第十弐話 後編
雪斎「氏真様。殿の目に叶った稀に見る童ですぞ?(いつも毬蹴りしか能のない奴がが、こういう時に限ってしゃしゃり出おって!)」
「むむ。しかし…」
すると、義元が大声で
「氏真ぇ!そもそも、お前は政(まつりごと)や家臣の育成に興味を持たなかったではないか!それを今更、我が方針に意見を申すとは何事じゃ!お前は、黙ってそこに座っておれ!たわけがぁ!」
と、怒鳴り付けられた氏真は青ざめ床几に座った。
それを見た後、義元は竹千代に微笑みかけ
「大声で怒鳴ったりして悪かったな… 恥ずかしながら、あの者は我が今川家の後継者なのじゃが…」
と、何か愚痴を言いそうな予感であったため、慌てた雪斎が
「殿っ!その話は…」
「おっと!これはしたり…」
と、ばつの悪そうな表情を浮かべ、近くに居た兵を見て
「織田信広殿をこれへ…」
暫く待っていると両手を後ろに縛られた信広が現れた。
それを見た勝家は
「雪斎殿!引き渡しの席で、縄を縛った状態で来るとはどういう事でござるか?」
「はて?意味が解らぬが…(所詮、猪武者の能なじゃな…)」
「何?」
「分からぬとはな… では申すが、そもそも我ら今川家とは敵対関係でござろう?それに我らの安祥城を奪い返し、たまたま織田信秀の子倅を捕える事が出来たのじゃぞ?その者に縄を打つのは当たり前の事じゃ。それを…」
「そんな事は百も承知でござる。この交渉が一時の停戦を決める話ではないのでござるか?それを、交渉材料である者を敵対しておるとはいえ、その使者に見せるという行為は如何なるものかと!」
「むむむ。(こやつ… 本当にあの猪武者か?わしが見誤っただと?)」
それを聞いていた義元は
「一本取られたな!雪斎。柴田殿… これはこちらの落ち度じゃ。ゆるせ…」
と、素直に非を認めた。
勝家は驚き
「な?!(さすがは今川義元といったところか…)」
「殿!某が至らなかったのでござる。」
と、雪斎も非礼を詫びた。
すると、竹千代が小声で
《今ですぞ!》
《うむ。義元殿には悪いが、ここで退場して頂く!》
と、徐に単発ではあるが火縄を使用せずに使える銃を頭を垂れてる義元に向けた!
次の瞬間、雷が近くに落ちたかのような轟音が辺りに鳴り響き、馬が泣き叫び、兵達や重鎮達も何が起こったか分からず大混乱した!
その弾丸は至近距離だったため義元の頭を見事に砕いた!
それを見届け混乱に乗じて、目の前に居た信広を強奪し、竹千代を予め耳を塞いでいた馬に放り投げ、信広を肩に担いで乗り、その場から逃げたのだった。
つづく。
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