第十八話 前編

その頃、小田原城では上杉連合の対策を話し合うべく氏康は家臣を集め軍議を行っていた。


垪和氏続「大殿、早霧殿は何と?」


「上杉憲政と足利晴氏を疑心に陥らせ、双方の援軍を断つとの事じゃ。」


松田憲秀「まさか、そこまで北条家に尽くしてくれると… 感無量でございまするな。」


氏政「しかし、その策は上手くいくのでござるか?」


「そこは抜かりないぞ。あ奴は、足利晴氏を討ち果たすと申しておる。という事は…」


氏続「これはこれで面白い事になるやも知れませぬな。」


氏政「面白いとは?」


氏康「上杉朝定は誰の仲立ちで同盟を組んでおる?氏政よ。」


「あっ!そういう事でございますな?三国の連携が取れなくなる。あの方は本当に御爺様の生まれ変わりでは?」


綱成「うむ。某も思ったわい!こんな策、そうそう思い付かんぞ。それあろう?大殿。」


「うむ。まずは…」

と、話そうとしていた矢先に伝令が飛び込んで来て

「大殿!先程、平山城の者から連絡があり、一先ず上手くいったとの事。」


「ご苦労!」


憲秀「これは幸先いいですな。大殿。」


「うむ。河越城より撃って出て、館林城付近におるであろう上杉朝定を強襲し返す刀で厩橋へ向かう街道付近に憲政が踏ん反り返っておるところを早霧殿と合流して夜襲をかけ、憲政が厩橋城へ逃げ込む隙を与えず一気に攻めると致そう。」


綱成「それはよい考えでございまするな。某は後詰で小田原から甲斐・岩殿城に睨みを利かせましょうぞ!」


氏続「甲斐、武田ですな…」


憲秀「しかし、武田もこちらには来れますまいよ。小笠原や村上と対峙しておる今が上杉連合軍に勝つ好機。」


氏康「その通りじゃ!我らは我らの出来る事を致そうではないか!綱成と憲秀は小田原城に待機。河越城より出て館林城付近の上杉朝定陣営を強襲!出陣は明日の朝、卯の刻と致す!」


一同「「「ははぁぁぁぁぁ!」」」



その数刻後、平山城では大道寺大道寺政繁の働きを労っていた。



早霧「政繁!見事な働きであった。」


「ありがたき幸せ!と言いたいところでございまするが…」


「何だ?その微妙な表情は?」


「某を心配しての配慮とは思いまするが、わざわざ小太郎を動かせなくてもと…」


幻庵「それだけ心配したという証ではないか?」


早霧「備えあれば患いなしというではないか… で、旗は手に入れたか?」


「もちろんでございまする!では?」


「うむ。今宵はうまい具合に雨だ… 皆、準備は整っておるな?」


一同「「「はっ!いつでも!」」」


「では、申の刻に出立する事と致す。後詰は小荷駄隊を兼ねて幻庵に、残りは我と共に来い!目指すは足利晴氏の首だ!他には目もくれぬな!」

と、出陣の号令が下ったのだった。



つづく。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る