第七話 前編

「貴様さえ居なければぁ!!」

と、何を血迷ったか林秀貞は柴田勝家に斬りかかった!


しかし、武芸で秀でた勝家に勝てるわけもなく、頭を跳ね飛ばされ絶命したのだった。


その光景を見た勘十郎は怖さで顔が引き吊り尻もちを付き、失禁してしまい

「ひえぇぇぇ!」


「咄嗟の事とはいえ、殺めずに生かしておく事は出来なかったのですか?柴田殿。」

と、土田御前は勝家を睨み付けた。


「お言葉でございますれば、某が林様の攻撃をいなし、次の矛先が三郎様に向かうは必定!」


「それはそうですが、まだ幼い勘十郎様にそのような光景を…」


すると、三郎が

「母上!この乱世で、そのような事を言って勘十郎を甘やかす事はどうかと思いまするぞ!それに、こやつは謀反人に等しい者。どうせ生きてたとしても、父上が打ち首にして河原で、さらし首に成っていた事でごぜろう。」


勝家「三郎様の申す通り。遅かれ早かれ、人を殺すという行為は目にしなければ成らぬゆえ、いい機会だと思って頂くほかござらぬ。それに、こんな事で失禁とは、情けないですぞ!若様!」

と、勘十郎を叱り飛ばした。


勘十郎はただただ怯えて声も出なく黙ったまま頷くだけだった。


暫くして、勝家は三郎に

「まさか、このような事になるとは… 某が早計であったと思うばかりでござる。」

と、頭を下げたが三郎は

「さもありなん… これは起こるして起きたのじゃ。お前が悪い訳ではない。それと、勘十郎は心の鍛錬と父上の教えを再確認し、日々励むがよい。わしは、また『うつけ』を広めに行く。」


「広めにでございまするか… 某も家中に広めておきましょう。後のために…」


「わっはっはっは!ますます、気に入ったぞ!権六!貴様、勘十郎が元服した暁には教育係を辞め、わしの直属の家臣になれ!よいな。」


「おお!それは願ってもない事でございましょうや!」

と、喜ぶ勝家であったが土田御前は三郎に

「それは困りまする… しかし、この武勇を燻らせるのも欲しいでございますれば、勘十郎様も末席に加えてたもれ!」


「まさか、母上からそのような申し出を受ける日が来るとは… この三郎、謹んでお受け致しまする。」

と、視線を勝家に向けた三郎は

「林という膿が無くなったからには、お前が勘十郎を正しく導き育てるのじゃ!よいな。」


「はっ!(まさか、この時点で追放ではなく死んでしまったとは… まぁ、あの状況では致し方あるまいがな。)」

と、林秀貞の目論見は死去という形で幕を降りたのだが…



そうとは知らない土田御前の侍女は古渡城へ、林の謀反の疑いがありという事柄を信秀へ報告する為、到着し拝謁していたのだった。



つづく。

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