第十四話 後編
怪しい女「それは本当ですか?柴田殿。」
「お前も正体を某に晒した身であろう?某も、今更、嘘は付かぬわい。」
「では、どの様にして今川義元を?」
という発言に対して、今までの経緯を説明した。
「なんと、そのような事が… そして、それが義元に息の根を止めた武器でございますな?」
「うむ。この武器は我が主である織田信秀様の嫡子である三郎様が、堺で買い付けた代物である。(たぶんではあるがな。そもそも、火縄銃でない時点でおかしいが…)」
と、念入りに銃を見る怪しい女は
「(この黒い筒から… とても信じられん。しかし、嘘を付いておるとも思えん。ここは氏康様に引き合わせる方が良いかも知れぬが…)では聞くが、何故自国に帰らず相模へ参られるのですか?」
それに付いても、説明を重ね
「ほう。確かに!理に叶っておいでじゃ… ふむ。これは何かの縁という事で、某が北条氏康様にお引き合わせ致そうではないか!」
「なんと?!それは、渡りに船!是非、お願い致しますると言いたいが、氏康様に対しての土産が…」
「そんな物は不要でござる。今川義元が本当に死んだか否かが解った事の方が重要でございましたから。」
「おお!某の言が信用に足ると思って頂けるとは… 喜んで北条氏康様の居城である小田原城へ同行致しまする。」
「ほう。小田原城を御存知とは…」
「そういう事を調べるのが好きでして…(前の記憶でござるがな。)何代にも渡って築き上げた難攻不落の巨大城を知らぬ者など居ませぬぞ?」
「(普通、猛将と呼ばれる御仁は頭の方が少し残念と聞き及んでいたが、この者はどうやら頭も相当切れると踏んだ方が良さそうですね。)では、私が先導致しますので付いて来て下さい。」
「はっ!かたじけない。」
と、柴田らは北条家の本拠地へ向かった。
その頃、今川家では大原雪斎が国境封鎖をするため躍起になっていた。
氏真「雪斎だけが頼りじゃ。頼むぞ!」
「何を弱気な!貴方は義元様の嫡子であらせられるのですぞ?もっと、毅然とした態度で居て頂かないと士気に影響を及ぼしかねませぬ!」
「しかし…」
と、義元が死んでからずっと不安そうな表情を浮かべていた。
雪斎は大きく溜息を付き
「国境の封鎖は数日中には完了できまする。それから、氏真様。くれぐれも勝手に甲斐の武田家と連絡を取るような行為は辞めて下され!よいですな。」
「は?少なくとも、我が叔父上でござるが?」
「奥方様には悪いが、武田家との絆を濃くする目的であったからこその関係でございますれば…」
「そこまで申すなら何も言うまい。(分かっておる!分かっておるが、わしの血が繋がった身内ではないか!その叔父上に相談も出来ぬとは… 父上。早すぎまするぞ!)」
と、嘆く氏真であった。
つづく。
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