第八話 前編
数日経ち、信秀のに命を受けた勘十郎らは古渡城へ馳せ参じた。
「今は、親族しか居らぬ。有体に、事の顛末を話せ。権六。」
という、信秀に勝家は丁寧に話した。
そして、話を一通り終えると信秀は
「林秀貞の全所領は没収!そして、秀貞の親族は死罪、残りの連なる者達は国外追放とする。家臣一同に通達致せ!謀反人としてな…」
と、家中に号令を発したのだった。
信光「しかし、権六はここまで頭が切れるとは恐れいったわい。」
「切れるとは、某は思っておりませぬ。」
「そう謙遜するな。わしは褒めておるのだ。それに、まさかあの噂が三郎の企てであったとはな。やはり、跡継ぎは三郎で決まりでございまするな。兄上。」
「何が、『決まりでありまする』じゃ!散々、『うつけ』にはどうとか申しておったではないか!」
「それは過去の事!今は今でござる。」
「調子の良い奴じゃ!まぁ、良いわ!」
と、喜んでいた信秀であったが複雑な表情をしていた土田御前に
「そのような顔を致すな。お前の思う所はあるのは分かるが、今回の騒動の要因にもなってしまった事を覚くのだぞ。」
「分かっておりまする。今回の事はわたくしが招いたようなものですから…」
勘十郎「父上!母上をいじめてはなりませぬ!」
土田「これ!父上に対して、そのうような事を言ってはなりませぬ。母は、誤った事をしただけの事です。」
勝家「そうでございまするぞ。若様。それに、もう忘れてしまったのござるか?自分の目と耳で状況を把握するという教えを…」
「分かっておる!」
「いえ、分かっておりませぬ。状況を把握するのが怠っておりましたぞ!」
「むむ。権六はうるさいのう!分かった分かった!わしが悪かった。」
と、勘十郎は勝家から父・信秀に視線を移し
「父上。某の発言が不適切であった事をお詫び致しまする。」
と、平服した。
それを見た信秀は喜び
「うむ。良い!許す。お前は非を素直に認め、直ぐに修正してくる事は兄・三郎より秀でておる。自分の長所を伸ばす事を心掛けよ。よいな!」
「はっ!肝に命じまする。」
「うむ。今後の勘十郎の教育係を権六に任すが、勘十郎が元服後は揃って三郎に仕えるがよかろう。そして、お前は、お市の面倒に専念しつつ…」
と、話の途中で土田御前は
「お言葉でございまするが、あの子は三郎様より手が付けられませぬ。わたくしは、勘十郎が元服するしないに関わらず、勘十郎様の傍に居る所存でございまする!」
「ほう。わかった。勘十郎!そのように致せ!」
という言葉に勘十郎は笑顔で
「心得ましてございまする!」
と、答えたのだった。
和やかな雰囲気であったが、重大な一報が舞い込んで来た!
そう、信広が守護していた安祥城に今川軍が押し寄せ、城を落とされという…
つづく。
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