな?」
「それだけではない。この策の良い所は、仮に夜戦で攻めきれずに時間が経つとしても、憲政は晴氏に援軍を出す事はない。」
という話にそこに居た政繁はもとより遠山綱景や幻庵に広信(織田信広)は戦慄を怯え、尚且つ驚いた表情を浮かべた。
幻庵「我らの兵力が相手より劣る事で、長期戦になる事も考慮しての策略とは…」
綱景「それもそうでござるが… 付け加えて援軍要請に応じない事で、足利晴氏陣営の士気の低下が見込まれる事も有り得ると?」
「さすが北条家の重鎮でござるな。では、大道寺政繁よ。先程申した通り行動に移せ!」
「はっ!心得ましてございまする!明朝に数騎で事を起こしまする。」
という言葉に驚いた早霧は
「そんな数で大丈夫か?」
「この方が逆に見動きが取れるというものでござる。では、失礼致す。」
と、足早に去って行った。
早霧「政繁はああ申していたが、保険をかける意味で幻庵よ。小太郎に支援を求めておいてくれ。そして、くれぐれも小太郎もではあるが大道寺政繁を死なせてはならぬと!」
「はっ!直ちに!」
まさか、足利晴氏の手の者が攻めて来るとは知らない上杉憲政陣営では北条家との戦に備えて、準備に勤しんでいた。
憲政「忍城の長泰と箕輪城の業正に伝令を飛ばせ!決戦は北条家の所領に成っておる河越城じゃ!今度こそ、北条氏康の息の根を止めて北条家を衰退させ関東に平穏を齎すのじゃ!」
大谷休泊「憲政様。公方様には伝令を出されぬでございまするか?」
「策はすでに伝えておるが… 何じゃ!」
「それが、物見の知らせで公方様の軍勢の一部がこちらに向かっておるとの事でございますればと…」
という休泊の言葉で憲政は頭を傾げ
「は?あの阿呆公方がまた訳の分からん行動をとっておるのか?」
「そのようでございまする。如何致しましょう?」
「捨て置け!それより、河越城の…」
という話をしていると物見兵が慌てた様子で憲政の前に現れ
「憲政様!公方様の者共が、我らの陣営へ攻めて参りました!」
「何?!(あの公方め!ついに頭までおかしくなってしまったのか?ええい!この忙しい時に!)相手は何人じゃ!」
「それ程多くはないかと!」
「休泊よ!貴様の軍勢で追い払って来い!」
「はっ!」
「こちらに被害が出ようとも追い払うだけで良いからな。北条家に勝った後、この事に関しての賠償をしてやる。証拠として旗を奪っておけ!」
「さすがは憲政様。では、御免。」
と、大谷休泊は自身の隊を率いて出撃して行ったのだった。
敵の欺瞞工作とも知らずに…
つづく。
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