第38話 剣神の過去
「それで、呪いってのは消すことが出来ないのですか...?」
リノアはカラの心配をしながら主らにそう質問をする。が、主達は首を横に振る。
「確実に無理、だな。」
「おそらく、厳密には解決策は存在するじゃろうが、ワシらにもできないことなんじゃ...。人間なら更に無理じゃろうな」
そう深刻な表情をしながら主らは答える。するとカラは立ち上がり
「大丈夫。カラはこの呪いを背負いながら生き続けるよ」
と笑顔で言う。そんなカラを見て心配そうにするリノア達。
「よし、ワシらはワシらの仕事をしようか」
そう言い、ゼウス含む主らは各々の場所へと戻り、この場所にはカラ達だけが残った。
「ほ、本当に大丈夫なのですか...?」
「そうだよ...。カラの力が能力じゃなくて呪いだなんて...」
「だけど、力が呪いと言われて落ち込んでる暇もない」
「...そうじゃな。2回連続で魔王が妾達の前に来ておる」
悲しむリノアとルヴラとは反対に、クゥロとアヴァロンはそう現実を突きつける。
〝カラさん...〟
シフィはカラを心配そうに見つめる。
「大丈夫。カラは大丈夫だから...。そんなに心配しないで?」
カラはシフィにそう笑顔で言い頭を撫でる。しかし、シフィは焦っているようなそんな感情をカラから感じ取る。
「まぁ、そこまで言うのなら...」
「でも、もし異変がありましたら、すぐにわたくし達に言うんですよ...!!」
リノアはカラに近づき入念にそう言う。カラは笑いながら
「あはは...分かってる...」
「ところで、色々重なってしもうたから話せんかったが、落ち着いた今なら話せるじゃろ...。」
アヴァロンはそう言い、部屋にある椅子に座る。
「え...?」
「ファイキュリアについてじゃ」
「ファイ...キュリア...」
その言葉を聞いた瞬間。辺りに緊張感が走る。遂に回復魔法の最上位についてが聞けるのだから。
「本来は
そうアヴァロンは頭をかきながら困り笑いで言う。カラ達は真剣な表情で
「ぜひ、話して欲しい。シフィのためにも」
アヴァロンに言うとアヴァロンは笑顔になった後、真面目な表情をし
「了解した」
とカラ達の言葉に答える。
「...じゃが、まずはこの魔法についてを話そうかのぅ」
アヴァロンはそう言い、外へと向かう。カラ達はアヴァロンの話を聞くために後を追う。
「どうして外へ...?」
「...さぁ」
リノアとルヴラはアヴァロンの行動に不思議がると
「歩きながら話そうと思ってなぁ...」
2人の方に振り返り、アヴァロンは笑顔で言う。
「妾ですら1度も来たことの無いエリュシオンじゃ、風景を見ながらでも良いじゃろ?」
そんな言葉に、カラ達は笑顔で頷く。
「カラの過去も後で聞くね」
「...そういえば、そんな話もしたね」
クゥロからそう言われ、ふと思い出したカラ。その表情は複雑で何か悔いている様な、そんな顔だった。
「...まぁとりあえず、ファイキュリアの過去について話そうかのぅ」
エリュシオンを歩いている間、アヴァロンはずっと無言だった。カラ達はほんの少しだけ気まずい空気が流れたが、エリュシオンの風景を見て落ち着いたりなどしていた。そうして十数分後、アヴァロン達は高台へと着き、エリュシオンが全て見える場所に移動し、アヴァロンはそこの崖端に座る。
「綺麗...」
何も邪魔がない雲の上の国で、金色に輝く太陽を見つめながらカラ達は感傷に浸る。そんな中アヴァロンは話し始める。
「ファイキュリアは回復魔法の最上位、神聖魔法の1種じゃ。」
「やっぱり神聖魔法なんだ...」
アヴァロンから告げられたファイキュリアの位を聞き納得する一同。
「じゃが、高すぎる習得難易度から会得する者が極稀にしかおらず、そのせいでファイキュリアは伝説の魔法とも呼ばれておる」
「そのせいで伝説の魔法なんだ...」
そんな説明を聞き、更に納得するカラ達。
「妾もファイキュリアを扱える者を1人しか知らんし、多分じゃが、もうその者はこの世にはおらんじゃろう...。更に、魔王によって魔法使いが少なくなっておる今、ファイキュリアを扱う者はこの世界には1人もおらんじゃろうな」
「そんな...」
「ふふっ...。じゃあ、そんな妾が1度しか見た事ない最高の回復術師の話でもしようかのぅ」
〝き、聞きたいです...!!〟
シフィは興奮気味をそう言う。アヴァロンはシフィを撫でて語り始める。
「妾が其奴と出会うたのはまだ妾が旅をしていた時期じゃ。つまりキャメロットと出会う前じゃな」
「あの時、妾はたまたま、其奴が賊に襲われとる場面に出くわしてのぅ...」
─────1760年前。
「や、やめて...ッ」
「ふははっ...!!珍しい種族だ!こいつを奴隷市場に出したらどれだけの値が張るかなぁ!?っておい!あんまり傷つけんな!商品だぞ!!」
「はい!!」
ん?なんじゃ...?女子が嫌がっとる声が...
