第十五話 後編

勝家は短銃の威力を見せる為、氏康に瓜を持ってこさせ

「今から、お見せ致す武器でござるが、かなり大きな音がするので御注意して下され。では…(確かこのくらい至近だったか…)」

と、引き金に指をかけようとした時

「待て!その黒い筒は、そこまで標的に近寄せないと使用出来ぬのか?」


「いえ、人3人分の距離でも可能でございまするが、義元を撃った時の距離で再現した方がより解り易いかと思いまして…」


「ふむ。あい分かった!続けられよ。」



そして、勝家は目と鼻の先くらい至近距離で発砲した!


もの凄い轟音が辺り一面に響き、そこに居た家臣らや一般兵が驚き、呆然と立ち尽くす者、尻もちを付く者や、失禁する者、号泣する者、喚き散らす者と大混乱に陥った。


氏康だけは一瞬たじろいだが、直ぐに冷静を取り戻し

「皆、静まれ!静まれえぇぇぇぇい!静まらぬかぁぁぁ!」

と、大声で叫んだ。


幻庵「これは見苦しいところを… 申し訳ござらぬ。」


「某もあっけに取られ、面目ない。」

と、氏政を始めとして皆が勝家に謝罪した。


勝家「さすがは北条家の当主でございまするな。それに、ここにあったであろう標的が木端微塵になっておる事で証明出来たかと!如何でございまする?皆々様。」


それを聞いた、そして見た者達はぐうの音も出なかった。


氏康「疑って悪かった。(まさか、あのような武器が出回っていたとはな…)時に、その武器は容易に手に入る物か?」


「いえ、織田信秀様の嫡男である三郎様が独自の仕入れ先で手に入れたと思われるが、某の推測では堺で入手したかと思われまする。」


「小太郎!」

と、手を叩くと先程の怪しい女だった者が若い男になり

「ここに!」


「すぐに、その武器の入手手段と値段、分かる限りの情報を入手して参れ!」


「はっ!」

と、音もなく消えたのだった。


それを見た信広は

「馬鹿な?!たしかに女であったぞ?それが…」


「まさか… 変装?にしてはあまりにも…」

と、竹千代も驚いたが勝家は

「やはり、男であったか…」


氏康「ほう。柴田殿は驚くどころか小太郎をも見破っておったとは…(この男、噂とはかなり違うな。用心せねば寝首をかかれる危険性があるな。)」


「いや、あの者が我らに素性を明かした時に違和感があったので、ただそれだけでございまする。」


「ふ、わっはっはっは!違和感だけで、我が北条家が作り上げてきた諜報機関の頭を見破るとは恐れ入るわい。が、この事を他国に知られる訳にはいかぬゆえ、おぬしを匿う事は出来ぬようになった。」

と、言われた勝家は不適な笑みを浮かべ

「ほう…。ならば、如何いたしましょうや?氏康様…」


「おお!怖いのぅ。なに、匿うのでなく…(そうじゃな… この者を使うほうが我らにとっても… ふふ。)一時の間で良いのじゃ!この北条家の、いや… わし直属の家臣になってはくれぬか?」

と、想像の斜め上の要求にさすがの勝家も驚きを隠せずにいたのだった。



つづく。






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