第九話 前編
九州の端に漂着した南蛮人から流れ流れて堺の町で売られるようになった武器・種子島命名された、後の火縄銃である。
その銃を若き信長、三郎が持っていたの見て
「それが有れば、あの軍師に一泡吹かせる事が出来ると確信しておりまする。」
「この使い方も分かっておるようじゃな。(こやつ… 本当にあの権六か?)分かった。そちに貸そう!但し、非常に高価な品じゃ!壊すなよ…」
「今は高価では有りまするが、三郎様はそれを量産する方法を必ず見つけられると、某は思ってまする。」
「ほう…(何を根拠に?まぁ良いわ。)買いかぶり過ぎじゃ。」
「いえ、あの噂を広め諸外国に侮らせるという策を考えついた三郎様が、そのような謙遜を致すのはどうかと。」
「よく申すわ!それより、そちは織田家いやワシにとって大事な家臣じゃ!死ぬなよ… 危ないと思ったら逃げよ!よいな。」
「わっはっはっは!某に『逃げよ』とは片腹痛い言葉でございまするぞ?三郎様。しかし、その命を敢えて受けまするぞ!では、御免。」
と、信秀が貸し与えた騎馬100騎の兵の元へ向かった。
それをぼ~っと見ていた童を見た三郎は
「何じゃ。まだおったのか?権六… いや、柴田勝家の後を追いかけぬか!竹千代。」
「え?某が、何故?」
という言葉に呆れ顔で
「相変わらず、お前は先程の軍議でも『ぼけ~』っとしておったが、どうせ親父殿や勝家の話を聞かず上の空であったのであろう?」
「実は…」
「やはりな…(こやつの底知れぬ才は何となく認めるが、本当に兄・信広より優秀か不安になって来たわい。)おまえは、勝家を共に駿河へ向かい太原雪斎を亡き者にする策に一枚噛む役割を担うのじゃ。」
「ええええ?!そ、そんな事、某には無理でござる!」
「きさまは…」
と、三郎は頭をかき
「あのな… お前は、勝家の指示通りに致すだけぜ良いのじゃ!」
「柴田様の?」
「うむ。」
「えええええ?!あんな猪武者に何が出来るのでございまするか!某はまだ死にとうない!三郎様。某は嫌じゃ!」
「や・か・ま・し・い!行け!それに今の勝家は猪武者ではない!そう悲観致すな!」
「しかし…」
と、物凄く不安顔の竹千代に三郎は
「しかしもかかしもない!早う行け!勝家が捲し立てに来る前にな!」
と、竹千代の尻を蹴っ飛ばし送り出すのであった。
その頃、駿府の今川家の館では織田信秀が交渉するという返事を今か今かと待っていた。
義元「雪斎!まだ返事は来ぬのか?」
「そう慌てずとも、信広殿を見捨てる事は万に一つもありませぬ。それに、書状を送って日も浅いゆえ、暫くお待ち下され。」
「うむ。そちが申す事は一々至極当然じゃが… 遅いのではないか?」
と、今川義元はやきもきしていたのだった。
つづく。
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