そう思い、アヴァロンは小走りで声のする方へと向かうと、そこにはアヴァロンにぶっ刺さるロリが連れていかれそうになっている様子が。そんな光景にアヴァロンは怒りを抑えながら
「お主ら、何をしておるんじゃ?」
と、殺意の籠った声色で男に話しかける。
「っ...!!」
「あぁ!?」
当たり前だが、皆アヴァロンの方を向く。
「...クラフ様どうしますか?」
「殺...いや、よく見たらこいつも上物だ。一緒に持ってけ」
「了解致しました」
筋肉隆々の男がアヴァロンの方へとにじり寄ってくる。
「...はぁ、お主らみたいな童が妾に適う訳わけないじゃろうに」
筋肉ムキムキの男がアヴァロンを捕まえようとするが、アヴァロンは余裕そうに回転しながら上空へと避け、その遠心力のままその男の後頭部に拳をぶち込む。
「ガッ...!?」
「知っておるか?力が弱くとも、力の作用さえ理解しておれば体格差があろうと、こんな風に余裕で倒せるんじゃよ」
アヴァロンはニヤリと笑いながらもう1人の男にそう言うと、その男は怒りに震えだし
「なら、作用が全く関係の無い魔法ならどうだガキィ!!!」
と、怒鳴った後に魔法を発動し、アヴァロンの方へと飛ばす。
「最下級炎魔法か...。お主、研鑽を全く積んでおらんのか...。弱っちいヤツめ」
アヴァロンはクラフと呼ばれていた男に呆れ果て、剣を出す。そしてクラフの炎魔法を全てはじき返す。
「なっ...剣で魔法を弾き返しただと!?」
「う、嘘...っ」
魔法は物理で返そうと思う人間はいない。何故か。魔法は発動から着弾までの速度がとてつもなく速い為、その速さを返すにはそれ相応の反射神経が必要だからだ。そして、魔法を剣で返す程の反射神経を持つ剣士は剣聖相当に位付けされている。事実この時のアヴァロンは剣聖に位付けされており、更にアヴァロンは剣聖の中でも最強格と言われ、剣聖達の間では、歴史上誰も見た事のない領域、剣神にたどり着くのでは無いかと噂されていた。
「な、なんだその剣捌き...。い、いや待て!その長くウェーブのかかった茶色の髪、まるで血に染ったような紅い瞳...。そして見た目にそぐわない口調...。も、もしや...け、剣聖の...!!」
クラフは気づく、アヴァロンの立ち振る舞い、剣捌き、そして年不相応の目付きに
「ようやく気づいたようじゃな...じゃがもう遅い」
「ひっ...」
「スサノオ」
あまりにも一瞬の出来事だった。一瞬すぎて、そして鮮やかすぎて斬ったのに血が吹き出ていないのだ。クラフの体が斬られた事に気づいていないのだ。
「はっは...!!助か...っ...た...」
その後、クラフはやっと斬られたことに気づき、その場で倒れる。
「す、凄い...」
「大丈夫かえ?女子よ」
アヴァロンの強さに感激している子に優しく笑顔で接するアヴァロン。
「は、はい...!!」
「そうかそうか、ならええんじゃ。ほならまた」
そう言い、アヴァロンはその場を去ろうとすると
「あ、あの...っ!」
とアヴァロンを引き止める。
「...なんじゃ?」
アヴァロンはその子に対し優しく質問すると、その子は意を決して話しかける。
「もし良かったら、イファの国に来ませんかっ...!!」
「...ほう?お主の国とな?」
アヴァロンは女子の国に興味を示す。
「はい...!!」
小さな女の子はアヴァロンに来てほしそうな表情をしており、アヴァロンも行かない理由がない。その為
「じゃあ、行こうかのぅ」
と、女子の国へと行くことに。
数十分後。
「あ、あそこです!!」
イファと名乗るこの子は、天真爛漫で笑顔が絶えない、そんな陽気で可愛らしい子であった。目的地にたどり着くまでずっとイファはアヴァロンに話を振っていた。おそらく人と話すのが好きなのじゃろう...。
そんな事を思いながらアヴァロンは笑顔でイファについて行くと、いつの間にかイファの国に前にまで着いていた。
「あれがイファの国、エルドラドです!!」
「ここがイファの国か...」
噂には聞いておったが、まさか本当にあるとはな...。伝説の黄金の理想郷、エルドラド。見た目で言うなれば、壁があること以外は普通の国と大差無い。だが、要所要所で見たことの無い技術が使われている。
「信じなかった訳じゃないんじゃ...」
「?」
「ただ...。伝説の国、エルドラド出身と聞かされてもにわかには信じれんかったんじゃ...」
「ここにたどり着く人皆そう言うから仕方ないよね...」
「じゃがこう、生で見ると、イファが本当にエルドラド出身の人間なんじゃなぁと分かるのぅ...」
アヴァロンはそう言い、少しだけ感動する。当たり前だ。人々が渇望する理想郷は噂ではなく本当にあるのだから。
「それじゃ、行こう?アヴァロン!」
そう言われ、アヴァロンはイファに引っ張られる。
「うぉっとと...。そんな引っ張らんでも、妾はちゃんとついて行くぞ?」
「えへへ...早く見せたくて!」
「...ふふっ」
この子は本当に愛らしい娘じゃのぅ...。
「着いた!!」
「随分と煌びやかな国じゃのぅ...」
2人は遂に中に入った。アヴァロンは辺りを360度見渡し、感心する。何故なら、本当に黄金郷だからだ。建物は全て黄金で作られており。乗り物までも黄金だからだ。しかも眩しいと思わないように、国の周りには壁があり、日が当たらないよう設計されている。
「凄い国じゃ...」
「そういえばアヴァロンは寝泊まりする場所どうするの?」
「あ、考えていなかったのぅ...。さて、どうしたものか」
アヴァロンはイファからそんな質問をされ、その場で考える。そんな様子を見ていたイファは、突然アヴァロンに
「なら、イファの家に来ませんか?」
と言われる。アヴァロンはそんな言葉に驚愕し目が点になる。
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